【夏の日の想い出・赤い服】(5)

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7月24日夜、セレン・クロム・花園裕紀の3人が緊急にキュアルームに呼び出された。花ちゃんが来ている。
 
「実は今日行われたビデオガールコンテストで、優勝した子が男の娘だったのよ。その子を3階に入れたいんだけど、どこに入れるべきか悩んでね。あんたたちの意見を聞きたいのよ」
 
「ああ」
「セレンかクロムのどちらかあるいは両方4階に移動する?」
「どうしても他の選択肢が無ければ移動してもいいですけど、ぼくも多分クロムもまだ男性機能が生きてますよ」
「あるいは裕紀ちゃん、4階に行く?」
「ぼく男の子です」
「うん。あんたはそういう意識だよね」
「あるいは飛鳥ちゃんかひかりちゃんに4階に移動してもらう?」
「ひかりちゃんは夏休み終わったら男子寮に戻ってくるんですか?」
「本人の気持ち次第」
「帰って来る可能性があるなら、ちゃんと空けておくべきだと思います」
とセレンが言う。
 
このあたりは花園裕紀よりセレンの方がよほど寮長っぽい。
 

「もうひとつの選択肢は3階にいる5人のうち誰か5階に移動するか」
「ああ」
「でもネオンさんと同じフロアになれるほどの子が居ませんよ」
「セレンもクロムも今はネオン以上に年収があるけどね」
「でもぼくたちまだB契約だし」
「裕紀ちゃん5階に行く?」
「ぼくそこまで実績無いですー」
 
「ゆりこ副社長はセレンとクロムをまとめて5階の1室に放り込んだらなんて言ってたけどね」
 
3階の住人を性転換手術しちゃえばいいとも言ってたのは言わない方がいいなと花ちゃんは思った。そんなこと言ったら、ふたりとも費用出してもらえるなら手術受けたいと言いかねない。
 
セレンとクロムは顔を見合わせた。
 
「それならいいですよ」
「そのまま2人で結婚してもいいよ」
「ぼくたちまだ結婚できる年齢じゃありません」
「確かに」
 

ということで、セレンとクロムはまとめて503に放り込まれることになった。1人当たりの面積は少し狭くなるが、そのくらいいいですと2人とも言った。
 
引越作業は翌日7月25日に、業者さんも入れておこなった。裕紀、さくら、弘原如月、飛鳥、横川光照、更にはネオンまで手伝ってくれた。
 
「5階はずっとうちだけで寂しかったから住人が増えるのは嬉しい」
などとネオンも奧さんも言っていた。
 
「でもセレンちゃんとクロムちゃんって仲良いみたいだなと思ってたけど恋人だったのね」
とネオンが言う。
 
「違います!」
と2人は速攻で否定した!
 
でも明日には女子寮の全員から「結婚おめでとう」とか言われそう、とクロムは思った。
 
ともかくもそれでその日(7/25)の夕方には301,302の清掃がおこなわれ、新しい住人を受け入れられる態勢ができた。
 

7月24日にビデオガールコンテストを終えて、Honda-JetGoldで花巻空港まで送ってもらった湯谷薫は、空港に駐めていた車に両親と共に乗って、下北半島中央部付近にある川内町に帰った。
 
川内町からは、青森空港まで行くのも、花巻空港まで行くのも大して時間が変わらない。受験生の中に盛岡から参加した人がいたので、その子と一緒に花巻空港送迎ということになった。むろん花巻空港と自宅との間のガソリン代概算と高速代はもらっている。
 
すぐ翌日(7/25)、学校に転校を申し出ると、担任の先生は
「壮行会をしよう」
と言って、3年生の全員に連絡。30人の内、部活の大会などで都合がつかなかった2人を除いて28人(本人を含む)が集まり、ほんとに壮行会(時節柄飲食無し)を開いてくれた。
 
「櫻坂46に入るって?」
「利根川32でしょ?」
「そんな女の子のグループに私が入れるわけないじゃん」
「いや、カオルちゃんはゴールデンウィークに性転換手術を受けたと聞いた」
「まだ受けてないよぉ」
「あ、だったらこれから性転換手術受けて、櫻坂に入るの?」
「手術とか受けないって。私が入るのは信濃町ガールズというマイナーなグループ」
「ああ、アクアちゃんとか常滑舞音ちゃんのバックで踊ってる子たち」
「だったら、やはり性転換手術受けたのね」
「大丈夫だよ。カオルちゃん見て、元男の子だと思う子は居ないから」(←言いふらす気満々)
「あ、それ自体はわりと自信ある」
 

それでともかくも7/25日中に荷造りをし、特に親しい女子数名、特にチア部の子たちに別れを告げ、7/26夜明け前に出発し、母の運転する車で母・姉と一緒に花巻空港まで行った。空港には8時頃着いた。待っていてくれたHonda-JetGoldに荷物ごと母・姉と一緒に乗り、熊谷の郷愁飛行場まで飛ぶ。
 
そして荷物をSCCの車に乗せ替え、用賀の男子寮まで行った。
 
ただし薫の姉・湯谷紡は、信濃町の事務所に行き、コスモス社長に弟をビデオガールコンテストに参加させた件で謝罪した。
 
「すみません。ひとりだけでオーディションなんて出るの不安だったので、弟ならきっと女の子にしか見えないと思って一緒に参加させちゃいました」
「まあ確かにそういう子は時々居る」
「さすがにリアルで見られたら女でないのバレる気がしたのですが、契約するまで気付かれなかったと聞いてびっくりしました」
「薫さん、女の子にしか見えないから男の子と聞いてこちらこそびっくりした」
「あの子多分こっそり女性ホルモンやってるんだと思います」
「だろうね。中学3年で声変わりしてないというのは、普通それしか考えられない」
 
アクアや木下宏紀などは、極めて特殊なケースだ。
 

「もしお詫び金とか払った方がいいなら、私何年かかかると思うけど頑張って払いますので」
「それは別にいいよ。気付かなかったこちらにも落ち度があるからね。お詫び金を払うつもりがあるという、その気持ちだけで充分」
とコスモスは笑顔で言う。
 
