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■夏の日の想い出・第三章(15)

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レンタカーを返して、お昼を食べた後、私たちは新幹線で東京に帰ろうとして博多駅に行った。普通なら飛行機で帰るのだが、時間もあるしのんびり帰ろう、などと言って乗車券は東京まで買ったが、新幹線は新大阪までしか買っていない。大阪で一休みしてから、その先はまた考えようという魂胆である。
 
ホームで待っていたら、意外な人物から声を掛けられた。
「中田さんと唐本さん?」
「松山君!」
 
それは高校の時の友人、松山貴昭君だった。彼は阪大に進学していたが、何となく交流が続いていた。政子は暇な時に適当に友人に電話して、おしゃべりなどしているが、その電話先のラインナップに松山君は入っていて、向こうの都合は関係無く、会話に付き合わせていた。しかし私も政子も会うのは高校を卒業して以来であった。
 
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「こちらは仕事?」
「うん。キャンペーンで来ていて、今から帰る所」
「へー。でも飛行機じゃないの?」
「うん。今日明日は休みだから、たまにはのんびり帰ろうと思って。松山君はこちらは旅行?」
「佐賀の親戚で法事があったんで、そこに顔を出して帰る所」
 
私たちは自由席の3列の所に行き、窓際に私、真ん中に政子、通路側に松山君と座って、あれこれつもる話をした。
 
「へー。宗像大社に行って来たんだ。いい所でしょ?」
「うん。心が洗われる感じだったよ。今回のキャンペーンに便乗して、三大弁天様を回ってきて、最後の締めで宗像さんに行ったのよね」
「三大弁天?」
「金華山、竹生島、厳島」
 
「へー。そういう数え方もあるのか。僕は三大弁天は江ノ島・竹生島・厳島かと思ってた」
「多分、諸説あるのかも。これ教えてくれた子は東北出身の子だから、金華山が入るのかもね」
「なるほど。五大弁天は知ってる?」
「うん。金華山・江ノ島・竹生島・天河・厳島」
 
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「その5つは安定してそうだね。三大弁天は厳島と竹生島は確定だろうけど、恐らくもうひとつは人によって入れるものが違うんだよ。ところで、天河は先月車で行って来たよ」と松山君。
 
「えー?ほんと。行くの大変じゃなかった?」
「ううん。まあアップダウンはあるし、曲がりくねってるけど、天川村まで行く道は割と広いし、楽だよ。そうだ。明日もお休みなんだったら、連れてってあげようか?」
「ほんと、行きたい!」
 
ということで、私たちは急遽、松山君の車で天河弁天まで行くことになったのであった。
 

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大阪のホテルに1泊し、翌朝松山君に拾ってもらい、奈良県を目指した。運転は交替ですることにし、行きは大阪市内から下市まで私が運転。その後山道に入るあたりから松山君が運転してくれた。
 
「しかし唐本さん、運転うまいね」
「年間3万kmくらい運転してるよ」
「おお、大したもんだ。それに絶対制限速度を超えないんだね」
「それは交通法規遵守って誓約書を出してるから。万一、スピード違反とかで捕まったりしたら、全国報道されちゃうもん」
「ああ、芸能人ってそれは辛いね。有名税だね」
 
松山君はだいたい制限速度+15くらいで走り、11時頃に天川村に到着した。川を渡ったあと少し細い道を走った所に天河弁天はあった。
 
もっと辺鄙な場所を想像していたのに、若い女の子などがたくさんお参りしていて、びっくりした。
 
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「けっこう観光地化してるよね」
「ここ去年の台風で壊滅的な被害を受けたんだけど、かなり復興してきたね」
「ここって役行者(えんのぎょうじゃ)と関係あるんでしょ?」
「そそ。役行者が蔵王権現を示現しようとしていて、先に天河弁天が出て来てしまったんだよ」
 
