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■夏の日の想い出・The City(3)

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この山村星歌の結婚式が行われた9月5日(と翌6日)、新潟市で「全日本クラブバスケット選抜大会」が開かれた。
 
これは裏関とも呼ばれる「関東クラブバスケット選抜大会」とは無関係の大会で「関東クラブバスケット選手権大会」の上位が出場している大会である。関東選手権の上位5チームが「全日本選手権」に出場できて、その内の上位2チームのみが「全日本選抜」にも出場できる仕組みになっている。
 
1月に行われた関東選手権で40minutesが優勝、ローキューツが3位だったので、両チームともに全日本選手権には出場したのだが、全日本選抜には40 minutesのみが出場した。但し40 minutesの中心選手である千里は5日まで中国でアジア選手権をやっているので、チームは千里抜きで臨んだ。
 
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私は一週間ほど前に、40 minutesの河合麻依子(旧姓溝口、クロスロードの準メンバー)から
 
「冬子さん、道具とか運ぶのにエルグランド借りられます?」
と打診されたので
 
「いいよいいよ」
と言っておいた。
 
運転は千里の専任ドライバーである矢鳴さんがするということであった。選手が運転すると、行きは良いが帰りは試合で疲れているので事故があってはまずいということで、千里が矢鳴さんに打診したらしいが、彼女たち専任ドライバーさんたちは、千里本人が乗車しない場合でも、こういったケースなどに便利に使ってもらってよいことになっている。実際矢鳴さんも千里がずっと合宿続きでここ2ヶ月ほどは暇にしていたので、久しぶりの仕事に張り切っていたようであった。
 
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「矢鳴さんは、千里の新しい車の方は運転しました?」
と私は6日車を返却に来た矢鳴さんに尋ねたのだが
 
「慣れるのに少し運転しておいて下さいと言われたので、本人もまだあまり乗っていないのに、勝手に100kmくらい運転させてもらいましたが、パワーがあっていいですね」
と彼女は言っていた。
 
「本人も運転しないうちに専任ドライバーさんが運転しているというのは私と同じパターンかも」
「へ?」
 

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9月8日。司法試験の結果が発表された。正望は合格していた。
 
私はスタジオで制作作業中だったのだが、正望からのメールが来ているのに気付き、電話して「おめでとう!」と言った。それでしばらく話していたら政子が
「お祝いにお泊まりしておいで。帝国ホテル予約しておいたから」
と言ってクーポンを渡すのでびっくりする。
 
合格するものと思って予約しておいてくれたようである。七星さんも
「後は任せて」
と言っていたし、正望も今日は時間が取れるということであったので、政子のお膳立てに乗り、その日はスタジオを抜け出して正望と会ってきた。
 
政子が渋紙銀児さんと遭遇することになった日以来のデートであったが、その日はゆっくりと正望とふたりの時間に没頭した。
 
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「フーコがベッドに寝ていて突然譜面を書いたりしなかったのは初めてだ」
などと明け方、彼から言われた。
 
「ごめんねー。いつも」
 
なお、その日の政子は「後は任せて」と言った七星さんが近藤さんとふたりでしっかり監視して恵比寿のマンションまで戻り、近藤さんが御飯を作って!3人で食べて寝たらしい。
 
「マリちゃんは絶対にひとりにしないこと」というのが松前社長から厳命として下っている。
 

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『The City』の制作は佳境に入りつつあった。
 
9月初旬にはまず『枕が揺れる』を制作した。ややスラブっぽいメロディー進行もあるが、基本的にはシンプルなポップロックである。この曲のPVの前半では美空に出演してもらって、美空がピタゴラスイッチみたいに複雑な構造の目覚まし時計で起こされる様子が描かれている。
 
政子がドミノ倒しのドミノの端を爪で弾いた所から始まり、ボールが転がったり、プラレールが走ったり、バネが弾んだりしながら、最終的に美空が寝ている枕が取り去られてしまう(枕を本当に揺らすのは危険なのでしないことにした)。
 
それで眠そうにして起きてきた美空がお姫様のようなドレスに着替えて食卓に就くと、大量のピロシキが並んでいる。それを幸せそうに食べ始めるところでPVは終わっている。
 
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このPVが公開されたあと、最初の1時間くらいは「なんでピロシキなんだ?」と疑問の声があがっていたが、やがて「分かった! Pillow Shakeだ!」と1人が書き込むと、「ダジャレだったのか!」という声が多数また書き込まれていた。
 
「ちなみにあのピロシキの行方は?」
と質問が来たが
「1時間で終わりました」
と私が答えると
「さっすが、マリ&ミソリン」
という声が出ていた。
 
「しかし最近ローズ+リリーってマリの食欲頼りになってないか?」
「いや、そもそもマリちゃんがコンセプトを作っているユニットだから」
「そう言えばそうだった!」
 
「ケイって基本的に透明な天才なんだよ。基本的にケイは言われたことをそのままするだけの性格」
「それができることが凄いんだけどね」
「マリが無茶振りして、それをケイが何とか頑張って実現するのがあのユニットなんだよ」
 
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次に制作した『スポーツゲーム』は急遽入れることになった曲で、書いたのは鮎川ゆまである。ゆまは『ファイト!白雪姫』『ガラスの靴』『虹を越えて』と童話シリーズを続けてローズ+リリーに提供してくれたのだが、今回は千里が出場していたアジア選手権をわざわざ中国の武漢(ウーハン)まで見に行ってきたということで
 
