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■夏の日の想い出・十二月(6)

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そしてウクレレ(Ukulele)である。
 
タヒチではウカレレ(Ukarere)ともいう。西洋風に!?バンジョーと呼ぶこともある。タヒチアン・ギターなどと紹介されることもある。
 
ハワイから伝わってきた楽器である。しかしその見た目はハワイのウクレレとはまるで違う。実は演奏法も全く違う。
 
ハワイから伝わってきた初期の頃はハワイと同様に板を貼り合わせて作っていたものの、その内、1本の木を彫ってギター族の形にするようになった。それで見た目はむしろ小型のエレキギターに似ている。
 
写真で見るとサウンドホールが無いように見えるが、実はサウンドホールは裏側!に空いている。
 
(タヒチではハワイアン・ウクレレはハワイの代表的ウクレレ・メーカーの名前を取って“カマカ”と呼ぶ)
 
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弦はハワイではヴァイオリンやクラシックギターなどと同様のガット弦(動物の腸を撚って作ったもの)が使用されていたが、タヒチでは輸入された当初から釣り糸を使用していた。ハワイのウクレレは4つの弦の太さが異なるが、タヒチのウクレレは全て同じ太さの弦(釣り糸)を使用する。
 
そしてハワイのウクレレと最も違うのは、4つの弦を全てダブルにしたことで、要するにタヒチのウクレレは2本セット×4で8本の弦が張られている。8,7弦、6,5弦、4,3弦、2,1弦が各々同じ高さ(ハワイと同様のG-C-E-A)に調律される。
 
(G-C-E-Aは G-Chan(爺ちゃん)のイーエー(家)と覚えるらしい!?)
 
なお、近年タヒチに影響されて!?ハワイあるいは日本などでも釣糸に使用するフロロカーボンの弦を張る人たちが出てきているらしい。
 
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ハワイのウクレレはわりとスローテンポで、4分音符で弾くことが多いが、タヒチのウクレレは“バンジョー”の異名があるのも納得するようにチャカチャカチャカチャカと8分音符で掻き鳴らすのが一般的である。タヒチは打楽器のビートも速いが、ウクレレの音も速い。とにかく楽器を弾くのに筋力を使う国である。
 
女性陣3人はこの高速奏法を全員弾きこなし
「あんたら凄いね!」
と先生に言われた。
 
「ギターを弾くので」
と全員言う。
 
「じゃ後でタヒチアン・ギターも教えてあげるよ」
と言われ、3〜4月はウクレレ一色だったものの、それをかなりマスターしてきたところで5月にはギターも教えてもらった。
 

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Havai'i 99 (羽合碁王から改名)のメンバーは、楽器を習う合間に、ローカル線の飛行機あるいは船などでフランス領ポリネシアの様々な島を訪れ、写真やビデオを撮りまくるとともに、楽曲の着想も得ることができたようである。渡航メンツの中で、月が高校の時は写真部にいたということで撮影が上手く、愛用のLumix(3年ローンで買ったらしい)でたくさん写真や動画を撮っていた。
 
最初は5月一杯で“タヒチ留学”を終えて6月頭に帰国する予定だったが、現地のお祭り(Heiva i Tahiti 2019年は7月4-20日)を見てから帰りたいということで、鱒渕さんの許可も得て、7月21日(日)の便での帰国になった。
 
Heivaというのは、タヒチの伝統的な音楽あるいは娯楽全般を指す言葉であり、このお祭りはタヒチ最大の年間行事でもある。
 
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このお祭りでは実は彼らは参加者(演奏者)にカウントされていて、お祭りの期間、何度もステージにあがったり、あるいは街の行進?のようなものに参加したりして、大いに盛り上がった。お祭りが終わった所で彼らは市長さん?から
 
"Havai'i98 - Insulaires d'honneur de Tahiti"
(タヒチ名誉島民)
 
などと書かれた賞状をもらった。
 
でもHavai'i98じゃなくてHavai'i99なんですけど!?
 
(99というのは、メンバーの大半が1999年生であるため)
 

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彼らが成田に到着したのは7月22日の午後である。
 
PPT 7/21(Sun) 7:15 (TN0078 A340-300) 7/22 14:05 (11'50)
 
22日は私は作業の都合で郷愁村の郷愁スタジオにずっといたのだが、私が郷愁村に居ると聞くと、彼らは帰国してすぐなのに、その日の内に郷愁村まで来て、遠征の報告をしてくれた。そして“宿題”にしていた6つの曲を実演してくれた。(ロックギャルコンテスト本選の翌日である)
 
この時同席したのは、私とスターキッズの面々、隣の50mプールに泳ぎに来ていたアクア(F)と千里(髪が短いし比較的オーラが小さいので千里1と判断する)、それに鱒渕・妃美貴である。
 
