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■夏の日の想い出・大逆転(7)

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「滝口さん、KARIONのCDを、過去の分、再度全部聴き直してみない? どこにKARIONの魅力があるのかを再度考えてみるといい」
と蔵田さんは言った。
 
それで滝口さんは丸3日掛けて、KARIONの過去のCDを全部聴き直し、また会社の資料部で、ライブビデオなどもある分を全部見たらしい。その上で、ゆきみすず先生に会いたいと連絡した。ゆき先生は拒否したが、謝罪文を書き、町添さんから仲介してもらって連絡した所、やっと会ってくれた。ゆき先生は朝から晩まで丸一日掛けて、KARIONの魅力を力説してくれたらしい。
 
その後、Eliseに連絡したものの、どうしても会ってくれなかったので仕方無く樟南の所に会いに行った。樟南はKARIONのファンサイトを滝口さんにたくさん見せ、2chのKARION系スレッドも過去ログまで含めて見せて、ファンがどう思っているかを再認識させた。
 
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他にも数人の音楽関係者に会った後、滝口さんはKARIONのメンバーとの話し合いを持ちたいと言ってきた。和泉は了承し、これには私も出席して、4人で滝口さんと話し合った。小風は最初話すことは無いなどと言っていたが、滝口さんが冒頭で謝罪したので、話を聞いてくれた。
 
更にトラベリングベルズのメンバー、舞田さん、三島さん、畠山社長、青島リンナ、更には初代担当の望月さんの自宅まで行って話を聞いた。更に福留彰さん、櫛紀香さん(滝口さんは櫛紀香さんの性別を知らなかったらしく、紀香なんて言うから可愛い女の子が出てくるかと思ったら堂々とした体格の男子高校生が出てくるから、驚愕したらしい)、KARIONにしばしば楽曲を提供している広田純子・花畑恵三、葵照子・醍醐春海、更には引退して郷里に帰っていた木ノ下大吉先生にも話を聞きに行った。
 
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そして吉野鉄心さん、紅川社長、更には東郷誠一先生の所まで行った。東郷誠一先生はお忙しいのに滝口さんと徹夜で話をしてくれた。
 
最後にやっと会見を受け入れてくれたEliseと話したが、Eliseは無茶苦茶怒っていて、Londaがそばについていて「まあまあ」となだめていたらしい。
 

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10月5日の夕方。私と和泉・小風・美空はトラベリングベルズのTAKAO,SHINと一緒に次のシングルの制作に関して話し合うのに∴∴ミュージックに集まっていた。そこに滝口さんがやってきた。小風が露骨に嫌そうな顔をする。
 
「はーい、KARIONの諸君。おっ、森之和泉・水沢歌月ペアも来てるね」
と何だか妙に明るい。
 
「滝口さん、どうかしたんですか?」
「うん。私、担当辞めたから」
と滝口さんは言う。
 
「あ、KARIONの担当を辞めたんですか?」
と小風。
 
「ナイン。KARION以外の担当を辞めたのさ」
「は?」
「他の担当を全部外してもらって、KARION専任になったから」
 
「えーーーーー!?」
 
「いや、吉野鉄心さんから、あんた修行がなってないから20年修行しろと言われたからさ。吉野さんは、ハーモニーの美しかったユニットとしてサーカスとか、ハイファイセットとか、キャンディーズとか、最近のアーティストとしてkalafinaまでCDをどーんと大量に貸してくれて私、3日掛けて聴いたよ」
 
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私たちはじっと滝口さんの言葉を聞いている。
 
「まあ、それでKARIONに関しては、森之和泉・水沢歌月のプロデュースの方が私より優秀みたいだから、20年くらい勉強させてもらおうと思うんだよね」
 
「というと?」
「当面、音源制作やステージの構成とかに関しては私は口出ししないから。ふたりのやり方をよく見て、どういう形で音作りしていくのかを見学させてもらう。ただスタジオ・ミュージシャンの手配とか、特殊な楽器の手配とかあったら言ってもらったら手伝うよ。そして私は基本的に広報とかライブ会場の確保とか、予算をぶん取ってくるのとか、そういうので頑張るつもり」
 