「面白いね、それ。天河弁天の次が蔵王権現?」
「いや、間にいくつか入ってるよ」
「ちょっと興味覚えた。今度調べてみよう」
 
「ここは風水的なエネルギースポットなんだよね。この付近の地形が風水的に観察すると、女性器の形に似ている。だからこそ弁天様なんだろうね」
「山脈の端にそういう場所があると、そこは龍穴になるよね」
 
「今度時間のある時に丹生(にゅう)川上神社にも行くといい。龍に逢えるよ」
「来年の夏・・・・くらいに来ようかな」
「うん。丹生川上神社は3つあるから」
「へー」
 
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私たちは天河弁天にお参りしたあと、細い道を少し先の方まで行き「六角岩」
を見た。鳥居をくぐって河原に降りて行く。ここはまだ台風の爪痕が残る。しかし、川の向こうにほんとにきれいな六角形の岩が見えた。
 
「あれって・・・・人工的なもの?」
「分からない。天川村の近くにはこれ以外にもいくつか特徴的な形をした岩があるんだけど、どういう意味があるのか、人工的なものか自然の産物か、そのあたりもよく分からないんだよね」と松山君。
 
「ね・・・・今とっても詩が書きたいんだけど」と政子が言ったが
「ここはダメ。車に戻って車内で書いて」と私は言った。
「うん」
 
帰り道は私が御所(ごせ)まで運転した。政子はその車内で詩を完成させた。「森の処女」というタイトルが書かれていた。御所から大阪まで、松山君が運転する車内で、私はその詩に曲を付けた。
 
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「このあと江ノ島にも行くの?」と松山君。
「うん。今度の週末に行くつもり。それで五大弁天を回りきることになる」
 
「だけど、君たちの創作現場、久しぶりに見たな」
「そうだね。高校時代から、よくこんな感じで歌を作っていたね」
 
「中田さんが先に詩を書く場合と、唐本さんが先に曲を書く場合があるよね」
「うん。だいたい半々かな。どちらが先行した場合も、詩も曲もふたりで書いてる感覚なんだけどね」
 
「ふたりって凄く息が合ってるもんね。そうそう。そのお揃いのブレスレットきれいだね。友情の証し? それとも愛の記念?」
「ふふふ。松山君だから言っちゃうけど、後者かな」
「いいんじゃない? 高校時代からとっても仲良かったしね。今一緒に住んでるんだよね?」
「うん。どちらかが結婚するまではずっとこのまま同棲してるかな」
 
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「たぶん、ふたりって、各々が結婚しても、同棲してる気がするよ」
「そう?」
「そして、各々の旦那は通い婚」
「それって、とってもありそうな気がする!」
 
午後3時頃、大阪市内に戻って来たが、私たちは松山君のアパートの近くのレストランで休憩し、軽食を食べてから別れることにしたが、結局松山君が新大阪駅まで送ってくれた。松山君の車が去って行くのを見送る政子の目がちょっと熱い感じなのに私は気付いたが、そのことについては何も言わずにおこうと思った。
 

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帰京して自宅マンションに戻ったら留守電が入っていた。再生してみると、上島先生だ!
 
「あ、もしもし。急ぎの用事じゃないので、メールせずに留守録に残しておきます。韓国に行ってきたんだけど、君たちにお土産があるから、いつでも取りに来て。僕がいなくても茉莉花(奥さんの名前)がいると思うから」
 
というメッセージであった。私はすぐに先生のご自宅に電話したところ、果たして奥さんが出て、先生はまた海外に出張中ということだったが、奥さんとは私も政子も親しくしているので、すぐにお伺いした。
 
途中、ちょうど通り道になるので、古い友人の絵里花のお父さんがやっているケーキ屋さんに寄り、ケーキを5個買って持って行った。私と政子と奥さんだけなのに5個というのは、誰か他にも来客があった場合の用意である。余ったら政子が食べるし! 果たして先生の家に行ってみると、奥さんの親友の歌手、丸井ほのかさんが来ていた。私たちが着くちょっと前に来たらしい。奥さんがお茶を入れてくれて4人でケーキを食べる。当然政子が2個である。
 