全員、彼らの演奏に圧倒される。
 
この時の担当楽器は、下記のようであった。
 
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トエレ・イハラ:中橋春光
ファアテテ(小太鼓)・パフタパエ:酒田文泰
タリパラウ(バスドラ)・プー:村原宏紀
ヴィヴォ・トエレ:城野月(村原の妻)
ウクレレ:中橋美雪
ギター:柏木鈴花(酒田の妻)
 
私たちは大きな拍手をし、こちらの面々はアクアや千里も含めて、メンバー6人と握手をした(ほとんど握手会)。
 
「5月に聞いた時よりずっと格好よくなってる」
とアクアは言う。
 
「良かったら、あのビデオ撮り直せませんか?」
と中橋さんが言う。
 
「そうしましょう。コスモス社長に言っておきますよ」
と鱒渕が言う。
 
「でも女性組3人も凄く上達したね。このまま正式メンバーになっちゃう?」
と私は言った。
 
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「男3人が良ければ、それでもいいけどね〜」
 
とリーダー中橋の奥さん・美雪は言った。彼女は「3ヶ月も一緒に海外出張するのなら」と親御さんに言われて、日本出国直前に中橋さんと入籍してしまった(結婚式は落ち着いてから)が、パスポートの変更は間に合わず、旧姓のパスポートをそのまま使用した。他の2人は未入籍ではあるものの、どちらも既に事実上の夫婦である。
 
「俺たちは構わないよ」
と中橋さんは酒田・村原の顔を見ながら言う。
 
「だったら私はメンバーに入る前に姓を変えちゃおうかなあ。学生結婚もいいよね?」
と鈴花が言っている。酒田は頭を掻いている。
 
「私は姓を変える前に性を変えなきゃ」
などと言っているのは、村原の彼女・城野月である。彼女はこの遠征で撮影係もしてくれている。
 
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彼女の名前“月”は本来は『もんど』と読んでいたらしいが(ドイツ語読みと思われるが、無理がある気がする。だいたいドイツ語では Mond は“モンド”ではなく“モント”と読む!)、今回パスポートを作る時には『るな』と読むことにして Runa Jono で作ってしまったらしい(名前の読み方は裁判など不要で、役場に届けるだけで変更できる)。ドイツ語(Mond)からラテン語(Luna)への転換である!
 
名前が女性的(世界的に a で終わる名前は女性とみなされやすい)であっても性別がMと記載されているので現地での入国の時には揉めたという(帰国する際の出国では覚えてもらっていて、ノートラブルだった)。
 
「でも向こうでは結構過ごしやすかったんですよ。そもそもポリネシアって日本の基層文化に近くて性別に関する基準が緩いんですよ。男女の扱いがあまり違わないし、男らしさ・女らしさがあまり強調されない。女性も力仕事をするし、男性も家事をする。それにポリネシアには昔からマフ(Mahu)といって、男に生まれたけど女として育てられた人がいて、巫女とかになって尊敬されていたらしいです。ずっと昔には最初に生まれた子は男の子であっても女の子の格好をさせて育てるなんて習慣もあったらしいですよ」
 
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「マリが聞いたら喜びそうな話だ」
と私は言った。
 
「実際、現地でマフの人たちと結構仲良くなりました。でも私が物凄く女らしいから、羨ましいなんて言われましたけどね」
 
「ああ。そのあたりはテクニカルな問題かな」
「そうそう」
 
「じゃ、性転換するの?」
と美雪が訊く。
 
「タヒチに行く前は、けっこう気持ちがふらふらしていたんですけどね〜。マフの人たちと交流して、さんざん美雪ちゃんと鈴花ちゃんにも唆されたから、やっちゃおうと思っています。この仕事が一段落した所で手術受けに行きます。手術代は村原が出してくれると言っているし」
 
「むしろアルバムを発表する前にさっと手術しちゃった方がいいかもね」
と鈴花が言う。
 
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「え〜〜〜!?」
 
「確かに注目されて引き合いがたくさん出た場合、手術する暇が無くなっちゃうかも」
と鱒渕も言う。
 
「でもあれって予約してから最低でも1年くらい待たされるんですよ」
と本人。
 
「ルナちゃんみたいな可愛い子だったら、今日電話すれば来週にも無理矢理日程を押し込んで手術してくれる先生知っているけど。国内だから料金はタイとかに比べると高いけど」
 
