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■夏の日の想い出・ベサメムーチョ(7)

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「でも千里は日本代表のお仕事は終わったんじゃないんだ?」
「まだまだ。12日までユニバーシアードがあって14日に帰国して、一応15日から今日20日の昼までは会社に行ったんだよ」
「お疲れ様!」
 
「でもまた明日から10日まで合宿。この後9月5日まで1ヶ月半ほどずっと合宿か試合」
「きゃー。会社クビになるのでは?」
「一応9月4日まで1ヶ月半ほど休職扱いにしてもらった」
(9月5日は土曜日である)
 
「よくしてくれたね」
「個人的にはクビでも良かったんだけど」
「退職したらいいのに」
「うーん。世間の義理でさあ」
「千里、よくそういうこと言ってるね」
 

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「ところで政子、大変な目に遭ったみたいね」
と千里が言う。
 
「参ったよ」
と政子はマジで弱音を吐いている。
 
「占ってあげようか」
「お願い」
 
それで千里はバッグから筮竹を取り出すと、略筮で卦を立てた。
 
「天地否の5爻変。之卦は火地晋」
 
「天地否って大凶だよね?」
「そうそう。上爻の天は上に上がろうとする。下爻の地は下に降りようとする。だから男女が交わらない」
と千里が言った所で政子は辛そうな顔をした。
 
「今はそういう状態。逆に言うとこれ以上悪くなりようがない」
と千里が言うと
「だったらこの後は少しよくなる?」
と政子は尋ねる。
 
「なるよ。火地晋は1歩ずつ進んでいくこと。今までのことは忘れて初心に戻って、また1歩1歩頑張っていけばいいんだよ」
 
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「またファンの人戻って来てくれる?」
「少しずつね」
「じゃまた頑張るか」
「ちなみにこの五爻変の爻辞は『否を休む。大人は吉。其れ亡びなん其れ亡びなんとて、苞桑にかかる』。最悪の状態はここまで。大きな心を持つことが大事。色々壊れてしまうけど、わらしべを差し出してくれる人があるから、それに頼るといい、ということ」
 
「誰かが助けてくれるんだ?」
 
「そう。いろんなものが壊れちゃうけど、もう過去は振り返らないことだよ」
と千里が言った時、政子は涙を浮かべた。私はやはり松山君と何かあったんだなと推察した。
 
「でもきっと新しいものもこれから出来ていく。この爻の十二支が申(さる)なんだよね。私たちヒツジ年生まれだから、助けてくれるのは私たちより1つ年下の人かもね。あるいは11歳上か」
 
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「へー!」
 

その後千里は私に最近来た郵便物や宅配便の類いを見せてくれと言った。それで見せていると、千里はDM2通、ファンレター3通、ファンからの贈り物として届いていたお酒の包みを2つ選り出した。
 
「私、呪いとかはよく分からないんだけどさ。この7つは私が見ても怪しい。処分していい?」
「うん。よろしく!」
 
「今度青葉と会うでしょ?その時、またこのマンションをチェックさせた方がいいよ」
「頼んでみる」
 
それで千里は夜12時すぎにタクシーで帰って行った。たぶん「怪しいもの」をどこかで処分してから、合宿所に入るのであろう。
 

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連休明けの7月21日。
 
今日は午後から★★レコードで社長や営業部・法務部も入れた対策会議をしたいと聞いていたので気が重かったのだが、朝◇◇テレビの響原取締役から電話が入る。
 
「そちらにもご迷惑掛けていて申し訳ありません」
と私は言ったのだが、響原さんの口調が明るい。
 
「今はまだ詳しいことは言えないけどさ、昼12時のうちのテレビ見てよ。君たちにとって悪くない話があるから」
と言う。
 
「何でしょう?」
「それは見てのお楽しみで。これ今、町添君にも教えてあげた所。とにかく昼12時、よろしく」
 
それでネットで情報を収集すると、今日のお昼12時の◇◇テレビの情報番組で、先日結婚宣言をした山村星歌と本騨真樹が全国の皆さんに話したいことがあるということで緊急会見をするというのが流れている。私は情報源を確認しようとしたのだが、ソースらしきものが見付からない。
 
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これって◇◇テレビがわざと曖昧な情報としてネットに放流したな?と私は思った。町添さんとも連絡を取ったのだが
「僕も内容は聞いてないんだよ。でも良かったら、うちに来て一緒にテレビ見ない?」
 