「そういうことでしたら、私たちも頑張りますから、よろしくお願いします」
と言って和泉は滝口さんに握手を求めた。
 
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私も握手する。続けて美空も握手するので、小風も渋々握手した。TAKAOとSHINも握手する。
 

「よし、それじゃ早速新しいCDを作ろう」
と滝口さん。
 
「今それを打ち合わせていた所です。今月末に音源制作して12月発売の方向で考えていました。『星の海』という曲をタイトルにします」
と和泉。
 
「うん。それはそれで頑張って。その前に、『恋のブザービーター』の改訂版を作ろう」
 
「改訂版?」
「Never too late to mendだよ」
と滝口さん。
 
「ネバー?」
と小風がよく分からないようで尋ねる。
 
「改めるのに遅すぎることは無い、ということ。mendはメンディングテープのmendで修正するという意味」
と和泉が解説する。
 
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「だから、『恋のブザービーター』を新しいアレンジで録音しなおして差し替える。すぐ録音してさ、今月末か来月頭くらいにでも新盤を出荷しちゃおう」
 
「待ってください。そのタイミングで新譜を出すと、次の『星の海』のセールスに影響が出ます」
と私は言った。
 
「そっかー」
「じゃ、『星の海』を出した後で出荷するというのは?」
と和泉が妥協案を出す。
 
「よし、それで行こう」
 

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滝口さん来訪の報せに駆けつけて来た畠山さんも話を聞いて急展開に驚いていた。
 
「しかし新盤を出すといっても、旧盤の在庫がかなりあるのでは?」
と畠山さん。
 
「全部回収して廃棄することになりました」
と滝口さん。
 
「回収までするんですか!?」
「回収廃棄費用とそもそもの40万枚の製造費とで1億5千万になるそうです」
 
「きゃー!」
と小風が驚いたような声を出す。
「1億5千万あったら、100回くらい性転換できる?」
などと美空が言うが
「そんなに性転換してたら身体がボロボロになるよ」
と私は笑っておく。
 
「私、自宅を売却して銀行からお金借りて、5000万円くらいでも弁済したいと言ったのですが、町添取締役から謝絶されました。次のCDで2億稼いでくれたらいいと言われました。どっちみち今年の夏と冬のボーナスは返上して、向こう1年間の給与2割カットをこちらから申し入れて、これは認められました」
と滝口さん。
 
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「勤め人さんは大変だ」
などと、サラリーマンを辞めて5年のTAKAOさんが言う。でも私たちは売れなくなったら即来月から無収入である。TAKAOさんもKARIONが軌道に乗るまでは実際問題として奥さんの収入で生活していたらしい。
 
「それって、70万枚くらい売れということですね?」
と私は言う。
 
70万枚シングルを売ると売上は7億円になり、レコード会社の取り分は3割程度なので2億円くらいの粗利になる。
 
「うん。そのくらいかな」
と滝口さん。
 
「『星の海』は行くと思います」
と和泉は言った。
 
「それと『恋のブザービーター』の新盤が10万枚くらいでも売れてくれたら何とかなるんじゃないの?」
と私。
 
「うん、そんな感じでしょ」
 
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そういう訳で、私たちはその夜の内に4人とTAKAO,SHIN, 舞田さん,畠山さん、それに滝口さんとで∴∴ミュージックで借りているスタジオに入り、『恋のブザービーター』『あの道』『川の流れ』の新しいアレンジを作った。
 
というより、滝口さんが介入する以前の当初のものに戻して多少の調整をした。
 
「こんなんで売れるのかなあ」
などと滝口さんは言ってから
「あ、ごめん、ごめん。口出ししないことにしたんだった」
などと言っている。
 
私たちも滝口さんの言葉は一切気にしない!ことにした。
 
夜中の3時頃、だいたいまとまったので、その日は帰り、今週あらためて、トラベリングベルズのメンバーを招集して、今度はいつも録音をしている渋谷のKスタジオで録音作業をすることにした。
 