と私が言うと
 
「そんな先生がいるんですか!?」
と彼女は驚いたように訊いた。
 
「あの先生は可愛い子とそれなりの子の扱いが違う。だから普通の子はやはり予約してから半年かかる。でも可愛い子は例外」
 
「あはは。何か問題のある先生っぽい」
「友だちの付き添いで来た子を唆して一緒に手術しちゃったこともあるし」
「ある意味怖い」
「腕は確かなんだけどね〜」
 
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取り敢えず一度富山に行ってみると言っていた。
 

さてHavai'i99に現地で書いてもらった曲はこの6曲である。
 
『Plage noire』(Black Beach)
『Troupeau de geants』(Troop of Giants)
『Noces Polynesiens』(Polynesian Wedding)
『Manuia!』(Cheers!)
『Nono, Nono』(Noni, Noni)
『Hei Tiare』(Lei of Tiare)
 
『Plage noire』(プラージュ・ノワール:黒い砂浜)はタヒチ島の黒い砂浜を歌ったものである。タヒチ島は黒い玄武岩質の島なので、砂浜も黒い砂でできている。この特異なビーチのことを歌ったものである。これはタヒチに行って最初に書いた曲である。
 
『Troupeau de geants』(トゥルポ・ドゥ・ジェアン:巨人の群れ)はヌクヒバ(Nuku Hiva)島のハカウイ(Hakaui)の断崖を歌ったものである。高さ350mの断崖がずっと続いており、上部の高原の川がヴァイボー(Vaipo)の滝となって落ちている。その端は浸食により多数の屹立した突岩となっていて、その風景は中国の桂林なども思わせる。その様子を彼らは“巨人の群れ”に形容した。
 
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このヌクヒバ島は『白鯨』の作者ハーマン・メルヴィルが、捕鯨船の船員をしていた時、あまりに過酷な労働に耐えかねて脱走し、隠れ住んだ島である。この島は寒流に取り囲まれているため珊瑚礁が無い。近くにはゴーギャンゆかりのヒバオア島もある。なお『白鯨』に出てくる一等航海士がスターバックで、スターバックス・コーヒーの語源である。
 
『Noces Polynesiens』(ノース・ポリネジアン:ポリネシアの結婚式)は、タヒチ島で、たまたま行われた知人カップルの結婚式に参列させてもらった時、即興で演奏したものを後で採譜して調整したものである。とにかく賑やかで、おめでたく、明るい曲である。
 
『Manuia!』(マヌイア!:タヒチ語で「乾杯!」の意味。フランス語ならサンテ!またはチンチン!!)。酒宴が始まる時の挨拶である。この歌は飲めや歌えやという感じで、元気で明るく、そして乱れている!
 
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『Nono, Nono』の“nono”とは、日本語では八重山青木(やえやま・あおき)というが、近年はハワイ語で「ノニ」と呼ぶことが多い。ノニジュースなどにして飲むほか、トムヤムクンやナシゴレンにも加える。染料としても使用される。タヒチ産のノノ(ノニ)は現在外国へ大量に輸出されており、タヒチの経済を支える重要な農作物となっている。この歌はノノ畑のそばで愛を語り合う恋人たちのことを歌った歌で、ヴィヴォ(縦笛)の美しい旋律を加え、可愛い感じに仕上がっている。
 
『Hei Tiare』はアクアに提供することになった曲だが、ティアレの花の首飾りを歌ったもので、それを着けた女性を愛でる歌である。君はエメラルドグリーンの海より美しいとか、世界中の花全てより価値があるとか、ひたすら褒めて、求愛している歌だが、最終的に、アクアの年齢に合わせて歌詞は若干マイルドに変更された。
 
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この曲はアクアの日程が詰まっていることもあり本格的な制作は秋以降にずれこんだものの、8月31日の小浜7万人ライブで披露したら、今までのアクアの曲には無いサウンドなので、好評であった。もっともライブでは多くの人が「Hey! Tiare」とティアレという女性に呼びかけている歌かと思ったらしい!
 

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私はHavai'i 99のメンバーに、私が書いた『トロピカルホリデー』を添削して、編曲さらに伴奏もしてもらいたかったのだが、彼らの演奏を聞いて参った!と思った。そして素直に言った。
 
「悪いけどローズ+リリーの『トロピカルホリデー』に君たちで新しい曲を付けてくれない?あるいは今ある曲の中のどれかのメロディーを転用してもらってもいいけど」
 
それで彼らは『Plage noire』(黒い砂浜)を歌詞に合わせて若干アレンジして提供してくれることになった。
 
「『Hei Tiare』はアクアさんにということでしたが、残りの曲も誰かに提供するんですか?」
 
「それは君たち自身のアルバムとして★★レコードから発売という線でどう?」
 
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「おぉ!」
 
「『Plage noire』と『Hei Tiare』のオリジナル・バージョンも入れて6曲入りミニアルバムという線では?他にも曲を追加していいけど」
 
「やります!」
 

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夏の日の想い出・十二月(6)

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