「凄かった。日本よくやった!」
と、私のマンションに来た時も興奮した様子であった。
 
日本女子は美事この大会に優勝してリオデジャネイロ・オリンピックの切符を獲得した。今回のオリンピックの切符を獲得した競技は女子バスケが最初である。
 
「ボクが女の子ならバスケやりたかった」
などと言い出すので
「ゆまって、女の子じゃなかったんだっけ?」
と尋ねると
「実は自分ではあまり自信無い」
などと言っている。
 
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「でもそれでこれを書いたんだよ」
と言って、ぜひ次のアルバムでもシングルでもいいから入れてくれと言われたのがこの曲で、彼女の興奮が冷める前に制作することにした。
 
七星さん、ゆま、私、七美花によるサックス四重奏を入れている。KARIONの『月に想う』ではサックス三重奏を入れたが、四重奏というのは初めての試みであった。私がウィンドシンセでソプラノサックスの音を出し、ゆまがテナーサックスを吹いて、七美花と七星さんがアルトサックスのデュエットという構成である。
 
またこの曲には、ローズ+リリーでは珍しいコーラスが入っている。これはバレンシアのメンバー8人に入れてもらった。
 
またこの曲の間奏部分には実際にバスケをしている音が入っているが、これは40minutesとローキューツのメンバーに集まってもらい、練習試合をしているところを録音させてもらって使用した。
 
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8月27日のKARION富山公演の時に、私は青葉から、彼女や友人の清原空帆らが結成していたバンド Flying Sober (「焼きそば」のもじり:焼きそばは本当は fried noodle だと思うが UFO - Flying saucer と掛けている)の最後のCDをもらった。私はその中の曲『Flying Singer』に興味を持った。
 
青葉にこの曲をローズ+リリーで使わせてくれないかと打診すると、作曲者の空帆が「気に入ってくださったのなら、ぜひ使って下さい。印税楽しみにしてます」と言っていたと青葉から返事があった。
 
その時点ではまだJASRACに登録されていなかったので、書面で使用許可・編曲許可をもらって、これを制作することにした。できたらFlying Soberと一緒に演奏したいと考えたので打診した。青葉は教頭先生と相談した所9月中ならいいと言われたと返事をしてきた。しかし青葉は合唱部が9月6日に富山県大会、それで2位以内に入ると27日に北陸大会ということであったので、9月12-13日の土日に私とマリが、七星さん夫妻・風花と一緒に富山に赴き、Flying Soberのメンバーと一緒に高岡市内のスタジオで制作をした。
 
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この日程にしたのはFlying Soberのメンバーは夏休みが終わると受験勉強のため楽器の練習からも遠ざかってしまうので、まだ彼女たちの身体が楽器の感触を忘れていない内にやりたかったこともある。
 
メンバーはこの2日間は補習を休み、丸1日付き合ってくれた。しかし初日は近藤さんたちによる演奏の技術指導に終始した!その後、13日にひたすら練習を続け、同日夕方、休憩を兼ねた夕食を取ってから収録することにした。
 
この夕食は政子の希望で氷見市のきときと寿し本店まで行き、好きなだけ食べていいと言ったのだが、女子高校生たちの食欲が凄い!政子が食べた分も入れてお勘定が10万円を越えていた!
 
しかしお寿司効果か、みんな元気よく演奏してくれて、とてもいい音が取れた。翌14日の午前中にそのまま高岡市のスタジオで私とマリの歌を乗せ、14日夕方にPV用に制服姿のFlying Soberと一緒に私たちが歌っているシーンの撮影などを行った。PV用に、氷見の美しい斜張橋・比美乃江大橋、射水の巨大な新湊大橋、高岡のS字型に架かる伏木万葉大橋などの映像、また私たちが羽田空港で搭乗口に行く所や富山空港から降りた所の映像なども撮影しておいた。
 
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富山から戻ってきてから制作したのが『仮想表面』である。
 
元々このアルバムのコンセプトの中核になった曲で
 
「都会はその大きな波の中に全てを飲み込んでしまう」
 
という私が高校1年の時に新宿で友人と会っている時に思いついた字句を歌詞に読み込んでいる。
 
ワールドツアーとサマフェスで披露したことで、曲のタイトルだけは結構ファンに知られていたが、音源自体は全く公開してない。それでもフェスを聞いた人が記憶に頼って(?)自分で演奏したものが、結構youtubeなどの動画投稿サイトにチラチラ見られ、私たちはそれを取り敢えず放置しておいた。
 
月丘・山森のダブルキーボードがローズ+リリーでは珍しい「ポリフォニー」的な旋律を奏で、私は月丘さんの音に合わせて歌い、マリは山森さんの音に合わせて歌う。
 
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実際の収録も、月丘さんのキーボード+私の歌唱、山森さんのキーボード+マリの歌唱と、別々に録音している。微妙なタイミングのずれは私自身がDAW上で合わせつけ作業をした。他の楽器の音は、このふたつの録音を重ねたものを聴きながら酒向さんが(前乗りで)ドラムスを打ち、そのドラムスに合わせて近藤さん・鷹野さんがギターとベースを入れ、最終的に七星さんと私自身によるツイン・サックス、風花と七美花のツイン・フルート、鈴木真知子ちゃんと松村さんのツイン・ヴァイオリンを乗せている。
 
ローズ+リリーの曲は元々多重録音を多用したものが多かったのが最近はあまり多重にせず一発録音するものが増えていたのだが、この曲は珍しく昔の手法に近い形に戻って制作した。
 
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