「ありがとうございます」
 
「ところで、お姉さんもタレントになる気無い?」
「え〜〜〜〜!?」
 

一方用賀に行った薫は男子寮302号室に入居する。男女通して1番乗りである。
 
「いらっしゃーい」
と言って薫を歓迎し、荷解きなどを手伝ってくれた子の多くが女の子に見えるのでお母さんは戸惑っていた。それでセレンが
 
「ぼくたちみんな男の娘でーす」
と言うと、やっと納得していた。
 
「うちの子が目立たなくて済む」
と言ってお母さんは笑っていた。
 
「ここは寮内で女の子の服着て歩いてても誰も何も言いません。3階の住人はみんなそんな子ばかりだから」
 
「よかったじゃん。あんた気楽に女の子できるね」
「うん。居心地良さそう」
「ちなみに2階にいるのは普通の男の子ね」
「なるほどー」
 
「4階に居るのはもう男の子やめちゃった子」
とセレンが言うと、さくらが
「異議あり」
などと言っていた。
 
確かに女の子になるつもりならダミー睾丸など入れなかったろう。さくらとしては、男性化を止めたかったか本物の睾丸を取っただけである。自分としては49%くらい女の子のつもりでいる。
 

薫のお母さんは“女子寮に”1泊して翌日“ひとりで”青森に帰った。
 
ちなみに男子寮302号室に置かれていた信濃町ガールズのユニフォームはもちろんスカートタイプのみである!
 

今回のオーディションで2位になった松崎典佳は7月24日の午後、Honda-JetRedで熊谷の郷愁飛行場から薩摩川内市の蘭牟田飛行場まで飛んだ。
 
「今年の春に飛行場ができて商工会とかの人が騒いでましたけど、どこかの企業の専用飛行場と聞いてたから、自分がそこを使うとは思いも寄りませんでした」
と典佳は言う。
 
「§§ミュージックがムーランエアーの25%の株主だし、§§ミュージック会長のケイさんがアイミューズの専務でもあるから、自由に使えるんですよ」
とパイロットの高山さんが言っていた。
 
「凄いですね。大きな女子寮、巨大な全天候型撮影スタジオ、自前のハイヤー会社に自家用飛行機とかも持ってて。§§ミュージックって巨大資本なんですね」
「アクアの稼ぎが膨大だからでしょうね」
「なるほどー」
「今回の映画のギャラが40億円らしいし」
「きゃー!」
 

25日に学校に行って転校を申し入れる。
 
「へー。東京に出てタレントになるんだ?」
「タレント予備軍ですけどね」
 
連絡の付いたクラスの有志とバレー部とで合同の壮行会(飲食無し)を開いてくれた。
 
「事務所はどこ?」
「ジャニーズ?LDH?スターダスト?」
「§§ミュージックというところ」
「そこ女の子専門のプロダクションじゃないの?入れてくれるの?」
「大丈夫。性転換手術受けてから加入するから」
 
むろんみんなジョークで言っている。
 
「女の子になるのなら、ちゃんと“わたし”って言えるようになろう」
「それが最大の難題だなあ」
 

机とか本棚・布団などは寮に用意されているという話だったので、典佳は数日分の着換えや身の回りのものと、愛用のフルートだけ旅行バッグ2つに積めた。残りの着替えはあとで送ってもらうことにする。
 
それで典佳は7月26日朝、藺牟田飛行場まで母に送ってもらい、Honda-JetRedで熊谷の郷愁飛行場まで飛んだ。
 
「あれ?君1人だけ?」
「はい。特に荷物も無いし」
「荷物もそれだけなんだ?」
「着替えとか本とかCDとかは宅急便で送ってもらいます」
「なるほどね」
 
それで熊谷からはSCCの車で五反野の女子寮に入った。松崎典佳はA203に入った。
 
男子寮に行った薫の少し後、女子寮ではトップの入寮だった。
 

6位になった奈良県御所(ごせ)市の石塚舞菜は7/24 に_Honda-Jetblueで関空まで送ってもらい、父が運転する車で御所市に帰還した。翌日25日に転校を申し入れ書類を作ってもらう。やはり他の子と同様にクラス委員が呼びかけて、クラスメイトたちは有志で壮行会を開いてくれた。
 
それで26日いっぱいまで掛けて荷造りをし、26日夜、父の運転する車に母・姉と一緒に乗って東京へ向かった。父は休憩しながら夜の東名/新東名を走り、7月27日のお昼過ぎ、東京に到着。五反野の女子寮まで行き入寮した。彼女はA207に入った。女子寮では2番乗りである。
 
両親・姉の手で荷解きや必要なものの購入などをする。両親たちは今夜帰ると言っていたが、花ちゃんは
 
「長旅だから休憩してから帰ったほうがいい」
と言い、お姉さんは舞菜の部屋に、両親はメゾン・ドゥラ・カデットに泊めた。そして翌日(7/28)3人で奈良に帰って行った。
 

4位になった茨城県水戸市の杜屋幸代は24日母の運転する車で帰宅した後、25日に学校に行って転校を申し入れたら担任の先生が出張中だから少し待ってと言われた。
 
それで荷造りしながら待っていた。この日、クラス委員が呼びかけて夕方有志が集まり、壮行会をしてくれた(飲食無し:幸代の母が用意したケンタッキーは各自持ち帰り)。
 
27日になって担任の先生が
「ごめんごめん。タレントとか大変だろうけど頑張ってね」
と言って、転出の書類を自宅まで持って来てくれた。それで、その日の内に幸代は母の車で東京に出て、(7/27午後)五反野の女子寮に入寮した。杜屋幸代はA205になった。女子寮3番乗りである。
 

