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■夏の日の想い出・3年生の早春(3)

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美智子たちが音源の調整をしていた一方で、私はその日、福岡でローズクォーツのコンサートがあるので、10時の放送を待たずに、テレビ局に向かう他の人たちとは別れて羽田に向かい、飛行機で博多に入った。
 
「おお、来てくれたか。ケイが来てくれなかったらどうしようと思ってた」
とマキ。
「来ますよ−。でも眠い。飛行機の中でもひたすら寝てたけど。ライブが終わったら今夜はもうとにかく寝よう。でも今回はヤスさんのおかげでキーボード弾かずに歌に専念できるから楽」
「いや、お役に立てて幸いですよ」とヤス(太田)さん。
 
2月は先日の那覇に始まって北海道まで全国12ヶ所でツアーをすることになっていた。今月私は大学のほうで後期の試験があるため、私の負荷を少しでも減らそうということで、以前何度かレコーディングの際にサポートで入ってもらっていたキーボードの太田さんに今回はツアーのサポートミュージシャンとして入ってもらっていた。太田さんは、ローズ+リリーのアルバム『After 2 years』
にはキーボードで, ローズクォーツの『春を待つ/花鳥風月』にはキーボードとパーカッションで参加していた。
 
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おかげで今回のツアーでは私は基本的には歌だけ歌えば良かった(『花祭り』
と『コンドルは飛んでいく』だけ、太田さんがパーカッションにまわり、私がキーボードを弾いた)。正直、東京→沖縄→東京→福岡と短時間での長い距離の移動が続いていた最中に徹夜でレコーディングの指揮をしたのは、さすがに辛かったので、本当に助かった。
 
すぐに会場でリハーサルをし、そのあと18時からのコンサートで熱唱する。コンサートが終わってからは打ち上げをパスさせてもらい、翌日の移動に備えて新幹線で小倉に移動してから駅の近くのホテルに泊まって取り敢えず寝た。
 
翌朝は3時半にホテルをチェックアウトして北九州空港に行き、朝5:30のスターフライヤーに乗って羽田に7:00に到着した。そして私はそのまま大学に出て行った。政子から
「よく戻って来たね。もうダウンしてるかと思った」
と言われる。
 
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「だって、後期の授業も今週で終わりだから、出なくちゃ」
「眠くない?」
「眠い。授業終わったら、マーサの胸で眠らせて」
 
などと言ったものの、私はすぐには眠らせてもらえなかった。上島先生とAYAの抱擁写真の件で記者会見をしてくれという話になっていたため、ほんとに眠かったのだが、大学の講義が終わってから、夕方、美智子と一緒にテレビ局に行き、記者会見をして、当時の状況を説明した。百瀬さんとAYAも会見に出席していたが、私と百瀬さんの説明で、だいたい記者たちも納得したようであった。
 
美智子が政子の役、AYAのマネージャーさんが上島先生の役をして、テレビ局の女性ADさんが私たちを突き飛ばした男役を演じて、当時の状況を実演してみせたりもした。
 
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そうしてAYAの方の変な疑いは晴れた。これで次週からのアニメのオープニングではAYAが歌う『天使に逢えたら』が使えるようになり、エンディングの映像もAYA・マリ・ケイの3人が出る元の映像に戻されることとなった。
 
予定されていたアニメのテーマ曲を突然差し替えたテレビ局も散々追求され私たちの記者会見とは別に、昨日諸橋さんが記者会見をしたということであった。別にスポンサーから圧力などがあった訳ではなく、あくまでテレビ局側の自主的な判断であると説明した。この件は記者もあまり深く追求しなかった。
 

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『天使に逢えたら/影たちの夜』(両A面)は、《Rose+Lily+AYA ft Star Kids》のクレジットで、、2月15日に発売され、最初の一週間で30万枚、月末までに40万枚を売った。
 
