【ジョイの診察室・雌雄を決する】(1)

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カインドリー・ジョイはその日最初の患者を診察室に入れた。
 
20代の男性2人である。
 
「どうなさいましたか?」
とジョイは2人に訊いたのだが、2人はいきなり殴り合いを始めた。
 
「ちょっと!あなたたち何してるの!?やめて」
とジョイは叫んだのだが、やがて2人の喧嘩の決着は着いたようである。
 
「負けたぁ」
と1人が言う。
 
「俺の勝ち」
ともうひとり。
 
「警備員を呼びますよ」
とジョイは厳しい声で言ったのだが、男たちは言った。
 
「雌雄を決したので、こいつを女にしてやってください」
「はあ?」
 
「俺たちは小学校の時以来のライバルで、何をやっても似たような成績でなかなか決着がつかなかったんです。でも28歳になったらしっかり雌雄を決しようと決めていたんです」
 
「それで雌雄が決したら、負けた方はお嫁さんになるということにしていたんです」
 
「俺が負けましたから、俺を女にしてください。仕方ないから俺がこいつの嫁さんになります」
 
「はぁ・・・」
 
ジョイは呆れてしまったのだが、本人が女にしてくれと言っているので性転換手術をしてあげた。
 
「すげー!女のお股だ。俺興奮しちまうぜ」
などと手術を受けた本人は言っている。
 
「これすげーな。早くセックスしてぇ」
などと勝負に勝った方も言っている。
 
それでふたりは実際に結婚したようである。その結婚式の写真も送ってきてくれたが、女になったほうはなかなか美しい花嫁さんになっていた。
 
まあ、本人たちが幸せならいいよね、とジョイは自分に言い聞かせた。
 
 
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【ジョイの診察室・雌雄を決する】(1)