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■春来(4)

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23日から30日まではトレセンでユニバーシアード代表の子たちと練習した。ユニバーシアード代表は最初2月に「代表候補」として24名が発表され、そのメンツで2月の第二次合宿、3月の第三次合宿をした。そのあと4月頭に正式に代表12名が発表された。この時、千里が辞退したためSGには神野晴鹿と伊香秋子が選ばれたのだが、その伊香秋子が5月中旬に怪我したと称して事実上辞退したため、結局代わりに千里が招集された。そして第四次合宿を迎えたのだが、元々がお互いによく知っているメンバーだし、日本代表として一緒に戦った経験のある子も何人も居て、千里としては居心地のいい仲間たちである。24名から12名に絞られた件に関しても、千里の問題以外は、みんな妥当な人選だと思ったようである。
 
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「千里さん、すごーく進化してる」
とポイントガードの水原由姫が言う。
 
「何が自信が無いから辞退するだよね、全く。これだけプレイできるのに勝手に辞退するのは犯罪だよ」
などと高校時代以来の親友で今回のチームの副主将である前田彰恵。
 
「千里が辞退するから、私は副主将まで引き受けるはめになったし」
「ごめーん」
「今からでも千里、副主将しない? だいたい千里本来副主将が付ける5番の背番号つけてるし」
と彰恵。彰恵の背番号は6番である。
 
「これびっくりした。私、追加招集なのに5番渡されるんだもん」
と千里。
 
「秋子ちゃんが辞退した後で、急遽番号を組み替えたみたいですね」
と7番の番号を付ける森田雪子が言う。彼女は千里の高校の後輩であり、また40 minutesの仲間でもある。
 
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「でも副主将は彰恵でいいと思うよ。私、人望無いし」
と千里。
 
「人望はさておき、実力では飛び抜けてるよね。少なくとも1on1で千里に勝てる子は誰もいないし」
と主将の鞠原江美子。むろん江美子が主将の番号4を付けている。
 
この江美子と彰恵と千里の3人だけが1990年度生まれ(修士OG)である。今回の代表メンバーは千里たちの学年が3人、1つ下(修士2年)が1人、2つ下(修士1年または学部OG)が6人、3つ下(大学4年)が2人という構成だ。
 
「2月には私、千里さんに結構勝てたのに、今日は全敗。なんか勝てる気がしない」
などと千里の高校の後輩でもある湧見絵津子が言う。
 
「いや、そういう絵津子も無茶苦茶進化してる」
と渡辺純子が言う。
 
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「そういう純子だって3月から飛躍的に進化した」
と加藤絵理。
 
湧見絵津子・渡辺純子・加藤絵理、そして大学に進学しなかったのでユニバ代表にはなっていないが鈴木志麻子の4人は2009-2010年に「高校女子四天王」と呼ばれた良きライバルである。おそらく次世代のA代表の中核になる選手である。
 
「いや、みんなそれぞれ進化しているよ。この1ヶ月半、みんなよく頑張って練習していたみたいだね」
と篠原監督も笑顔で言っていた。
 

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この合宿の始まった23日、日本の資格停止処分の解除をするかどうかを決める会議が6月18-20日に開かれる予定だったのが8月7-9日に延期されたというニュースが飛び込んで来て、千里たちユニバ代表を不安にさせた。
 
ユニバーシアードはその会議より前、7月4-13日なのである。
 
この件について日本バスケ協会は緊急にFIBAに照会、その結果ユニバーシアードの出場可否については6月中旬の会議で別途話し合うという返事が返ってきて、千里たちはホッと胸をなで下ろしたのであった。
 

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さて、青葉は24日の夜東北から高岡に戻った。25日(月)に学校に出て行き、お昼休みにお土産のお菓子をみんなで分ける。
 
「青葉、十和田湖に行ってきたんだ?」
「うん。近くでちょっと相談事があったんだよ」
「十和田湖というと八郎太郎と南祖坊の壮絶バトルだよね」
 
「そうそう。それで十和田湖を追い出された八郎は男鹿半島の八郎潟に逃げていく」
「でも田沢湖の竜子姫に惹かれて田沢湖に通うようになる。ここでまた南祖坊がちょっかいを出すけど、今度は八郎が勝って南祖坊は十和田湖に戻る」
 