3月にはこのシングルのダウンロード、着うたフルも解禁されたが、CDの方もジャケ写の異なるバージョンを出した。2月15日に発売したものはアニメの絵がジャケ写に使用されていたのだが、こちらはふつうにローズ+リリーとAYAの写真をメインに、スターキッズのメンバーも小さくではあるが一緒に写ったものを採用した。
 
ローズ+リリーのファンも半分は男性だし、AYAにいたっては9割くらいが男性ファンである。しかし少女アニメのジャケットでは、その人たちが恥ずかしくて店頭で買えないということから、こういうノーマルジャケットのものを用意したのであった。
 
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3月に入ってからこのシングルの売上は急上昇した。2月の発売の時も週間ランキングで2位だったのだが、3月に入ってから、ノーマルジャケット版のCD売上とダウンロードが凄いことになり、最初の週が1位、その後も5位以内をキープして、結局3月だけで60万枚(件)を売り、アニメジャケットのものとあわせた売上が100万枚(件)を突破した。(このふたつのCDは中身が同じなので集計上は同じものとして扱われる)
 
これはローズ+リリーにとっては『甘い蜜/涙の影』、『涙のピアス/花模様』
に続く3枚目のミリオンセラーとなり、AYAにとっては初めてのミリオンとなった。また、スターキッズにとっても、これが事実上のメジャーデビュー曲となり、デビューしていきなりミリオンを経験する形となった。
 
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スターキッズは本来は近藤さんの方がメインボーカルだったのだが、この曲でどうしても宝珠さんの声が注目されたことから、その後スターキッズはしばしば宝珠さんをメインボーカルにした曲も演奏していくことになった。
 
また、これを機会にスターキッズは私たちの事務所UTPとマネージメント契約を結びUTPで4組目のメジャー・アーティストとなった。私と政子は彼らにも頻繁に楽曲提供をすることになった。スターキッズ単独での最初のアルバム『Prelude No.5』は5月に発売され、12万枚を売るゴールドディスクとなった。
 

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3月1日から7日まで私と政子はローズクォーツの新シングルの録音をした。ローズクォーツの録音に政子が参加するのは、何だか好例になってきた感じだ。
 
タイトル曲のひとつは私と政子が書いた『闇の女王』と決まっていたが、いつもは何も言わなくても「これ使ってね」と言ってくる上島先生から2月20日になっても連絡が無かったので、私の方から電話してみた。ご自宅に電話すると10回近くコール音が鳴った後、奥さんが出た。
「あ、ケイちゃん、こんにちは」
「どうもお世話になっております」
「今上島は外出してるのよ。雨宮さんが来て一緒に出かけたから、どこかで飲んでるんじゃないかと思うのだけど」
 
雨宮さんは先生の昔のバンド仲間である。上島先生、下川先生、雨宮さんの3人は特に仲が良いようで、上島先生のお宅にお邪魔している時に、下川先生や雨宮さんが深夜や早朝にでも構わず突然訪問してくるというのは、よくあった。私はそれなら先生の携帯に掛けても大丈夫かな、とも思ったのだが、なぜか奥さんに伝言を頼んだほうがいい気がした。
 
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「あ、そしたら申し訳無いのですが、先生に御伝言をお願いできますか?」
「はいはい」
「来月頭からローズクォーツの新しいシングルのレコーディングをするので、もし良かったら何か曲を頂けないかと思いまして」
「来月頭からローズクォーツの方ね」
「はい」
「了解。あ、念のためケイちゃんの携帯の番号、教えてくれる?」
「はい。080-****-****です」
「ありがと。じゃ、伝えておくね」
 
ここで奥さんに私の電話番号を伝えたことが後で意味をなしてくるのだが、この時はそんなことは思いもよらなかった。
 
先生からは翌朝メールがあり「ありがとう。トラブルがあったので出していいかどうか少し悩んでいた」などというメッセージとともに《実は書いていた》という『艶やかに光って』という曲のMIDIデータが添付されていた。
 