3位になった愛知県大府市の吉坂恵夜は、24日に小牧までHonda-Jetblackで送ってもらったあと、25日(月)に学校に転校を申し入れた。するとクラス委員から明日送別会をするよと言われたので、早く東京に行きたいけどまあいいかと思った。それで25日いっぱい掛けて荷造りをし、26日の午後に送別会(飲食無し)をしてもらった。その後、祖父から親戚で壮行会してやると言われ、27日の夕方、祖父の家に行き、親戚のおばちゃん・おじちゃんたちの飲み会!に付き合わされた。
 
ただし、本人は『5人以上での会食が禁止されているから』と言って、宴会の部屋には入らず、離れた部屋で、母・叔母と3人でケーキとお茶を飲んでいた。
 
結局7月28日に“お酒を飲まなかった”母とその叔母が交替で車を運転してくれて東京に出、28日夕方、五反野の女子寮に入寮した。吉坂恵夜はA204に入った。色々余計なことで時間を食ったので自分が入寮最後かな?と思ったが、あんたは4番目でまだあと1人来てないと聞いてホッとした。自分以上にのんびりしてる子もいるんだなと思った。
 
なおこの宴会参加者から3人もコロナ感染者が出た(父は幸いにも陰性)ので
「あの部屋に入らなくて良かったぁ」
と思った。
 
この件は一応副寮母さんに報告したが、
「あんた自身がその部屋に入ってないなら濃厚接触者には該当しないね」
と言われた。念のため検査したが陰性であった。
 

5位だった富山県氷見市の吉川萌花は、7月24日、Honda-JetTigerで富山空港まで送ってもらい帰宅した。
 
「何日までに東京に行かないといけないの?」
と留守番をしていた父から訊かれる。
 
「今月中には寮に入ってと言われた」
「ああ、じゃ金曜日(7/29)の晩から俺が東京まで送っていくよ」
「うん」(←本人ものんびり構えている)
 
それでのんびりと荷造りし、7月29日に大学生で金沢に出ているお兄さんだけ置いてそれ以外の家族4人で車に乗り東京に向かう。父が運転して翌朝到着。7月30日10時頃、五反野の寮に入った。吉川萌花はA206に入った。今回最後の入寮者である。
 
一晩中運転していた父が車内で寝ている中、残りの3人で荷物を運び込む。
 
花ちゃんが、荷物の搬入をしている女の子に目を留める。
 
吉川萌花は156cmほどの背丈があるが、その子は148cmくらいである。
 

「君、妹さん?まだ小学生かな?」
「ぼく高校生です」
とその子は恥ずかしそうに小さな声で答えた。その答え方を見て花ちゃんは瞬間的に「この子タレントの才能がある」と直観した。
 
「高校生なんだ?ちょっと君の歌を聴かせてよ」
と言って、その子を地下の練習室に連れて行く。萌花本人も付いてくる。
 
最初に音域を確認すると、下はF3から上はC6まで出ている。
 
「君、音域広いね!」
と驚く。特にC6が出るのは凄い。音域は2オクターブ半になるけど、この子練習すればきっと3オクターブ出るようになる、と思った。
 
それで何か好きな歌を歌ってみせてと言うと
「じゃ『ロンドンデリーの歌』」
と言う。こんな難しい曲を指定するというのは、歌によほど自信がある子だ。
 
「最初の音をください」
と言うので、花ちゃんはG#4の音をあげた。
 

それで伴奏する。
 
この音で始めると調はA-major になり、基本和音は A, D, E7 となって、最高音は"C#6" になる。つまりさっき音域確認で出た最高音より更に半音上である。
 
花ちゃんがピアノで伴奏していると、さすがに最高音の所は苦しそうだったが何とか出た。歌い終わったところで花ちゃんは拍手した。妹の萌花も笑顔で拍手している。花ちゃんは、この子は町田朱美や山本コリンなどのレベルの歌い手だと思った。物凄く上手い。
 
それで花ちゃんは言った。
 
「今最高音でC#6まで出ていた」
「え〜?」
と本人も驚いている。
 
「物事って自分が出来ると思っている範囲の半歩先まではできるものなんだよ」
と花ちゃんは言った。
 
萌花も頷いている。そして言った。
「実はお兄ちゃん、私より歌が上手いんですよね」
 

花ちゃんは聞き違ったと思った。
「お姉さんも充分歌手になる才能がある」
 
「私、お兄ちゃんならレベル高いから高校生でも採ってもらえる可能性あるし一緒に受けない?と言ったんですけど、女子バスケ部辞められないと言うから」
 
花ちゃんは“お兄ちゃん”と聞いた気がしたが、“女子バスケ部”というのなら女子で間違い無いだろうと思った。
 
「ああ、レギュラー選手なのかな。ポイントガードか何か?」
 
花ちゃんは背の高い人が多いバスケットで、この体格で務まるのはポイントガードだろうと思った。
 
「いえ、ぼくマネージャーなんですけど、人数の少ない部なので、少なくともウィンターカップまでは辞められません」
と言う。
 

「ああ、人数は少ないけど強いのね」
「インターハイ予選では3位だったんです」
「惜しかったね!」
 
それで花ちゃんは、萌花の“姉”に、近い内に高岡にも§§ミュージックの音楽教室を開設するから、津幡でも高岡でもいいから、レッスンを受けてみないかと勧誘した。それでウィンターカップが終了した後、よかったら東京に出て来ないかと言った。
 
花ちゃんは念のため確認しておこうと思った。
 
「そうだ。君、よかったら生徒手帳見せてよ」
「はい」
 
それで彼女が出した生徒手帳を見ると、ちゃんと女子制服で写った写真がプリントされているので、やはり女子で間違い無いなと思う。花ちゃんは彼女の名前、“吉川日和”というのをメモし
「高岡の教室がオープンしたらお知らせ送るね」
と言った。
 
日和ちゃんはその日女子寮の萌花の部屋に一緒に泊まり、両親はメゾン・ドゥラ・カデットに泊めた。そして翌日3人で富山に帰って行った。
 

7月27日(水).
 
白鳥リズムのシングルが発売されたが、この件は少し後で詳述する。
 

7月27日(水).
 