「それで八郎が竜子さんとラブラブで八郎潟を留守にすることが多いので、八郎潟は次第に水深が浅くなっていってしまった。逆に田沢湖はどんどん水深が深くなっていった」
 
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「今では八郎潟はほとんど消えてしまったので八郎はずっと田沢湖に住んでいるらしい」
 
「でも龍の縄張り争いってのはたいへんだね」
「その手のバトルの伝説ってけっこうあちこちにあるよね」
「あ、十和田湖っていったら、近くにキリストの墓もあるでしょ?」
と彩矢が言い出す。
 
「うん。見て来たよ」
「ほんとにキリストさんの墓だった?」
「そんなの分からないよ」
と言って青葉は苦笑する。
 
「青葉でも分からないのか」
「古い塚だなとは思ったよ。でも何のためにイエスが日本に来たのかは理由付けが難しい所だね」
 
「キリストの墓は確か羽咋(はくい)にもあったよね」
「え?ほんと?」
 
「有名人の墓ってけっこうあちこちにあったりするもん」
 
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そんなことを言っていたら、おやつの匂いをかぎつけて隣のクラスから来ていた空帆が言う。
 
「それ時々混同されているけど、キリストじゃなくてモーゼの墓なんだよ」
「モーゼなんだ!」
 
空帆は輪島市出身である。
 
「ついでに羽咋に近いことは近いけど、宝達志水町だよ」
「へー」
「羽咋はUFOの里として有名でUFOサミットなんて開かれたこともある」
「ほほお」
「昔から空飛ぶ円盤の目撃情報が多いんだよね」
「それって何かの自然現象なんだろうね」
「たぶんそうだと思う。グロッケンの妖怪とか富山湾の蜃気楼とか、その手のものと似た現象なんだと思うよ」
 
「よし、モーゼの墓に行ってみよう」
などと言い出すのは、当然美由紀である。
 
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「足は〜?」
「誰か運転免許取った人?」
と質問するも誰も手をあげない。
 
「あ、吉田、自動車学校行ってなかった?」
と唐突に美由紀は吉田君に話を振る。
 
「え?何何?」
と他の男子の友人と話していた吉田君がこちらに振り返る。
 
「吉田、もう免許取ったんだっけ?」
「まだだよ。今第2段階」
「何それ?」
 
「運転免許の講習は第1段階と第2段階に別れるんだよ。第1段階は校内のコースで練習する。それで仮免試験を受けてそれに合格すると第2段階になって実際の路上で練習する」
と日香理が解説する。
 
「ああ、じゃもう運転できるんだ?」
「できないよ。仮免許練習中の札を前後に出して、指導教官が助手席に同乗している状態でないと運転できない」
 
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「路上で運転できるということは実際の車を走らせられるんでしょ?」
「指導者無しで運転したら無免許運転で捕まるよ」
「なんだ。面倒だね」
 
それで青葉を含めた数人が親に連絡してみる。すると結局吉田君のお母さんが車を出してもいいと言ってくれた。お母さんはふだんはミラココアに乗っているのだが、お父さんのノアを持って来てくれるらしい。
 
「行くのは5月31日・日曜日でいい?」
「OKOK」
 
「それ何人乗り?」
「7人乗り」
 
「じゃ行くのは、私と青葉と日香理と彩矢と空帆ちゃんと吉田だな」
と美由紀が言う。
 
「それで母ちゃんから伝言。モーゼの墓に行くなら、スカート厳禁、おしゃれ靴厳禁。手首まである長袖、足を完全に隠す長ズボン、帽子を着用。黒い服は上下とも厳禁。帽子も黒いのは不可。それからリップクリームやヘアスプレーも含めて化粧品の類いは厳禁。靴はスニーカーとかウォーキングシューズ、できたら軽トレッキングシューズ」
 
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「何それ〜?」
「軽登山の装備が必要ってこと。香料を使うと蜂が寄ってくる。黒い服を着ていると蜂が興奮するから死にたくなかったら、黒は使わないでって」
 
