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■夏の日の想い出・混乱と暴走(2)

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4月下旬、暖かい話題も飛び込んで来た。
 
リダンダンシー・リダンジョッシーのリーダーでギターの中村正隆とボーカルでセカンドベースの鹿島信子が結婚するというのである。
 
ふたりの仲は、“ファンの目”からはデビュー以来公然の関係ではあったものの、実際に中村君が信子に告白したのは、ごく最近のことらしい。ふたりで仲よさそうに並んで記者会見をしていたが、
 
「妊娠していますか?」
という記者の質問に対して
「まだ2ヶ月半なんです」
と信子がはにかむような顔で答えた。
 
「おぉ!」
と記者から歓声があがる。
 
「予定日が12月9日なんです」
と中村君がコメントする。
 
「それでリダン♂♀(*1)のライブ活動に関しては大変申し訳ないのですが、来年3月くらいまでお休みさせて頂きますが、彼女の負担にならない範囲でアルバムの製作は進めていきますので」
と中村君は続けた。
 
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(*1)「リダン♂♀」と書いて「リダンリダン」と読む。
 

後日、中村君と信子は、私や千里など数人の親しい人との集まりで
 
「妊娠はわざとなんです」
と言っていた。
 
芸能人カップルの《わざと妊娠》は割と多い。多くは事務所から結婚を反対されるのを防ぐために妊娠という既成事実を作り、妊娠しているのなら仕方ないかと思わせるためである。
 
そのことを訊くと
「いや、事務所(ζζプロ)は認めてくれていたんですけどね〜、僕の両親を説得するのに、妊娠しちゃおうよと話したんです」
と中村君は言う。
 
「私が元男性だったから、彼の両親が、オカマと結婚するのか?みたいに思ったらしくて」
と信子。
 
「ああ、そういう話か」
 
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「私もあまり妊娠する自信は無かったんですけどね〜。試してみたらうまく妊娠できたので、それでやっと彼の両親が折れてくれたんですよ」
と信子。
 
「まあ半陰陽と性同一性障害がごっちゃになっている人は多い」
と私は言ったのだが
 
「信子ちゃんの場合は、半陰陽ともGIDとも違う突発性性転換症だから」
などと千里は言っている。
 
「いやまさにそういう状況でした」
と信子が言う。
 
「でも元々女の子になりたかったんでしょ?」
と鮎川ゆまが言う。
 
「なりたくなかったといえば嘘になるけど、積極的になりたいとまでは思ってなかったんですけどね〜。でも女の子になっちゃったら、それで適応しちゃったという感じで」
と信子。
 
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「ノブはとても女らしいです。実は男性時代から、見つめられたりするとドキドキしちゃって。自分は異常なんだろうかと悩んでいた。だから、ノブが女の子になったというので、やはり自分は異常じゃなかったんだと安心した」
と中村君。
 
「まあ別に同性で好きになるのも異常ではないけどね」
と、ゆまは言っていた。
 

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さてローズ+リリーは、ここ数年次のようなタイトルでアルバムを製作してきた。
 
2013.07.03 RLA09『Flower Garden』国内210万枚 海外80万枚
2014.12.10 RLA10『雪月花』国内220万枚 国外120万枚
2015.12.02 RLA11『The City』国内130万枚 国外(振袖とセット)65万枚
2016.12.07 RLA12『やまと』国内190万枚 国外130万枚
 
今年2017年のアルバムについて、私は昨年秋くらいの段階で『Four Seasons』とすることを固め、氷川さんの了承を得て構想を練り始めていた。
 
ところがである。
 
5月の連休明けに★★レコード、○○プロなどの多数の関係者が集まった製作会議の席でこの私の提案が否決されてしまったのであった。
 
一昨年の『The City』が失敗作(と言われても国内ミュージシャンのアルバムの中では集団アイドルの作品を除いて最も大きなセールスをあげている)であったとして、英語のタイトルは避けて欲しいと言われたのである。
 
