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■夏の日の想い出・東へ西へ(11)

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この後、撮影隊の一行はオアフ島内のあちこちの景色の良い場所(必ずしも観光地ではない)に移動しては、龍虎に様々な衣装を着せて撮影を続けた。空港ではパイロットの制服風の衣装、病院の近くではお医者さんの白衣なども着せられていた。桜井さんは、一応男装のアクアも撮るものの
 
「ここはちょっとムームー着てみて」
 
(ハワイでは男性の正装がアロハシャツ、女性の正装がムームーである)
 
「ここはミニスカになってみよう」
「パイロットの服を着たら、やはり女性キャビンアテンダントの服も」
「お医者さんの服の後は、やはり看護婦さんの服で」
 
などと言って、かなり女装のアクアも撮影していた。富永さんが最初用意していた、日本の女学生用セーラー服まで着せられていた!(むろん学生服の写真も撮った)
 
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「こんな可愛い子に、可愛い衣装を着せなかったら、犯罪のような気がして」
と桜井さんは言っていた。
 
「まあお化粧は勘弁してあげるわ」
と桜井さんが言うと
「まだ女子中学生だし、まだ化粧はいいよね」
と美原さんまで言っている。美原さんは実際問題として様々な衣装のアクアの動画を今日もかなり撮影していたようである。
 
昼過ぎにはハワイ島に移動(空路で45分ほど)して撮影を続け、最後はハワイ島北西の夕日が美しいことで有名なコハラ・コースト(Kohala Coast)で、ハワイ独特のピンク色の夕日の中、たくさんの写真を撮影した。この夕日の美しさには、撮影されている龍虎にしても、コスモスや政子、そして私も半ば見とれていた。
 
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(なお、ハワイの大きな島は北西から順にカウアイ島・オアフ島・モロカイ島・マウイ島・ハワイ島である。ホノルルはオアフ島にある。ハワイ島はこの中で特に大きいので Big Island とも呼ばれる。このビッグアイランドは5つの火山から成っており、コハラは実はそのひとつである。他の火山としては、頻繁に噴火して溶岩流を流していることで知られるキラウェア、体積が世界最大の火山マウナロア(4169m)などがある)
 
夕日撮影後は、またオアフ島に戻り、夜景の中での撮影を10時すぎまで続けた。
 
「終了!」
「お疲れ様でした!」
 
撮影終了の時は、龍虎はまた結局ムームーを着せられていた。
 

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桜井さんは写真の選択と配列に関して悩むと言い、美原さんも明日の撮影について構想を練るということで、食事が別になったので、結局、私と政子、龍虎とコスモス、それに富永さんの5人で食事をした。
 
「結局私たち何すればいいんだっけ?」
と政子が訊く。
 
「確かに今日は特にすることは無かった感じもある」
と私も言う。
 
「桜井さんも、女の子の写真を撮るという前提が崩れたので、色々模索しながら撮影していた雰囲気でした」
と富永さん。
 
「たぶん桜井さんの方については、写真の選択・配列について相談されるのではないでしょうか?」
とコスモス。
 
「ええ。そのあたりからがプロデューサーと写真家との作業になると思います」
と富永さんも言う。
 
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「すると今夜から明日以降が、私たちのお仕事かな」
と私も考えながら言った。
 

「でも僕、今日は女の子の服を着た写真の方をたくさん撮られたような気がするんですけど」
と龍虎が言う。
 
ちなみに龍虎は結局富永さんが撮影用に用意していたセーラー服のひとつを着たまま食事をしており、桜井さんの“趣味”で助手の三輪さんがその食事の様子を多数カメラで撮影しているのである。このセーラー服は黒・青・紺・赤・緑・黄・茶と7種類を同じデザインで用意していて、今日もこの7種類全色の撮影をされていたが、今龍虎が着ているのは、その中の青である。
 
アクアはやはりイメージカラーが青ということで、桜井さんと美原さんの意見が一致し、富永さんとコスモスも同意していた。アクアという名前にもうまくマッチするのだが、この子はそもそも青い服がとても似合うのである。
 
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「まあ、女の子の服を着た写真は(たぶん)表には出さないから」
と私は言うが
 
「10年後くらいに唐突に出版されたりしてね」
と政子が言う。
 
「え〜〜〜!?」
と龍虎は困ったような顔で言っていた。
 

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食事が終わっていったん各自部屋に戻って休んでいた時、美原さんから相談したいという電話が入るので《政子をコスモスの部屋に預けて!》から、美原さんの部屋に行った。
 