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私は先生に御礼のメールをし、いつものように下川先生に編曲を依頼して、無事1日からの録音に取りかかれることになった。
 

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今回の収録曲は、上島先生の『艶やかに光って』、私と政子の『闇の女王』
(以上両A面)、マキが書いた『Star Ruby』、私と政子の『マルチタスク・ラブ』
『雨の夜』、そして好例となっている民謡は『諌早のんのこ節』を入れた。
 
『諌早のんのこ節』は珍しく政子が自分から「地元の歌だし歌わせて!」と言ったのでメインに歌ってもらい、私は「シテマタサイサイ」という合いの手を歌った。
「マリ、うまーい」
「えへへ。この歌はおばあちゃん直伝だからね。子供の頃けっこう歌ってた」
 
「元々マリがアルトでケイがソプラノだもんね。この歌にはこの組み合わせが妥当だね」
などと美智子も言う。『のんのこ節』は女性のかなり低い声で歌う歌である。政子もスイート・ヴァニラズとの交換アルバムで何曲かメインボーカルを取ったので少し自信を付けている感じだ。
 
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『艶やかに光って』『闇の女王』はディスコ系の曲である。
 
「前から思ってたけど、シングル作るってなった時にケイたちの曲と上島先生の曲はいつも似たテーマだったり対照的になってて、まるで打ち合わせて各々書いたみたいだよね」とタカ。
「なんか偶然そんな感じになるのよねー。不思議」と私。
「今回、『艶やかに光って』は明るい恋、『闇の女王』は魔性の恋って感じで光と影だよね」とサト。
 
「ジャケットも対角線を入れて2つの三角形にして、上の方は白基調で白いワンピースを着たナチュラルメイクのケイの写真、下の方は黒基調で『夜の女王』
みたいな衣装を着て妖しいメイクのケイの写真を使おうと思ってる」と美智子。
 
「夜の女王のアリアの一部を取り込んでるからね。ソソソソソソソソドーー、ミミミミミミミミラーー、っての」と私は実際の高音で歌ってみせる。「よく、そんな高い音出るなあ」と前回のツアーに続いて今回レコーディングにも参加してくれることになったヤス。
 
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「玉抜いて高音が出るようになった訳ではないんだろうけど、C6まで出るようになったのは性転換手術の後だよね」と政子。
「カストラートみたいなもんか?」とヤス。
「いや、本物のカストラートには負ける」と私。
「私、現代のカストラートを2人知ってるからねぇ」
 
この2曲に、フュージョン系の曲『Star Ruby』はクォーツお得意のジャンルなので、スムーズに録音作業が進んだ。
 
『マルチタスク・ラブ』はテクノ系の曲で、メインメロディーは私の生の声で歌っているものの、ヴォコーダーや Pitch Fix などで加工した声を加えて、アーティフィシャルな雰囲気を出した。これは音声データの処理に少し時間がかかり、美智子がその作業をしている間に、他のメンバーは私が制作指揮をして『雨の夜』の録音作業を並行して進めた。
 
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『雨の夜』は基本的にはR&B系の曲なのだが、メインボーカルの私と、カウンターボーカルの政子の声がほとんど違う旋律を歌い始めるものの、雨音の効果音(サトさんの電子ドラム)の中、次第にシンクロしていくという曲で、伴奏も二系統がミックスされた形で進行していく。これも多重録音をミキシングしてみないと出来が分からない曲なので仮ミキシングしたものを聴いてみんなが「ああ!こうなるのか」などと言っていた。
 
今回は政子とヤスがいて人手もあり、多重録音せずにリアルタイムで演奏をそのまま収録できたものも多かったので、録音作業は順調に進み、6日までにだいたいは作業は終了したのだが、7日になって最後の調整を掛け始めてからけっこう再録が必要な箇所が出て来て、最終的には8日の午前4時頃に全ての作業は終了した。
 
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夏の日の想い出・3年生の早春(3)

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