青葉が伏木のスタジオで進めていたアクアのアルバムの編曲作業は、この日完了し、編曲データが東京で制作指揮を執っている花咲ロンドの所に送られてきた。
 
「お疲れ様。ありがとうございます。大宮先生、妊娠なさっているのに、お疲れでしたね。ゆっくり休んでください」
とロンドは言ったのだが、
 
「それよりも南田容子ちゃんと立花紀子ちゃんが、たくさん作業してくれてクタクタなんですよ。この2人2日くらい休ませてやってくれません?」
 
「はい、どっちみち8月上旬まではスケジュールを空けておきましたから」
 
それで2人は7/29-30を休みにして、7/31に熊谷に帰すことにした。
 

そして青葉は7月28日早朝、東京五反野の女子寮地下B30スタジオに乗り込んできたのである。
 
「大宮先生!」
「知人の車で送ってもらった」
「お身体大丈夫ですか?」
「平気平気。車内ではぐっすり寝てたから。それより歌唱を聴こうか」
「はい」
 
それでアクアが歌った仮ミックス音源を聴く。
 
「ね、舞音ちゃんが歌った『沖に娘だ』ももうCD出来てるよね?聴かせてよ」
「はい。ちょっと待ってください」
 
それでロンドはサロンに行き、営業用に確保していたCDを1枚持って来た。8月3日発売予定のものである。これはCD-Rに焼いた営業用のものである。
 
『沖に娘だ』という曲は、アクアの映画主題歌『お気に召すまま』を舞音がタイトルをもじって同じ曲に別の歌詞を載せた、替え歌である。今回その替え歌をアクアが逆カバーしてアルバムに取り込んでいる。その時、時間節約のため、伴奏は招き猫が演奏したものを流用している。
 

青葉は言った。
「これ伴奏はエレメントガードの解釈で録り直そうよ」
「時間があれば録り直したいねと言ってました」
「やはりこれ招き猫の世界になってるもん」
 
招き猫は木下君の好み+舞音自身のセンスで、デイスコ色の強い音作りになっている。エレメントガードはハードロック的な色彩が強い。
 
それで午前中にもエレメントガードに再度演奏してもらい、それにあらためてアクアの歌を載せることにした。
 
青葉はアクアを電話で呼んだ。
 
「FちゃんでもMちゃんでもいいから下に降りてきて」
「大宮万葉先生!?もしかして東京に出て来られたんですか?」
「うん」
 
それで降りてきたが、スカートを穿いているので多分Fなのだろう。
 
「ここまでの君の歌で少し気になった所を言うから」
「はい」
と言ってアクアはメモの用意をしている。
 

それて青葉は仮音源を流しながら適宜一時停止し
「ここはね・・・」
と言って修正してほしい所を指摘した。
 
「じゃ午後からぼくの歌、全部録り直しましょうよ」
とアクアは言う。
「アクアもだいぶ集中して作業してると思うけど大丈夫?」
「疲れたら適宜Mと交替します」
「うん」
 
それで最後に編曲が仕上がった『光の舞』の歌唱も含めてこの日の午後全て録り直すことになった。
 
それで9時頃出て来たコスモスとも話していたらコスモスが
「チェルシカの天使の歌詞を少し直してもらませんか」
と言う。
 
「何かまずい所ありました?」
「これ少し直すと映画で使える気がします」
「映画ってまさか『お気に召すまま』ですか?」
「そうです」
「もう配信用のデータはできているのでは?」
「今日の中部欧州夏時間朝6時までなら差し替えが間に合います」
「中部欧州夏時間って・・・」
「日本時間13時ですね」
「え〜〜!?」
 

コスモスの要請はこの曲のサビに出てくる
「クピド・ペポリカ・チェルシカ」
というところを
「ハイメン・ペポリカ・チェルシカ」
と変えて欲しいということであった。
 
それで時間が無いので既存の伴奏音源にこの場でアクアに歌わせた音源を作り、大曽根さんに電話を通して聴かせた。すると大曽根さん、そして監督も差し替えに賛成し、エンドロールの音楽が変更された。ドイツ側は時間に間に合うなら変えてよいと言った。
 
この段階では坂出モナが歌う『お気に召すまま』を再度流して、エンドロールを入れるようになっていた。本当は主役のアクアに歌わせたかったが、アクアの負荷の問題で別の曲の再利用を考えていた。それをアクアの歌に差し替えた。坂出モナ側も「アクアちゃんが歌えるならそれがいいと思う」と言った。
 
またこの歌に合わせて、急遽映画ラスト、ロザリンド役の俳優の口上にもこの呪文を取り込むことにし、アクアに再度、日本語・英語・ドイツ語・フランス語で吹き込み直させた。セリフの修正は時間が無いのでコスモスが行ない、多数の言語に通じている青葉にも確認してもらった。
 
しかし英語はまだいいとして、ドイツ語・フランス語の文章をすぐ修正できるコスモスさんって凄いな、と青葉は思った。
 
修正したデータを送ったのがもう11時である。これを大和映像のスタッフが急遽、完成していた映画のデータに組み込み、世界配信用のデータが完成したのはもう12時半であった。
 
それで配信用のディスクをプレスする直前に、データ変更が行われたのである。サウンドトラックのプレス締め切りは翌日だったので、そちらにもこの曲が追加されてリマスターされた。
 

7/28の午後は、ひと休みして15時から作業が再開された。
 
それまでに『沖に娘だ』をエレメントガードが伴奏した音源も出来上がっていたので、それを聴きながらあらためてアクアに歌ってもらったが
 
「慣れてるバンドの演奏だと歌いやすーい」
とアクアは言っていた。
 
結局『沖に娘だ』の伴奏をベースに『お気に召すまま』の伴奏も録り直したいとエレメントガードのヤコが言ったので、それも録り直してもらったが、アクアも
「前の伴奏よりこちらがいいです」
と言って、気持ち良さそうに歌っていた。
 
アクアの歌唱を生で聴きながら青葉が色々注文を付ける。ロンドは青葉の体調を考えて作業は21時で打ち切るつもりだったのだが、青葉が
「大丈夫です。私“は”妊娠してないほうですから」
と言うので、夜1時くらいまで作業を続けてもらった。
 
作業中アクアは時々
「疲れたから交替しまーす」
と言ってほんとに交替しながら作業していた。
 
ロンドは
「もう同じ人物が複数居るのには慣れた」
などと言っていた!
 