「私も男の子の絵を撮ることになるとは思ってもいなかったから何も考えてなくてね。それでずっと以前にスカイロードの4人を撮った時のことを思い出してたのよね」
 
「ああ。美原さんがPV撮影なさったことありましたね。『Color Ring』でしたっけ?」
と私が言うと
 
「あんた、よくそういうの覚えてるね!」
と感心された。
 
「katahira, keito, kitagawa, komatsu, kubotaの5人が各々自分のパーソナルカラーの服を着て、同色の服を着た女の子と手をつないで町を歩いている図から、やがて全員泉のある広場に集まるんだけど集まってみると、連れていた女の子が同じ顔だったんですよね」
 
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「よくそこまで覚えてるね〜!」
 
「あの女の子は誰だ!?ってんで一時期ファンの間で騒然としましたけど、実は往年の大女優・林竜子さんの若い頃の映像をカラー化処理したものだった」
 
「うふふ。リアルの若い娘を使ったら、ファンがその娘を攻撃したりしかねないからね」
 
「そのあたりの機微を理解して映像を作られたのが凄いと思いました」
 
「実はある程度名前の売れている男の子アイドルの絵を撮ったのは、あれが唯一の経験なんだよ。ふつう女の子アイドルの仕事しか来ないから」
 
「町添部長の勘違いから、でしょうけど、私は女性カメラマンを使うというのはつまり、アクアのファンは圧倒的に若い女の子たちだろうから、そのファンの目から見て魅力的なアクアの映像を作りたいということかと思い込んでいたんですよ」
 
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「うん。私もそう考えることにした。それでこういうシナリオを考えたんだよ」
 
と言って美原さんは私に説明した。
 
「最初町をアクアと誰か女の子が別々に歩いている。やがて出会って一緒に歩き出すんだけど、そこに多数のモンスターが現れる。そこでアクアが彼女を守ってモンスターと闘う」
 
「その女の子は誰を使うんですか?」
「また往年の女優の顔というのも考えたんだけど、この場合、顔は最後まで映さなくてもいいと思う」
 
「ああ、その方がいいかもですね。でもそれ一緒に歩き出してからモンスターが襲ってくるのではなくて、女の子がモンスターに襲われている所に駆けつけて助けるというのでは?」
 
「あ、そうか。そっちがいいよ!」
 
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それで私たちは30分ほど掛けて、だいたいのストーリーをまとめあげた」
 
「でもこれ、出演者がたくさん必要ですよね?」
 
「それを明日速攻で集めて、撮影する必要がある」
 
私たちは深夜ではあるものの、富永さん、コスモス、アクアを呼んだ。コスモスを呼ぶと彼女が「お世話してくれている」政子も一緒に付いてくる。
 
富永さんはその筋書きは面白いと言い、即モンスターを演じるエキストラを明日の昼までに集められるだけ集めて欲しいとナカムラさんに依頼していた。向こうも10人程度だったら、昼までに集めることは可能だと思うという回答であった。
 
「相手役の女の子はどうします?顔を映さないにしても、誰か必要ですよね?」
「演技力のある子でないといけないから、エキストラ的な人という訳にはいかない。でもそのクラスの子を昼までに連れてくるのは多分困難」
 
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「それ私がやるしかないよね」
とコスモスが言った。
 
私も実はこのストーリーを彼女たちに説明しながら、結果的にはそれしかないのではという気がしていた。アクアが充分身長があるのなら、私がやってもいい。ところがアクアの身長は154cmしか無い。私が身長167cm, 政子も164cmあって、全く釣り合いが取れない。しかしコスモスなら身長157cmくらいなので、何とかバランスが取れるのである。
 
「確かに今いる中で背丈でアクアちゃんと釣り合いが取れるのはコスモスちゃんだけかも」
と富永さんも私と同じことを考えたようで言った。
 
ところがこの時、政子がとんでもないことを言い出した。
 
「その女の子役もアクアがすればいい」
 
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「え〜〜〜!?」
 
「同じ身長であれば背丈の釣り合いは取れる」
と政子。
 
「ちょっと待って」
と言って美原さんが考えている。
 
「行ける」
と彼女は30秒ほど考えてから言った。
 
「僕、女の子役なんですか〜?」
と龍虎がまた情けない顔をして言う。
 
「男の子役と女の子役の両方をしてもらう」
 
「シークレットシューズが入手できないか、訊いてみる」
と言って富永さんがナカムラさんに電話している。
 
「アクアちゃん、靴のサイズは?」
「22cmです」
「ということはアメリカ式ではレディスの5。違〜う。紳士靴だから4だ」
 
今日の撮影は実は男物の靴でアクアに合うものが無いので、レディスの靴でユニセックスなデザインのものを履かせたのである。
 
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それで富永さんはしばらく話していたものの、難しい顔をしている。
 