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そして製作会議側からぜひこれをと推奨されたタイトルは『郷愁』である。特に★★レコードの村上社長と、○○プロの浦中副社長が「これは素晴らしい。きっと売れる」と言い、UTPの須藤社長も「そういうの好き!」と言っていた。今回、浦中さんではなく、私の理解者である丸花社長が出てきてくれていたらと私は思ったのだが、仕方ない。
 
私はアルバムの構想を最初からやり直す羽目になった。
 
しかも発売時期はここ数年、年末のぎりぎりに発表されていて営業活動もしにくいし、ツアーなども組みにくいということで11月上旬に発売して欲しいと言われた。すると10月上旬にマスタリングを終えないといけないので結果的には9月末までには完成させる必要がある。正直、辛いと私は感じた。
 
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「正直自作曲だけでは間に合わないんです。申し訳無いですが曲を頂けませんか?」
と私は、数人の親しい作曲家に頼んだ。
 
それが、鮎川ゆま、近藤七星、Eliseの3人であるが、みんな快諾してくれる。更にちょうど青葉が、桃香が赤ちゃんを産んだのでそのサポートに出てきていると聞いたので、彼女に
「相談したいことがあるから、可能だったら、うちに寄ってくれないか」
と頼んだ。
 
すると千里も一緒だというので驚き(千里は現在海外遠征中と聞いていた)、国内にいるのなら、ぜひ一緒にと言ったので来てくれた。これが5月12日のことである。
 
私は2人に可能なら2曲ずつ提供してもらえないかと頼んだ。彼女らに4曲書いてもらうと、ゆまたち3人に頼んだ3曲と合わせて7曲になる。残り3曲なら私も充分な品質のものを書くことが出来る。
 
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この時点で私が恐れていたのは、時間の無い中で自作曲にこだわりすぎて、楽曲の品質を落としてしまうことであった。本当なら10曲のアルバムならその内5曲は自作曲で行きたい。しかし、その結果駄作だらけになるのは困る。ローズ+リリーのアルバムは1曲1曲がシングルで出してもいいような曲で構成するのがポリシーだ。ここで、ローズ+リリーの世界を充分に理解してくれている千里や青葉なら、ローズ+リリーのアルバムの世界観を壊さないような作品を書いてくれるのではと期待したのである。
 

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事情を聞いて千里は
「だったら私は3曲書く。その内2曲はまるでケイが書いたみたいに書く」
と言った。
 
そして千里は青葉にも「こういうのやってみない?」と言って、突然千里による『ケイ風作品の作り方』の講義が始まったのであった。
 
千里はまず私の作品を4期に分けた。
 
第1期(2005-2007.7) 硝子の迷宮・ゴツィックロリータ・雪うさぎたち
第2期(2007.8-2010.2) あの夏の日・雪の恋人たち・花園の君・雪を割る鈴・遙かな夢
第3期(2010.3-2013.9) 影たちの夜・Spell on You・キュピパラペポリカ・ピンザンティン
第4期(2013.10-現在) アメノウズメ・Heart of Orpheus・コーンフレークの花・振袖・夜ノ始まり
 
「第1期はナイーブな作品、第2期はフォーク色が強い。第3期は調性を破壊して、調性音楽とも無調音楽とも違う“自由調性”ともいうべき音階を使っていたけど、行き詰まった。第4期は調性を回復してポップロック色が強くなる。但し和楽器をフィーチャーして結果的に微分音階を取り入れている」
と千里は解説する。
 
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「それ私の作品じゃない作品が入っているけど」
 
「クレジットと関係無く、3分の2以上ケイが関与したと思われるものは入れている。逆にケイがクレジットしていても明らかに他の人の作品は除外した。『神様お願い』はマリちゃんの作品、『海を渡りて君の元へ』や『恋座流星群』は和泉ちゃんの作品」
と千里は言う。
 