かくして音源制作作業は、7/31 20時頃完了した。
 

青葉は7月31日夜に「明日帰りますね」と言っていたし、8月1日の朝食を食べたあと、姿を見なくなったので恐らく伏木に帰ったのだろう(*47).
 
アクアは8月1-5日はアルバムのMV制作をした。実際には大半のビデオを葉月が吹き替え役になってほぼ撮影が終わっており、葉月が演じた部分をアクアの映像に差し替えるための素材を作ったのである。
 
葉月はこのMVの制作まで終わってから8月6日に用賀の自宅に戻った。
 
立山煌は音源制作が終了したところで8月1日に解放されて男子寮に戻った。
「すみません。荷物は後日あらためて取りに来ます」
「ずっと女子寮に住んでてもいいよ」
「勘弁してください」
 
彼は1ヶ月ぶりに男子寮に戻り、セレン・クロムから
「お帰り。男の子に戻れたね」
などと言われた。
「このまま女の子になってね。手術は予約してるからとか言われたらどうしようと思った」
などと言っていた。
 
なお、立山煌は性別に疑いの余地がないので、女子寮生たちによる“解剖検査”は受けていない!
 
(*47) 青葉(青葉R)は伏木に戻るつもりだったが、美鳳さんの親切?でグラナダに飛ばされ、青葉Lの出産まで雑音から遮断された状態で水泳の練習に専念することになる。
 
でも当面妊娠で無理ができない青葉Lに代わり、作曲・編曲も一手に引き受けることになる!
 

8月1日(月).
 
千里(千里3)は、北区NTCでバスケット女子日本代表の第4次合宿に入った。
 

8月1日(月) 0:00.
 
この日を境に、§§ミュージックのホームページ、およびTKRのホームページ上で、§§ミュージックの全てのタレントおよび信濃町ガールズのプロフィールから“性別”の表記が消えた。
 
コスモスは
「性別なんて個人的な問題だし、わざわざ表記することでもないのでは、という意見が強まり削除しました」
と述べた。
 
世間では
「やはりアクアの性別変更を正式に発表する前の地ならしでは?」
などという観測もあった。
 

その日私は少し時間が取れたので、予定日(8/3)間近の政子の様子を見に政子の実家に行ってみた。
 
庭にビニールプールを出して、あやめ・夏絵・大輝を遊ばせている。それを政子が眺めている。
 
「マーサ。赤ちゃんの様子は?」
「毎日元気に暴れてるけど、まだ出てくる気配は無い」
「ふーん」
 
それでしばらく子供たちの様子を見ている。
 
「でも大輝(1歳7ヶ月)にも女の子水着を着せたんだ?」
「ああ、あやめ(3歳5ヶ月)が以前着てた水着」
「ふーん」
 
少し見てて、あることに気がつく。
 
「大輝のちんちんがまるで無いみたい」
「タックしてあげた。だってひとりだけお股が盛り上がってたら仲間外れみたいで可哀想じゃん」
「タックとか良くないよ。内臓や血管を圧迫するし」
「じゃ、やはり手術してきれいに取っちゃった方がいい?」
「そんなの本人の気持ち無視して手術しちゃうのは犯罪だからね」
「ちんちん取ってほしいと思うように育てよう」
「それも虐待」
 

8月3日(水).
 
政子は自身が産む3人目の子供となる女の子を出産した。予定日当日だった。
 
誕生日が夏絵(2018.8.3)と同じである。ジャスト4つ違いの姉妹というのも面白いと私は思った。誕生日は確実に合同でされるので、本人たちは面白くないかもしれないが。
 
陣痛が始まってから約12時間の安産であった。でも政子は
「辛かったよう」
と泣いていた。
 
「なんで女ばかりこんな苦しい目に遭うのよ?次は冬が産んでよ」
「正直忙しすぎて妊娠してる暇が無い」
「でも冬って10人くらい居るんでしょ?1人くらい妊娠しても何とかなるんじゃないの?」
「私はひとりだよー」
「怪しいなあ」
 

政子は「名前はもう決めていた」と言うので、きっと大輔さんと話して決めていたのだろうと思った。名前は“かえで”だと言う。
 
それで出生届を出してきてと言われたのだが、父親欄が空白である。
 
「この子、胎児認知してたんだっけ?」
「認知は無し」
「なんで〜〜?」
「色々事情があって認知できない」
 
私は急に不安になった。まさかこの子、貴昭さんの子供ということは?
 
(↑冬子はなぜ政子が自分に出生届けの提出を頼んだのか全く分かってない)
 
ともかくも私は出生届を出してきた。窓口でも父親のことを訊かれたが、父親については話し合い中だが、本人は充分経済的な余裕があるので、養育には不安は無いということを説明しておいた。
 

私は戻って来てから、病院に子供の血液型について確認した。
 
ショックを覚えた。
 
かえでの血液型はAB型だったのである。
 
政子はAB型である。大輔さんはO型である。AB型とO型の両親から生まれる子供は、A型かB型になり、AB型というのはあり得ない。
 
つまり、かえでは大輔さんの子供ではない!
 

私は悩んだ。
 
貴昭はB型である。実は、長女のあやめができた時、貴昭の奥さんが、その子供は貴昭の子供ではないのかと疑い、貴昭は決して浮気はしていないと言ってDNA鑑定をした。それであやめは貴昭の子供ではないことが判明したが、その時私は貴昭がB型であることを知った。
 
B型とAB型の両親からならAB型が生まれることもある。
 
この子はやはり貴昭の子供ということはないか?
 
だいたい政子は妊娠中から、この子は大輔の子供ではないと言っていたではないか。私はジョークと思っていたのだが、やはりこの子は貴昭の子?
 