と言うので、政子を起こしてリーフで★★レコードに出かけた。
 
そして、私と政子、氷川さん、加藤課長、町添部長、松前社長が応接室でテレビを囲む。社長のおごりでウナ重が出てくるが、誰も手を付けない。政子も手を付けないのが凄いと私は思った。
 

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番組がスタートする。
 
すると山村星歌と本騨真樹だけでなく、本騨真樹と同じWooden Fourに所属している大林亮平まで居る。
 
冒頭で本騨真樹が発言する。
 
「一週間ほど前、ローズ+リリーのマリちゃんが、俳優の渋紙銀児さんと熱愛しているのではという報道があって、ネットを見ていたら、ふたりはこの日食堂で話しただけでなく、その後ホテルとかに行ったのでは、などという書き込みも多数あったのですが、それは無いということを証言したくて、僕たちはここに出てきました」
 
「僕たちWooden Fourはここしばらく、ハワイで写真集の撮影をしていたんですよ。それですぐには対応できなくて」
と大林亮平が言う。
 
「私が真樹さんにメールして、それなら僕たちは力になれるかもと言ってくださったんです。それで私たち双方の事務所の許可を得て会見をすることにしました」
と山村星歌が言う。
 
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「もしかしてその当日にマリさんと会ったのですか?」
とキャスターが尋ねる。
 
「はい。そうです。僕たち3人、大阪で会いました」
「大阪ですか!」
 
それを見ていて政子は「あ、そうだった」と言い出す。
 
ああ、やはり政子はあの日、松山君に会いに行ったんだなと私は思った。そして多分そこで何かがあった。
 
本騨君は更に説明を続ける。
 
「先日の記者会見で、マリさんは6月22日の午後に渋紙さんと会ったということでしたよね?」
 
「そうですね。マリさんが持っていた和食の店の伝票が18:58でしたので」
とキャスターは資料を確認して言う。
 
「僕たちが大阪でマリさんと会ったのが夜の0時半くらいだったんですよ。でも渋紙さんはその日東京に居ましたよね?」
 
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「確かに翌日の朝8時のテレビ番組に出演なさっていますから、その夜は東京におられたはずですね」
 
このあたりはテレビ局もかなり調査確認したようである。
 
「僕たちと会った時、マリさんはケイさんがロケハンで鹿児島に行って、ひとりなんで、お腹が空いたから大阪にたこ焼き食べに来たと言ってたんですよ」
 
「マリさんらしいですね!」
とキャスターが笑顔で言う。
 
他の人なら信用してもらえないだろうが、政子や美空が「タコ焼き食べに大阪に行った」と言ったら充分信じてもらえる。
 
「僕たちと会った時、マリさんはたこ焼きの包みを4つ持っていて、ひとりで食べるつもりだったけど、僕たちと一緒に食べてもいいよということで、結局、ホテルのロビーで、マリさんが2つ、亮平が1つ、僕と星歌が残りの1つを分けて食べたんです」
 
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「何かさりげなくのろけてますね」
「僕と星歌は愛し合っていますから」
 
キャスターは笑っている。
 
「じゃ、マリさんは渋紙さんと別れてからすぐ大阪に来たんですか?」
 
「そうみたいです。19時に渋紙さんと別れて、一度自宅に戻ってから、お腹が空いたと思って21時の新幹線に乗って、とりあえず新大阪駅近くでたこ焼きをゲットして、どこかに泊まろうと思ってホテルに来たところで、ちょうど同じホテルに泊まろうとしていた僕たちと会ったんですよ」
 
「本騨さんたちは3人で行動していたんですか?」
とキャスターが訊くと、亮平が答える。
 
「真樹と星歌ちゃんを、結婚するまでは絶対にふたりきりにするな、と社長から厳命されているので、不本意ながらふたりのデートに僕が付き添っていました。当てられてばかりで、たまらんのですけどね」
 
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「それでそのホテルではどのような組合せでお休みになったんですか?」
「4人ともそれぞれ別室です。お互いに他の人の部屋には入っていません」
 
と言って真樹はホテルの領収証を見せた。
 
山村晴香様、本騨真樹様、大林亮平様、そして中田政子様という宛名書きがされたデラックスシングルの伝票3枚、ロイヤルツインの伝票が1枚である。デラックスシングルは1室12000円、ロイヤルツインは22000円という値段になっている。
 
「庶民的なホテルですね」
とキャスター。
「プライベートではこんなものですよ」
と真樹。
 
「これマリさんの伝票はマリさん、書いてもらったままフロントデスクに忘れていってたんですよ。それで知り合いだから渡しておきますよと言って僕が預かって、あとで事務所に届けてあげようと思っていて、うっかり忘れていてまだ手元にあったんです。追って届けますので」
と亮平が説明した。
 