「ひゃー」
「自分の喪服になってしまうのか」
 
「残念だ。せっかくだから吉田にスカート穿かせようと思ったのに」
「なんでそういう話になるんだよ!?」
 

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千里の合宿は5月30日(土)の夕方、無事終了した。合宿所の部屋の片付けをしていた千里は冬子からメールが来ていることに気づく。
 
「どうしたの?」
と同室の江美子が訊く。
 
「ごめーん。打ち上げパス。ちょっと野暮用で行ってくる」
「ああ、彼氏とのデート?」
「そちらは忙しいから逢えないと返事しといた」
「ふむふむ」
 
それは冬子が麻薬を持っていたという疑いを掛けられているので、先日の芹菜リセさんとのレストランでの出来事について証言してくれないかという連絡であった。千里は
 
「忘れ物あったら悪いけどこのバッグに放り込んで私のアパートの前に置いておいてくれない?」
と江美子に言い、適当に荷物をまとめると部屋を飛び出し、NTCの駐車場に駐めていた自分のインプに飛び乗る。
 
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エンジンを掛けようとしたが最初かからなかった。3回くらいやってやっと掛かった。
 
「最近ちょっと調子悪いよなあ」
などと独り言を言う。
 
このインプは2009年4月に購入したものだが、その時点でオドメーターは5万kmであった。そして千里はその後6年間に24万km走っている。もうすぐ走行距離は30万kmに達する。
 
「もうすぐ車検だし、よくよくチェックしてもらおうかなあ」
 

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千里はNTCを出ると最初に冬子から指定された弁護士事務所の前まで行った。そして
 
「じゃ、千里ちゃん、よろしく〜」
と声を掛けると車を降りて自分は弁護士事務所に入っていく。一方車に残った千里は運転席に移動して自宅に向かった。
 
車を降りた方の千里(千里A)は、弁護士事務所の中に入り、先日のレストランでの出来事をそこにいる人たちに説明した。それで冬子の疑いは晴れたようで、彼らは芹菜を厳しく追及して入手経路を吐かせるなどと言っていた。
 
何か危ない話のようであったが、千里は先に冬子・政子、そして冬子たちの担当の氷川さんと一緒にタクシーに乗って冬子のマンションに移動した。そして深夜遅くまで4人で音楽談義などをしていた。
 
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千里は夜1時頃、冬子のマンションを出た。氷川さんは冬子のマンションに泊めてもらうようであったが、千里に「御自宅までこれで帰ってください」と言ってタクシーチケットをくれた。
 
取り敢えずありがたくもらっておく。
 
が千里は冬子のマンションのエントランスを出る前にすっと姿を消した。
 

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「お疲れ様〜」
と布団に寝ている千里に声を掛ける。そして千里は彼女を吸収して自分も布団に入り、彼女のぬくもりが残る寝具の中で深い睡眠に落ちていった。
 
そして5月31日の朝、5時に起きた千里は朝食を取ったあと車で羽田空港まで出かける。そして7:40の帯広行きJAL 573便に乗る。飛行機は9:10に《とかち帯広空港》に到着。玄関のところで鹿美さんと落ち合い、彼女の車に乗せてもらった。
 
「すみませんね。わざわざ迎えに来てもらって」
「OKOK。私も千里ちゃんに随分あちこち乗せてもらってるし」
「まあついででしたけどね。今回もここまで走ってこようかとも思ったんですけど昨日の夕方まで私都内でバスケの合宿やってたんですよ」
 
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「あ、そうか。バスケ選手が本業だったね」
「そうなんですよ。収入がほとんどなくて支出が年間100万以上ある本業です。お金にはならないけど、1日の大半はバスケしてますよ」
 
「すごいなあ。でもまあスポーツはごく一部の選手以外は儲からないよね」
「レースもみたいですけどね」
「そうなんだよー」
 
千里はこの春から、矢鳴さんのツテで鹿美さんと同じドライビング・クラブに所属している。今日は千里にとって初めてのレースなのである。
 
《十勝スピードウェイ》に到着したのは10時すぎであった。
 
 
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