いや。
 
貴昭は言っていた。
 
確かに露子さんとの結婚後に何度か政子と“会った”ことはある。でも露子が病気で倒れた後は決して“していない”と。
 
彼の言葉を信じよう。
 
それに彼の性格として、万一政子とセックスしたとしても。確実に避妊したと思う。
 
だとすると、かえでは一体誰の子供?
 
(↑ケイがそれを知るのは半年後になる。ケイにしては、にぶすぎる)
 

8月3日(水).
 
常滑舞音の2冊目の写真集『オールシーズン・マネ』が発売された。
それと同時に舞音の15枚目のシングルで写真集と同名の『オールシーズン・マネ』も発売された。
 
舞音のファースト写真集『舞音がみんなの真似をした』は昨年6月25日に発売されたが直後に“舞音ヌード流出騒動”が起きて、ケチが付く形になった。アクアの発案で別人のヌードであったことが証明され、写真集の売上はかえって伸びた。
 
しかしその時点から舞音のプロデュースチームは、絶対にケチの付かない形での写真集製作のプロジェクトを開始していたのである。
 
まず“ヌード騒動”の最中に
「申し訳無い。私の管理が甘かったかも知れない」
などと“謝罪”して結果的に
「写真家が謝ったのなら本物かも」
と言われて、火に油を注ぐ形になった写真家さんのひとり(この写真集は5人の写真家が分担して撮影している)には§§ミュージックが厳重抗議。結果的に写真家さんは報酬を返上すると表明。それは7月に発生した静岡・神奈川集中豪雨の被災地に寄付された。
 
そして§§ミュージックは次は時間が掛かっても絶対信頼できる1人の写真家に全て撮ってもらう方針を固めた。そして新たに、女性写真家の春山サクラさんに
「1年掛けて舞音の写真を撮ってほしい」
と依頼した。
 
それで、春山さんは1年にわたって舞音に帯同し、全国各地で写真を撮影してくれたのである。また千里に付けてもらった霊能者?仙北龍美さん(←何か凄く偽名っぽいんですけど)に舞音の身辺を気をつけておいてもらい、隠しカメラ・盗聴器の類いを徹底的に排除するようにした。
 
また、外出先で舞音が着替える時には必ず悠木恵美か坂田由里に一緒に居てもらい、気をつけるようにした。(水谷姉妹はやや頼りない)
 

杉本ひかり(七石プリム)が女子寮に移動されてから半月ほどがたった日、女子寮の一部で囁く声があった。
 
「ね。隠しカメラ設置できた?」
 
「無理〜。あの子、ちょっと自販機に行く間もしっかり部屋の鍵を掛けるから侵入できない」
 
「あの子の部屋でおしゃべりとかして、あの子がトイレとかに立った時に仕掛けたのは、速攻で捨てられた」
「どうして仕掛けた場所が分かるの〜〜?」
「まあ仕掛ける場所ってだいたい限られてるからなあ」
 
という訳で、女子寮“シークレット・サービス”の面々は、いまだに、ひかりのヌード覗き見に成功していないのである!(痴漢だと思う)
 

さて舞音のほうに話を戻す。
 
それで前回は全編コスプレの写真集だったのが、今回は普通の写真が半分を占め、“アイドル常滑舞音”を強調した写真集になっている。
 
何ヶ所か集中撮影した所もある。郷愁村の白雪城では、ドレス姿の白雪姫、武装の白雪姫のコスプレをし、毒リンゴを囓るシーン、倒れているシーンも写している。小浜の鏡迷宮では、合わせ鏡状態にして“増殖舞音”と称した。ここでは、鏡の前で王子様衣裳の花貝パールとダンスするシーン、シンデレラ衣裳の恋珠ルビーと白雪姫衣裳の舞音で並ぶシーンも収められている。
 
佐渡金山では金鉱掘りに扮した舞音、金の延べ棒を両手で抱える舞音(マネ・ゲッツ・マネー)、トキを背景にしたマネ(トキ・イズ・マネー)など10点ほどの写真が納められた。
 
また“オールシーズン”というタイトルに合わせて各月に様々な場所で撮影した写真も並んでいる。
 
1月 根室
2月 金沢兼六園
3月 田沢湖
4月 富士急ハイランド
5月 錦帯橋
6月 宮古島
7月 与論島
8月 青島
9月 ナガシマ・スパーランド
10月 しまなみ海道
11月 福島の双葉町
12月 宮城の金華山
 
寒い時に北海道・東北に行き、暑い時に沖縄・九州に行っている!
 
季節感を出すためにどうしてもそうなったのである。
 

後半のスコプレ写真では、最初に動物?のコスプレが続く。
 
●北海道美幌町のマウンテンフット牧場で牛たちを前に牛のコスプレをしている舞音
●日高のサラブレッドの牧場で馬たちを前に馬のコスプレをしている舞音
●北海道内と思われる某所で多数の丹頂鶴たちと鶴のコスプレで踊る舞音(*48)
●宮城県南三陸町の羊牧場で羊たちを前に羊のコスプレをしている舞音
●富士急ハイランド/トーマスランドでパーシーのコスプレをしている舞音
●信楽のタヌキたちが多数並んでいるお店の前でタヌキのコスプレをしている舞音(*49)
●四国某所で多数のキツネたちを背景にキツネのコスプレをしている舞音
●常滑陶磁器会館で多数の招き猫たちを前に招き猫のコスプレをしている舞音(*50)
 
などなど“現地”で撮影した動物?コスプレが20点ほど入っている。
 
(*48) 到達困難な場所で“聖地巡礼”しようとして事故に遭う人が出たらいけないので場所非公開とした。
 
(*49) 信楽焼のタヌキを5匹(ラージ・ビッグ・ミディアム・スモール・ミニ)お買い上げして、その5匹とコスプレした舞音が Honda-JetOrangeの前に並ぶ絵も撮影している。スモールサイズは水谷姉が膝に(金玉に?)載せている。ミニは水谷妹が掌に載せている。むろん水谷姉妹もタヌキのコスプレをしている。
 