「そんな小さなサイズのは無いか。。。え?ほんと?助かる。だったら、本人の足にあわせて作ってもらえる?分かった。今すぐ連れていく」
 
私たちは顔を見合わせた。
 
「アクアちゃんの足のサイズに合わせて、小道具係の人が今からシークレットシューズを作ってくれるって」
 
「わっ」
 
「それで男の子役をする時はシークレットシューズで、女の子役の時はローファーにすれば、身長差を演出できる」
 
「どのくらい底上げするんですか?」
「3cmくらいが限度ですよね?」
と富永さんが美原さんに訊く。
 
「そのくらいだと思います。5cmやっちゃうと多分不自然になります」
と美原さん。
 
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「よし、じゃアクアちゃん行こう」
「はい」
 
それでもう夜中0時を過ぎているのだが、富永さんはアクアを連れて飛び出して行った。
 

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「モンスターの造形はどうします?」
「時間があったら、色々な怪物のお面とか作るんだけどねぇ」
「ショッカーの戦闘員みたいなのでは?」
と政子が言う。
 
「うん。それが妥当かも。すると人数をごまかしやすいし」
 
「ボスが1人くらい欲しいですね。猿のお面か何かでも」
とコスモス。
 
「それは何とか調達してもらおう」
 
それで美原さんは移動中の富永さんに電話していた。向こうもそのくらいは多分何とかなるだろうと言っていた。
 
「結果的にアクアを夜遅くまで連れ回してしまったから、撮影が明日の午後になるのなら、明日の午前中は寝せておきません?」
と私は提案した。
 
「それがいいね」
「それこそ私がスタンドインをしてリハーサルしましょう」
とコスモス。
 
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「じゃ私とマリはモンスター役のスタンドインで」
「よし。その線で行こう」
 

結局私たちは1時すぎに解散したが、アクアと富永さんは2時頃戻って来たようである。
 
翌11月8日(土)朝は朝食後、確保してもらったスタジオに移動して、すぐリハーサルを始めた。このストーリーの半分以上はスタジオで撮影することになる。別途撮影したハワイの各地の街やビーチの映像にそれを重ね合わせる。
 
それでこのリハーサルは監督の美原さんと主演のアクア抜きでおこなった。アクアは本番に備えて寝せているし、美原さんは午前中、街やビーチの様子を撮影しに飛び回っている。
 
それでコスモスがアクアの役(男の子/女の子の2役)を演じ、私と政子がモンスター役をやってストーリーを実演してみる。男の子と女の子が並ぶシーンでは富永さんに相手役を務めてもらう。これを美原さんの助手・安藤さんが撮影しつつ、気付いたことを言ってもらう。撮影したビデオを私たちも見て、検討を重ねる。
 
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実は本番に出演する人も撮影する人もここに居ないのだが、本当に時間の無い中の作業なので、実際のシナリオに添って実行してみて、不自然な所に気付いたら可能な限り調整しておく必要がある。安藤さんは1年ほど美原さんの助手をしている映像作家の卵ということで、さすがセミプロだけに有用な助言を多数してもらった。
 
「格闘技でモンスターを倒すことを考えていたけど、これは剣をふるって倒したほうがよくない?」
 
「美原先生に確認してみます」
 
それで安藤さんがメールしてみると、美原さんも剣を使うの賛成ということであった。それで富永さんが撮影用のスポンジの剣を調達してくれるようナカムラさんに頼んでいた。
 

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お昼頃、美原さんが戻って来て、私たちのリハーサルを見てもらう。
 
「けっこういい雰囲気に出来てるね!」
と彼女は言い、多少の修正が入る。
 
それでシナリオを一応確定とした。
 
コスモスがアクアを起こしに行き、私たちはいったん昼食を取ることにした。
 
13時頃、ナカムラさんがエキストラの人たち、男女12人を連れてきた。現地の俳優学校の生徒さんたちらしい。ショッカーの怪人のような雰囲気の衣装を配る。「Oh! No!」「God!」と苦笑するような声が上がっている。
 
「それ顔はどうすんの?」
と政子が訊いた。
 
用意された衣装の顔部分は何も無い。のっぺらぼうである。
 
「ドクロの絵でも描く?」
とコスモスが訊いたが
 
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「炎がいい」
と政子は言った。
 
「へ?」
「だって水は火を制するでしょ?」
 
「なるほど〜!」
「アクアは水だもんね」
 
「よし、それ採用」
と美原さんが言い、『絵心のある人』ということで、私が白マジックを使って12枚のマスクに炎のようにも顔のようにも見える絵を描いた。
 
すると「Wow!」「Cute!」などの声が上がる。
 
「ケイ、それ可愛すぎる」
と政子が文句を言うが
 
「いや、いいよいいよ。そういう造形も面白い」
と言って美原さんは笑っていた。
 

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夏の日の想い出・東へ西へ(11)

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