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10月11日に放送されたテレビの鑑定番組で「KARION四分割サイン」が出品された。通常のKARIONのサインは、KAを小風、RIを美空、ONを和泉が書いている。ところがこの「四分割サイン」は K を小風、A を誰か(実は私)、Rを美空、Oを和泉が書いたあと、私と和泉で、その4文字を下から包むような形の線を書いている。この線が良く見ると、OとNを引き延ばしたものであることが分かる。
 
このサインについては一部のファンサイトに何枚か掲載されていたものの、偽物では?という議論があったので、実は去年くらいにテレビ局から∴∴ミュージックに照会があっていた。それをこちらでテレビ放送での公開は少し待って欲しいと申し入れていた。それをとうとう解禁したのである。
 
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テレビ局から持ち込まれたサインについて、私と和泉で慎重に検討した結果、私たちが書いたものであると判断した。慎重を期して、私たちが所有している2007年の四分割サインと一緒に筆跡鑑定師さんに見せてチェックしてもらった。筆跡鑑定師さんも同じ人たちが書いたものと断定した。そこで畠山さんは「事情は明かせないが本物である」と回答した。それで番組の鑑定士さんでアイドルグッズを扱っているショップのオーナーさんは80万円の値段を付けた。
 
「4人で書いたサインが存在するということは、やはりKARIONは4人だったんだ!」
 
2chとtwitterを舞台に「四分割サイン」探しが行われた。その結果鑑定番組に出品した本人も含めて6枚のこの形のサインが発見された。日付は全てデビュー前のもので、最も早いものが2007年11月10日、最も遅いものが2007年12月16日であった。
 
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10月12日から20日まで掛けて、私と政子はローズ+リリーの「2年10ヶ月ぶり」
のシングル『涙のピアス/花模様』『可愛くなろう/恋の間違い探し』の制作を行った。この制作の指揮は須藤さんが執ったのだが、録音作業中、政子が物凄く不満そうな顔をしていた。
 
10月21日、出来上がったCD用のマスター音源を前に私は悩んでいた。須藤さんが徹夜で仕上げた音源であるが、事務所の若い子、桜川悠子に「これを★★レコードに届けて」と言って帰宅したので、悠子はそれを持って出ようとしていたのだが、私はそれを停めたのである。
 
私は再度音源を聴いた。
 
そして町添さんに電話した。
 
「今日そちらに納品する予定になっていたローズ+リリーの音源なのですが」
「ああ、できた?」
「私に2日くれませんか?」
「遅れてるの?」
 
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そこで私はこの音源の出来にどうしても納得できないということを伝えた。それで私の手でこれを作り直したいので、2日待って欲しいと言ったのである。
 
「須藤君には?」
「取り敢えず須藤には内緒で」
「いいの?後で揉めない?」
「あの人、気付きません」
「あははは、そうかも」
 
それで町添さんも私に2日の余裕をくれたのである。
 
「でも2日で大丈夫? 今工場の方に電話入れて確認したけど、23日の午前9時までに持ち込めなかったら、発売日を遅らせざるを得ない」
「間に合わせます」
 
「分かった。僕も『恋のブザービーター』では君たちと滝口との不協和音のことは聞いていたんだけど、これまでの実績のある滝口だから何とかするだろうと思って任せていたのが失敗だった。今回は君を信じることにするから」
 
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「ありがとうございます」
 

そこで自宅で寝ていた政子を呼び出す。眠いと言っていたが、作業が終わったらしゃぶしゃぶの食べ放題に連れていくと言ったら、起きて出てきた。
 
「えー!? あの録音をやり直すの?」
と政子が言うが
 
「うん。録音自体に問題があるから、やり直すしかない」
「私たちの声だけでいいの? 伴奏は?」
 
「伴奏も本当は録り直した方がいいんだけど、時間が無い」
 
私は録音作業をしたスタジオのシステムから、密かにプロジェクトファイルをコピーしておいたので、そのデータを持ち、青山の★★レコード付属のスタジオに入った。予約無しで行ったので上の方の階は全部埋まっていたが、歌だけの再録だから問題無い。私たちは2階菖蒲(あやめ)の部屋に通してもらった。データをスタジオのシステムに入れ、取り敢えず軽く練習した後、技術者さんに来てもらって、完全にボーカル部分を録り直した。この作業に夕方まで掛かった。
 
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