(*50) ここでも招き猫を7色(白黒赤青黄緑金)お買い上げして、舞音と CAT sisters が女子寮のサロンで各々の招き猫を持って映った絵が収録されている。
 
舞音:黒、水谷姉:白、妹:金、リエナ:赤、マイコ:青、ライカ:黄、めぐみ:緑
 

また各地の様々な像の前で、その像と同様のコスプレをした写真が20点ほど並んでいる。
 
●札幌のクラーク博士像
●田沢湖のたつこ像
●十和田湖の乙女の像(with鈴鹿あまめ)
●仙台の伊達政宗
●お台場の自由の女神
●同じくガンダム像(顔が分からん!)
●熱海の金色夜叉(お宮=木下宏紀)
●富山県氷見市・光禅寺のハットリ君・怪物くん・プロゴルファー猿・喪黒福造の像(舞音が4人を演じる:4枚の写真を並べる)
●手取フィッシュランド/ウルトラマンスタジアムでウルトラの母
●神戸の鉄人28号
●境港の水木しげるロードで鬼太郎・猫娘・砂かけ婆・ 座敷童子
●博多駅前の黒田武士
●鹿児島の西郷隆盛
 
などなどが並んでいる。
 
これらの写真の一部には、舞音が別件の仕事であちこち訪れた時に、悠木恵美が撮影したものも含まれている。悠木恵美も春山さんにかなり指導されて写真撮影が上達している。
 

舞音が様々な絵画のコスプレをした写真が並んでいる(この部分が特に予算がかかっている)。
 
モナリザ、ポルトリガトのマドンナ、着衣のマヤ、羊飼いの少女、半跏思惟像、聖徳太子(with水谷姉妹)、ブージヴァルのダンス(with花貝パール)など。
 
最後は4枚の季節を表す絵画のコスプレが並ぶ。
 
●夏:グランド・ジャット島の日曜日の午後(with信濃町ガールズ)
●秋:落ち穂拾い(with水谷姉妹:3人とも顔が映ってない!予算掛けてるのに)
●冬:トナカイの橇に乗るサンタクロース(with水谷姉妹:絵画ではない気がする)
●春:プリマヴェーラ(左:水谷姉妹・恋珠ルビー・篠原倉光/右:悠木恵美・坂田由里/右側の坂田由里を襲う男は人形・空中に浮かんでいるエロスは風船)
 
そしてオールラストには、アマビエのコスプレをした舞音であった。
 

写真集と同時に発売されたCDは次のような構成であった。
(ほんとにシングルか?ミニアルバムということは?)
 
常滑舞音15th『オールシーズン・マネ』
『オールシーズン・コスプレ』(未来居住作詞・琴沢幸穂作曲)
『着衣のマネ』(名寄多恵作詞・福沢聖子作曲)
『舞音がセーラーさんの真似をした』(未来居住作詞・福沢聖子作曲)
『がんばれ!ちょっと努力』(水野歌絵作詞・琴沢幸穂作曲)
『沖に娘だ』(未来居住作詞・琴沢幸穂作曲)
 
今回のCDには“特別な仕掛け”があったため、ダウンロードは少数で物理的なCDを買った人が圧倒的であった。ひとりで3枚とか、布教用?に10枚とか買った人もあったようである。詳細後述。
 

冒頭曲『オールシーズン・コスプレ』は季節ごとのコスプレ讃歌である。舞音は歌う。
 
4月は花見でコスプレ
5月は茶摘みでコスプレ
6月は傘差してコスプレ
7月は登山でコスプレ
8月は浜辺でコスプレ
9月は文化祭でコスプレ
10月はハロウィンでコスプレ
11月は七五三でコスプレ
12月はサンタでコスプレ
1月は振袖でコスプレ
2月はスキーでコスプレ
3月はひな祭りでコスプレ
 
コスプレ、コスプレ、毎日コスプレ
コスプレ、コスプレ、毎朝コスプレ
コスプレ、コスプレ、毎晩コスプレ
 
(舞音「お母さん、私の服知らな〜い?」)
(コスモス「その辺の衣裳着てたら?」)
 
今日は鶏さんコスプレで唐揚げ!
 
(↑共食いしてると言われた)
 

間奏で様々な季節の歌に合わせて舞音のコスプレ映像が流れた。
 
●4月日本古謡「さくらさくら」桜模様の小紋の和服
●5月唱歌「茶摘み」茶摘み女のコスプレ
●6月童謡「雨降り」黄色い傘差してランドセル
●7月「山男の歌」登山の格好(ココヘリを持つ)
●8月唱歌「海」ビキニ・・・のお人形!(*51)
●9月童謡「証城寺の狸囃子」タヌキのコスプレ
●10月恋珠ルビー「かぼちゃ讃歌(*52)」魔女のコスプレ
●11月唱歌「もみじ」七五三衣裳
●12月「ジングルベル」サンタのコスプレ
●1月唱歌「一月一日」雪模様の振袖
●2月唱歌「スキー」スキーの格好
●3月唱歌「嬉しいひな祭り」“出で立つ乙女”のコスプレ
 
(*51) 「舞音本人のビキニ姿の披露はコスモス社長に禁止されました」という字幕が流れる。
 
(*52)『かぼちゃ讃歌』はドラマ『シンドルバッド』の挿入歌。
 

『着衣のマネ』はゴヤの名作『着衣のマハ(着衣のマヤとも)』のコスプレをしたものである。歌の内容はわりとどうでもいいのだが!今回ものすごく話題になったのが“めくれるジャケット”である。
 
『着衣のマハ(着衣のマヤ)』といえば何と言ってもそれと対になる『裸のマハ(裸のマヤ)』である。
 
舞音のCDのジャケットはこの『着衣のマハ』のコスプレをした舞音の写真がモチーフになっているが、この衣服の部分が“めくれる”ようにできている。
 
まさか舞音のヌードが出てるとは思わないものの、めくれるものはめくってみたくなるのが多くの男性の心情というものである。
 
ここは圧着シールのような状態になっている。実際めくってみると、舞音の(ものと思われる)レオタード姿の写真が出てくるだけである。ここまでは多くの人の予想範囲であった。
 
しかし発売後「もう1枚めくれる気がする」という書き込みがネットにあふれる。これをめくるには、ジャケットの表面をカッターで切り取る必要がある。
 

それで切ってみた人が見たものは
 
レントゲン写真であった!
 