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「マリさんは以前も買物して財布を忘れていって、ちょうど近くに居た小野寺イルザさんが届けてあげたという話がありましたね」
 
「ありました、ありました。マリちゃんって忘れ物の天才なんですよ。ツアーに行く時は、付き人さんがトイレの中とかも毎回チェックして忘れ物がないか確認しているそうですから」
 
「大変ですね!」
 

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「じゃ、マリちゃんは時間的に見て、渋紙さんとその日何かしたようなことはあり得ないですね」
 
「そうだと思います。それを言いたくて僕たちは出てきたんです」
 
「マリさんに渋紙さんがプロポーズしていましたが、それについてはどう思われますか?」
とキャスターは訊いた。
 
あとから聞いたのでは、ここで大林亮平はもっと当たり障りのない発言をする予定だったらしい。しかし亮平はここでとんでもないことを言ってしまう。
 
「あんな15歳も年上の男がプロポーズしなくても、僕がマリちゃんにはプロポーズするから」
 
と大林亮平は言った。
 
「えっと・・・」
とキャスターが戸惑っていると、亮平は更に発言する。
 
「僕もマリちゃんが好きですから。彼と結婚するくらいなら僕と結婚してよ」
と亮平は言い切った。
 
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この発言が流れた後、全国の亮平ファンから「きゃー」と悲鳴が上がった。事務所の社長は頭を抱えたらしい。それでなくても本騨の結婚を渋々認めたのに、大林までもかよと思い、今回の会見を許可したことを後悔する。うちの会社、資金繰り大丈夫かな?というところまで心配になったらしい。
 
ともかくもこの発言を受けて私たちはそのまま応接室で緊急会議に移行した。そして政子に再度記者会見をさせることを決め、各報道機関にFAXを流した。
 
そこでふと見ると、政子の前のウナ重の重箱が空っぽになっていた。ついでに私の前にあった分も食べられている! 私は政子が最小限の元気を取り戻したことを確信した。
 
記者会見には、直前の通知であったにも関わらず、大量の記者が押し寄せる。そしてこの様子は◇◇テレビを含む複数のテレビ局で午後の情報番組内で中継された。
 
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「マリさん、その日山村星歌さんたちと会ったことを先日は言いませんでしたね?」
と記者が訊くと
 
「お互いプライベートなので、彼女たちに迷惑が掛かってはいけないと思い、そのことは言いませんでした」
と政子は言う。
 
この発言は全体的に好感された雰囲気であった。プライバシーの重視は大事なことである。
 
「じゃ結局その晩は大阪のホテルで4人別々の部屋で寝られたんですね」
 
「4人の部屋が同じ最上階フロアの比較的近くだったんですよ。それで一緒におやすみって声を掛けて各部屋に入りましたけど、少なくともその時点では全員別々の部屋でしたね。でも私その後、内線でけっこう長時間星歌ちゃんと話してたから、星歌ちゃんと真樹君はHしてないと思いますよ。後から考えたら、お邪魔だったかも知れないけど」
 
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「マリさん、先日の渋紙さんに続いて、大林さんからまでプロポーズされましたが」
 
「どちらもお断りです。私は女優の妻とかするつもりは無いし、大林亮平のことは私、嫌いですから結婚なんてあり得ないです」
 
「えっと渋紙さんは女優ではなくて俳優ですが」
「あ、ごめんなさーい。私そもそも男の人にあまり興味が無いんですよね」
 
「レスビアンでしたでしょうか?」
「私、御飯を食べることと、詩を書くこと、歌うこと以外には興味無いんです」
「なるほどー」
 
「大林さんのことは嫌いなんですか?」
「あいつ、私に1度無理矢理キスしたことあるんですよ。だから嫌いです。今回のことは恩に着ますけど」
「キスって、それはいつですか?」
 
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「まだ高校生のころですよ。私もまだ無防備だったけど」
 
すると記者席の中からひとりの記者が
「マリちゃんは今でも無防備っぽい」
と声を掛ける人がある。
 
「すみませーん。それで★★レコードの社長さんにも叱られました。ほんとにファンの皆さんにもご心配掛けたし、関係のみなさんにはご迷惑掛けちゃって。とにかく私は当面男の方とは交際するつもりはありませんし、少なくとも10年くらい先までは結婚するつもりもありませんから」
 
と政子は笑顔で言った。
 

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夏の日の想い出・ベサメムーチョ(7)

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