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■春白(2)

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10月19日(月)いっぱい掛けて荷物がまとまった。元々ジャネはここに住んでいた訳ではない。ジャネの家はあくまで金沢市内の実家で、ここは東京に来た時の滞在所なので、必要最小限のものしか持って来ていない。君康の荷物はスポーツバッグ2個分くらいしかない。
 
それで調理器具などを箱にまとめた以外は、3時間ほど掛けて掃除をしただけで、荷物の整理は終わってしまった。連絡を受けて千里が様子を見に来た時はもう片付いていた。
 
「冷蔵庫とか洗濯機とか布団とか重いし、向こうに持って行くまてでもないから、千里さん、適当に処分してくれる?」
 
「いいよ。誰か欲しいという人がいたらあげていい?」
と千里。
 
「うん。その辺も適当に」
ということで、後の処分を頼む。
 
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「でもこのくらいなら、運送屋さんに頼むまでもないね」
と“マラ”と“マソ”は言い合う。
 
それで、千里がレンタカー屋さんに行ってノアを借りてきたた。そして3人で協力して荷物をノアに運び込むと、ふたりはマンションの鍵を千里に返却し、“マラ”が運転して金沢に向かった。
 
千里に車を借りてもらったのは“マソ”は免許を持っていないし、“マラ”はとっくに死亡しているからである。ふつう、幽霊には免許は取得できない。ただ“マラ”は死亡するまでは大型免許を持っていたし、運転はわりと上手い。
 
千里は「お巡りさんに捕まらないようにね」と言って2人を送り出した。
 

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一方、ホンダジェットで能登空港に戻った青葉は、幸花と2人で筒石の新居を探した。筒石はどうせ会社にはほとんど出社しないという話なので、プールに近い所がいいだろうということになる。それで、火牛スポーツセンターに近い、津幡町町内のマンションを借りることにした。そして19日、筒石本人も連れて不動産屋さんに行き、賃貸契約をした。即入居可、2LDKで家賃は5万円である。その場で鍵も受け取り、住所をジャネのスマホにメールした。
 
荷物を運んで来たジャネは20日朝津幡に到着し、筒石が会社に挨拶に行っている間に荷物を運び入れて、ノアは金沢の支店に返却した(乗り捨てることは最初から通知し、その料金まで払っている)。
 
こうして、4つの鏡が8月末やっと落ち着き場所か決まったと思ったら、緩菜の鏡を置いていた尾久のマンションが空き家になってしまったのである。
 
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千里は《こうちゃん》に命じてマンションをきれいにクリーニング・消毒までさせ、ジャネが使っていた布団も丸洗いさせたが(筒石の布団は傷んでいるし臭いも酷いので廃棄した)、ここに誰に住んでもらおうかと悩んだ。
 
「どこかに可愛い男の娘いないかなあ」
 
しかし、すぐ入居者が見つかることになる。
 

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2020年10月18日(日).
 
浜梨恵真は吹奏楽の関東大会に出るため他の吹奏楽部員たちと一緒に台東区のホールまで行った。密になるのを避けるため、演奏は無観客!である。指定された時刻にホールに行き、演奏したら退出する。一応他の学校の演奏はネットを通してリアルタイムに見ることはできる。実際この日は学校に2時間前に集合し、貸し切りバスで台東区まで来たが、その途中ずっとネットで他の学校の演奏を聴いていた。
 
会場外の公園で待機し、時間になった所で会場に入る。しかし無人のホールで演奏するというのは不思議な感じがした。まるで本番前のリハーサルでもしている気分で、みんなどうもやりにくかったようである。
 
それで審査結果は夕方発表しますと言われて退出する。
 
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「でも女子制服を着て、こんなに遠くまで出て来たのは初めて」
などと恵真は言ったが、
 
「あれ?浜梨さん、6月のバス遠足でも女子制服着てなかった?」
とクラスメイトでもある男子部員の田中君(バスーン担当)から言われた。
 
「エマちゃんは、入学式の時からセーラー服着ていた気がする」
などという意見も出てくる。
 
「だって、その頃はまだ女子制服作ってないよー」
「お姉さんの借りたのでは?」
「お姉ちゃん、別の高校だけど」
「お姉さん、どこだっけ?」
「L高校」
「頭いいんだ!」
「うん。私は頭悪くて」
 
「だけど入学式の時、ひとり違う制服着てる子がいると思った記憶あるよ。それがエマちゃんだったのでは?」
 
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「そこまで言われると自信無くなってきた」
 
今回の大会は7月の予選はビデオ審査方式で行われた。不正な編集などが行われないよう、主催者側のスタッフが各学校に行き、一発勝負で撮影録音している。この時は恵真は学生服で出た・・・はずなのだが、愛絵ちゃんたちは
 
「え?エマちゃん、その時はもううちの女子制服着てたじゃん」
と言う。
「うん。それも制服なんだから、違反じゃ無いよね、と言った記憶がある」
と副部長さんまで言う。
 
恵真は本当に当時男子制服を着ていたという自信が無くなってきた。
 
そしてこの大会が恵真にとって、U高校での最後の行事になったし、最後のアマチュア大会参加になった。
 

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10月18日(日).
 