舞音が「とても恥ずかしい写真を公開しました」などと思わせぶりのことを言っていたので、一瞬もしかして舞音ちゃんのレントゲン写真?と思った人もいたのだが
 
「これ肋骨が15本ある!」
 
ということで、写真ではなくリアルに描かれた絵であることが判明した!
 
「いや元々ゴヤの『裸のマヤ』は人体比率がおかしい。この女性は肋骨が15本くらいある、というのは昔から言われていた」
 
「それを如実に表現したんだな」
「まだデフォルメなんて思想が無かった200年前にそれを実行したゴヤの先進性がここにある」
 
ということで話は決着した。ちなみにレオタード写真は舞音の実際のレオタード姿の写真であることを舞音は明言している。
 
舞音ちゃんスタイルいい〜!と特に女性たちから絶賛された。
 
舞音本人は
「せめてビキニ姿とかでもお見せしたいところですが、許可が出ないので」
と言っていた。
 
(でもアクアは高校時代からビキニ姿を披露していた!)
 

『舞音がセーラーさんの真似をした』は、7月3日に舞音が射水市を訪れた時に帆船・海王丸の総帆展帆が行われていて、その前でセーラーさんのコスプレをして撮影した映像を使用している。舞音は帆を広げた海王丸の前で、女学生用セーラー服姿とセーラーさんの服姿の両方の動画を撮影していて、この動画をもとに曲を作ったものである。
 
「セーラー服とセーラーの服の違いは、セーラー服は可愛くて、セーラーの服は格好良くて」
とか
「セーラー服着るのは女学生、セーラーの服着るのは水兵さん」
などと歌っている。
 
MVにはセーラー服姿の舞音と水谷姉妹が学校の校庭でダンスしている所、また海上自衛隊の本物の水兵さんが舞音と一緒に岸壁で踊る所まで収録されている。これは横須賀基地に撮影協力してもらったものである。
 
この曲の間奏には『かもめの水兵さん』のモチーフが取り込まれている。
 

『がんばれ!ちょっと努力』は、舞音と吉永浩が主演している連続ドラマ『アイドルを探せ』の挿入歌である。水野歌絵ことアクアから提供された歌詞を使用している。
 
ドラマの中では追いかけていた指輪を、赤信号で足止めを食って僅かなタイミングで逃してしまうシーンで使用された。
 
「今日うまく行かなくても明日はきっとうまく行く。また頑張ろう」
などと歌っている。また
「諦めない人に未来は開ける」
とも歌っている。
 
人生で頑張っている人全てへの応援歌である。
 

『沖に娘だ』はアクア映画の主題歌『お気に召すまま』(加糖珈琲作詞・琴沢幸穂作曲)の替え歌である。
 
舞音が『お気に召すまま』という作品を知らなくて、最初作品名を聞いた時
「『沖に娘だ』ってなんか面白そうなタイトルですね」
と言ったのに端を発している。
 
「では舞音君、そういうタイトルで歌詞を書いてみよう」
と言われて舞音(未来居住)が新たな歌詞を書き、同じ曲に乗せたものである。
 
この歌では、沖合に小さなタライ船に乗った乙姫様が漂流しているのを見て、浦島太郎、浦島次郎、浦島三郎が各々の船で助けに行くという物語である。最初に辿り着いた丸太船の浦島太郎と、続いて辿り着いたイカダ船の浦島次郎が乙姫の前で争っている隙に、準構造船(*53) で辿り着いた浦島三郎が乙姫を助けて、蓬莱(ほうらい)島の龍宮城まで送って行ってあげるという物語になっている。
 
2番では、乙姫様から浦島太郎は大きな玉手箱、浦島次郎は中くらいの玉手箱、浦島三郎は小さな玉手箱をもらう。大きな玉手箱を開けた浦島太郎は白い煙が出て来てお爺さんになったので乙姫と結婚できない。中くらいの玉手箱を開けた浦島次郎は赤い煙が出て来て女の子になっちゃって乙姫と結婚できない。小さな玉手箱を開けた浦島三郎は金色の煙が出て来て立派な貴族になり乙姫と結婚したという物語である。
 
乙姫を演じたのはむろん舞音、お爺さんになっちゃう浦島太郎は篠原倉光、女の子になっちゃう浦島次郎は木下宏紀、立派な貴族になる浦島三郎は花貝パールが演じている。
 
木下君が
「えーん。ぼく女の子になっちゃった。こんなの嫌だよう」
などと泣いている。
 

(*53) 準構造船とは、丸木舟の両側に板を取り付けて多人数あるいは多くの荷物を積めるようにした船。実際の浦島太郎の時代(6世紀頃)の主力だったと思われる。これが更に発達すると、丸木舟部分が無くなって、船体がほぼ板で作られた構造船となる。
 

この曲はアクアが逆カバーしているが、アクア版では、乙姫がアクアで、お爺さんになる浦島太郎は高崎ひろか、女の子になっちゃう浦島次郎は松梨詩恩、立派な貴族になる浦島三郎は水森ビーナ、と高崎三姉妹が演じてくれた。ビーナは「初めての男役だぁ!」などと言って張り切っていた。詩恩は
 
「ぼく女の子になっちゃった。折角だから可愛い服着よう。るんるん」
などと楽しそうに言っている。
 
このMVはアクアMには言わずにアクアFだけで撮っちゃった。それで
 
「やはり『ごめんね。私女の子だったの』と告白したから、女の子役するんだろうな」
などと言われていた。
 
 
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【夏の日の想い出・赤い服】(5)