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「あんたよくケーキ2個とか入るね。体重増えちゃうよ」と丸井さん。
「この子はケンタッキーなら一度に8本、ビッグマックなら一度に4個くらいぺろりと食べちゃう子ですから。でも体重が増えないんですよね。この食欲なのに体重42kgなんです」と私が言う。
「わあ、ギャル曽根並みじゃん。あんた、大食い選手権とかに出なよ」
「済みません。この子、テレビ出演拒否してるので」
「へー」
 
ケーキを食べ終わったところで奥さんが、先生のお土産というのを出してきた。
「これなのよ」
「わあ、可愛い!」
 
それは先生が韓国で買ってきたという青磁の皿だったが、中央に龍の模様がある。その龍がデザインは本格的なのに顔がなんだか、とても可愛いのだ。
 
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「これ韓国でも人気の青磁作家の作品なんだって。まだ30歳代の女の人で、こういう可愛い絵を描くから、特に女性に人気らしい」
「へー。でもさすが韓国の作品ですね。色がすごく素敵」
「そうそう。日本の青磁はこの色が出ないのよね。使う松とか、あとは湿度とかの関係なのかも知れないけど」
「この可愛い感じが、あなたたちにぴったりな気がするからあげたいって言ってね」
「ありがとうございます!」
 
「でも今回の旅で、けっこうあちこちで龍には会ったよね」と政子。
「うん。竹生島で会ったのがいちばんハッキリしてたけど、宗像大社の沖ノ島遙拝所とか、天河弁天の境内でも1ヶ所、一瞬龍の気配を感じた所があったよね」
「へー」と奥さんが感心しているが、丸井さんは
「そういう龍って見えるもんなの?」と訊く。
 
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「見える人、感じる人、様々だと思いますよ。ある意味、一種の自然現象みたいなものだし」
「なるほどねー」と丸井さんは言っている。
 
「そういえば先生は、今度はどちらへ?」
「あの人、今月いっぱいまで謹慎期間中だから、その間にふだんなかなか行けない所に行こうとか言って、今はエジプト。私にも一緒に来ない?って言われたんだけど、エジプトはしんどそうだからパスした」
「エジプト!」
 
「あの人、この半年はよけいなテレビ出演とかしなくて済んで、創作活動に専念できるとかいって、むしろ謹慎を楽しんでるみたい」
「さすが、先生。ただでは起きないですね。しかしエジプトに行って先生がどんな作品の着想を得られるのか楽しみです」
 
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その日の夜、終電で自宅マンションに戻った私たちは、その龍模様の青磁の皿を居間のサイドボードの上に飾った。
 
「なんだか私たちの結婚記念にもらったみたいな感じ」と政子。
「私も思った。先生からってのが何か嬉しいね」と私。
 
私たちは見つめ合い、キスして、そしてまた愛し合った。
 

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その週の週末、私と政子は電車に乗って江ノ島まで出かけた。行きは小田急で片瀬江ノ島に着き、境川を渡り、江ノ島弁天橋を渡って島に入る。辺津宮、中津宮、奥津宮、の順にお参りしていく。けっこう体力を要する。奥津宮に行く途中で政子が「疲れた、お腹すいた」と言うので、茶店に寄って黒蜜の掛かったところてんを食べた。
 
奥津宮・龍宮大神にお参りした後、少し山道を入り龍恋の鐘に行って、鐘を一緒に鳴らした。鐘の音に合わせてふたりがしているブレスレットが共鳴する。心地よい。
 
「この鐘を一緒に鳴らすと永遠に結ばれるんだって」
「私たちはもう一生結ばれているけどね」と政子は確信するように言う。私も頷いた。
 
やはり男女のカップルで鳴らしている人が多い。中には女の子同士で鳴らしている人たちもいるが、友情の証ということだろう。
 
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「岩屋まで行く?」
「その階段、しんどそう。パス」
 
ということで、私たちはそこから島の表側の方まで、ショートカットの道を歩いて帰り、江ノ電とJRで東京に帰還した。これで五大弁天の旅、私たちにとっての「結婚報告の旅」を終えた。
 

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夏の日の想い出・第三章(15)

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