緒方美鶴は、セーラー服を着て、他の吹奏楽部員と一緒に東京まで出て来た。この日台東区のホールで行われる吹奏楽の関東大会に出るのである。本来は9月に行われる予定だったのが、コロナで開催が遅れていた。美鶴はフルート担当だが、7月に行われたビデオ審査による山梨県大会では、男子制服を着てカメラに映っていた。それが今回は女子制服でリアルの大会に出られたので、あらためて女子生徒になれて良かったなあと思った。実際には、1学期の間、男子制服で部活に出ていた時期も、他のフルート担当(全員女子)とは、女子同士の感覚で話していた。ただトイレに行く時、男子制服では女子トイレに入れないので、トイレに行く度に疎外感を感じていた。それが今は一緒にトイレに行けるので充足感を感じている。
 
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「おしっこ自体、まるで女の子みたいにできるようになったし」
 
大会での演奏が終わった後、顧問の先生の許可を得て別行動にする。足立区にある§§ミュージックの女子寮に向かう。ここに姉の緒方飛蝶が住んでいる。
 
実は、姉にフルートを返すのが目的であった。飛蝶も美鶴もフルートを吹く。元々姉がフルートを吹いているのを見て、美鶴は自分も吹きたいと言った。それで母は「ファイフが吹けるようになったらね」と言ったので、美鶴はファイフを一所懸命練習し、半年で吹きこなした。それで母は飛蝶に洋銀のフルートを分割払で買ってあげて、飛蝶が吹いていた白銅のフルートを美鶴にあげるように言った。それで飛蝶が洋銀、美鶴が白銅のフルートを吹いていた。
 
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今年の夏、飛蝶がオーディションに上位入賞し、東京に出て来てタレントの卵として訓練を受け始めた。飛蝶は「寮に住むからたぶんフルート吹けないと思うし」と言い、自分の洋銀のフルートを「使っていいよ」と言って美鶴に渡していた。ところが寮の各部屋は防音になっているし、地下に個別に使える音楽練習室も多数ある。それで姉は「こちらでも練習できそうだから悪いけどやっぱ返して」と言ったのである。
 
そこで美鶴が今日の大会まで洋銀のフルートを遣い、その後、姉に返すことにしていた。姉は「お給料もらえるようになったらあんたにも洋銀のフルート買ってあげるね」と言っていた。そういう訳で大会の後、使っていたフルートを姉に渡そうと、寮に向かったのである。事前に電話したのでは、土日は研修には出ているかも知れないけど、研修は寮内なので、ずっと寮に居るということだった・
 
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それで大会に出た後の学校の女子制服のまま、足立区の寮まで電車と徒歩(歩くと20分掛かる)で寮まで来てみると、飛蝶は事務所に呼ばれて、ついさっき出て行ったという。それで美鶴は事務所に行ってみることにしたが、
 
「あんた駅から歩いてきたの!?寮に電話してもらったら、誰か迎えに行かせたのに」
などと言われ、寮に常駐している事務所の女性ドライバーさんに、信濃町の事務所まで送ってもらった。
 
それで事務所に入っていくと、姉は今仕事で放送局に行ったと言われる。どうも微妙にすれ違いになっている。それで仕方ないから寮に戻って待っていようかと思った時、25-26歳くらいの美人のお姉さんに声を掛けられたのである。
 
「君、飛蝶ちゃんの妹さん?」
「あ、はい」
 
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「君可愛いね。君もお姉ちゃんと一緒に信濃町ガールズに入らない?」
 
美鶴は思いもよらない話だったものの、スカウトされるのはいい気分だ。でも“その問題”を黙っている訳にはいかないと思い、自分の性別のことも正直に申告した。
 
しかしその美人のお姉さんは、それでも構わないと言い、結局美鶴も信濃町ガールズに入ることになる。そして姉と一緒に女子寮に住んで、一緒にレッスンを受けることになってしまうのである。学校もこちらの中学(姉が通っている学校)に転校することになった。
 

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10月24日(土).
 
恵真はAさんと14回目のセッションをした。この日はデビューシングルのPVを撮影すると言われた。
 
昨日は雨が降っていたので、どうなるかなと思っていたのだが、今日は晴れている。
 
「絶好の撮影日和ね」
と言われる。
 
「じゃ撮影地まで行くから車に乗って」
「はい。着替えは現地でですか」
「そそ」
 
それでセシルはどこか近郊の公園か何かに行くのかと思ったのだが、到着したのは羽田空港である!
 
「どこか遠出ですか?」
「うん。室戸岬(むろとみさき)まで」
「どこでしたっけ?」
「あんた学校の地理で習ってない?」
「不勉強なので」
「四国の右側の南端よ。ちなみに左側の南端は足摺岬。紀伊半島の南端は潮岬」
「だったら泊まりですか?」
「ううん。日帰り」
「四国まで日帰りなんですか〜?」
「そのくらい普通じゃん、グアムまで日帰りでPV撮ってきたこともあるわよ」
「なかなかハードですね」
 
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それでANAとかJALとかに乗るのかと思ったら、可愛い飛行機が駐まっている所に連れて行かれる。
 
「可愛い!」
 
「でしょ。§§ミュージックが長期レンタルしているホンダジェット。あんたは♪♪ハウスの契約アーティストだから、空いていればこれが自由に使える」
 
「へー」
 
中に先客がいる。いつもAさんの助手をしているアナ・オナ姉妹、録音にも立ち会ってくれていた♪♪ハウスの酒本和香さん(会計係らしい)、そして40代の男性。この人からは名刺を頂いた。サンシャイン映像制作の柿沼さんという人で、アーティストのPV、イメージビデオなどの撮影をしているらしい。その柿沼さんの助手らしい女性、それに恵真とAさんの合計7名で四国まで行くということであった。
 
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