「よく知ってるね」
と言って私は苦笑したが、千里は
「聴けば分かるじゃん」
と言っている。
 
そしてケイ(=水沢歌月)が書いたヒット曲を分類する。
 
2015.12『振袖』190万 4期
2017.11『来訪』170万 4期
2015.07『コーンフレークの花』160万 4期
2014.07『Heart_of_Orpheus』140万 4期
2013.08『花の女王』130万 1期
2012.02『天使に逢えたら/影たちの夜』130万 1/3期
2011.08『キュピパラペポリカ』120万 3期
2013.01『夜間飛行』110万 3期
2013.03『言葉は要らない』110万 2期
2014.04『幻の少女』110万 4期
2009.01『涙の影』110万 2期
2012.12『雪うさぎたち』110万 1期
2011.11『涙のピアス』108万 3期
 
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「ミリオン達成している曲でも品質的に微妙なのは外した」
などと千里は言っている。こんなこと堂々と言うのは、千里とか浜名麻梨奈とかだよなと私は思った。
 
外されたのは『100%ピュアガール』『不等辺三角関係』『ちゃんぽん』だろう。
 

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「ところで見た目に騙されるんだけど、第4期の曲というのは、実際にギターとかで弾き語りしてみると分かるんだけど、実は第2期の系統の作品を賑やかにしただけなんだよ」
と千里は言っている。
 
「1期の頃は何にも考えずに作品を書いていた。しかし2期でケイのスタイルが確立した。ところがそこに迷いが生じて迷走していたのが3期。4期は昔のスタイルを思い出した。だから4期も実は中身はフォーク。但しそこに大編成の伴奏を入れて重厚なサウンドを作った。グランドオーケストラを作った経験なども入っているね」
 
と千里は言う。
 
「中身はおじさんでも可愛い服を着せて上手にお化粧すると美少女になるかもという話」
「いやそれはありえない」
 
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「だから」
と言って千里はいったん言葉を切る。
 
「ケイっぽい作品を書くには2期の曲の真似をすれば良い」
「なるほどぉ!」
と七星さんが声をあげた。
 
「曲って実はどんな楽器で作曲したかによって結構性格が変わるんですよ。ケイって超一流のピアニストで、しばしば超絶ピアノ演奏とか披露しているから、ピアノで作曲しているように思うかも知れないけど、ケイの曲ってむしろギターで作曲したかのようにコードが先に書かれている雰囲気があるんです。メロディーは平易」
 
「確かにケイの曲はカラオケで歌いやすいものが多い気はする。声域の問題さえ何とかなれば」
と七星さん。
 
「それでメロディーが平易な代わりに、コード進行に特徴があるんですよ。それはジャズのブルーノートに似ているけど、あれよりずっと優しく聞きやすい。調性を重視している。私はこれをグリーンノートと呼んでいる」
と千里。
 
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「へー!」
 
それで千里は具体的にいくつかの曲を例に挙げてその特徴的コード進行を解説した。そのあたりは私も無意識に書いていたものなので、作曲している私自身が「なるほどー!」などと感心して声をあげていた。ここまで私の作品を分析している千里って凄い!と思ってしまった。
 

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その後、千里は「ケイの曲はサビからある一定規則によってメインテーマが作られている」という仮説を披露する。
 
「サビとメインテーマが独立している作品も多くあるけど、多くは統一感が無い。やはりファンから支持されている作品はサビから自動的にメインテーマが導き出されている。それは和歌の下の句を聞いて、それに合う上の句を作るような作業なんだよ」
と千里は言う。
 
「規則というのは意識していないけど、確かに私はサビを最初に考えて、そこから組み立てて行くことが多いよ」
と私も言う。
 
そして最後に千里は、私自身が特に初期の作品で多用していたメロディパターンを4つ挙げた。
 
「特にこのAのパターンはケイの初期の作品に頻出していてファンの間でもケイ・パターンと呼ばれているんだ。ケイの署名みたいなもの」
と千里は説明した。
 
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