【ファロスよさらば-Farewell to Phallus】(上)

目次
 
「ではH社に行ってきます」
 
僕は課長にそう声を掛けてから資料をまとめてカバンに詰め、オフィスの出口の方に行った。
 
「あ、お出かけですか?」
受付のミツコが声を掛ける。
 
「ええ。H社に営業に。前回までにかなり話が煮詰まっているので今日こそは契約に結びつけたいですね」
と僕は答えた。
 
「わあ、頑張って下さいね。じゃ、処置室にどうぞ」
とミツコが言うので僕は受付のそばにある小部屋に入り、ズボンを脱いでベッドに横になった。
 
「じゃ始めますね」と言ってミツコは僕の股間のファロスを左手で握ると激しく手を上下に動かし始めた。うっ、効く〜。ミツコは刺激の仕方がうまい。僕のファロスはあっという間に大きく硬くなってしまった。ああ、逝ってしまいそう。
 
そう思った瞬間、ミツコが右手に持つ斧が振り下ろされる。
 
ドン! 
と鈍い音がして僕のファロスとサックは股間から切り離された。激痛が走る! 
ミツコは笑顔で切り離されたファロスとサックを笑顔で摘まむとぎゅっと握りしめた。ファロスの先から白い液体が放出されるのを見て僕はそれが身体に付いている内に放出したかったなと思った。
 

 
20年前。僕はまた小学校の6年生だった。その年の大晦日、僕は少し憂鬱な気分だったが、両親は少しはしゃいでいたし、2つ年下の妹は凄く張り切っていた。
 
夕方に年越しの特別料理を食べたあと、お風呂に入るように言われる。僕は浴室で身体を洗い、特にお股のあたりをよくよく洗った。お風呂から上がると裸の上に白い絹の服を着せられる。
 
「じゃ最後の立ち小便をして来なさい」
と父から言われたが、僕は「お風呂に入る前にしたよ」
と答えた。
 
「じゃ最後のオナニーをしなさい」
と母から言われる。
「部屋でしてきていい?」
と訊いたが「男性機能があるという証拠を提出しないと、男の子の戸籍を維持できないから」
と言われ、その場でするように言われる。
 
恥ずかしいけど、僕は家族の見ている前で、自分のファロスをいじって大きくした。
母がその様子をビデオ撮影している。撮影は余情が入らないように女性がしなければならないことになっている。
 
人に見られていると変な気分だったけど、僕は5分くらいで逝ってしまった。
一部始終は母が撮影するピデオに記録されている。出てきた精液は試験管に採取され、検査液を入れられる。色が濃い青に変わる。
 
「うん。精子の濃度は濃いね」
と母が嬉しそうに言う。
 
母がカミソリを出して来て、お股の毛を全部剃ってしまった。毛の無い状態のその付近を見るのはたぶん2年ぶりくらいだろうか。そしていよいよ本番である。
 
妹は「私も実物でやるのは初めてだから失敗したら御免ね」と言うが、母は「スミコも3級切断師の試験に合格したもの。大丈夫よ」と言う。
 
僕は乾いた笑いをして、自分の身体を妹に任せた。
 
妹は少し緊張した面持ちで、愛用の医療用メスを取り出してきた。
 
「じゃ、お兄ちゃん、やるよ」
「うん。頼む」
 
妹は僕のファロスの根元にメスの刃を当てると「行きます」と言って刃を前後に動かし始めた。痛い!!! 僕は泣き叫びそうになったが、悲鳴を上げたり痛がったりすると男性資格を認められないので我慢した。
 
妹は僕のファロスとサックを30秒ほど掛けて切断した。
 
「やった!」と妹が言い、両親が「おめでとう!」と言って、僕はおとなになることができた。
 

 
現代では、おとなの男性はごく少数の例外的な場合を除き、ファロスを股間に付けたまま、外を出歩いてはいけないことになっている。
 
「おとな」の境界は中学生以上なので、みんな小学校6年生のうちにファロスを切断する。小学6年生ならいつ切断してもいいのだが、だいたい12歳の誕生日にやるか、大晦日の晩にやるかのどちらかである。僕は誕生日が3月20日で、卒業式より後になるので、大晦日に切断することになった。
 
切断は基本的に近親者の女性がやることになっており、姉妹か母にしてもらうのだが、うちの場合、妹がもう3級切断師の資格を取っていたので、妹にさせたのである。女のきょうだいがいない場合は母にしてもらうのが一般的であるし、母親もいない場合は親戚のおばちゃんや従姉妹などに切断してもらう場合もある。
 
切断した後は血がたくさん出るので、僕は初めてナプキンなるものを使った。
女の子なら小学5年生くらいから月経が始まるのでナプキンを既に使っているのだが、男の子はファロスを切断される小学6年生からナプキンを使うことになる。女の子は月経が来れば「おとな」扱いであるが、男の子はファロスを切断してやっと「おとな」になることができる。ナプキンを使うというのは「おとな」の象徴である。
 
僕はナプキンを当てた前開きの無いショーツを穿いた後、初めて穿くタイトスカートを身につけた。女の子は小さい頃からスカートを穿いているが、ファロスの付いている男の子はスカートを穿くことが禁じられている。切断して初めてスカートを穿くことを許されるのである。これもずっと穿きたいと思っていたので、僕は嬉しかった。
 
ただし男の子が穿くスカートと女の子が穿くスカートは違う。女の子は裾の広がったフレアスカートやヒダのあるプリーツスカートを穿くが、男の子は裾の狭いタイトスカートと決まっている。
 
古代には男性はズボンしか穿かなかったらしいが、現代ではズボンは会社の作業着というイメージが強く、プライベートでは男女ともスカートを穿くのが普通である。洋服屋さんにもズボンは子供用しか売っていない。おとなのズボンファッションを流行らせようと意欲的なデザイナーさんが制作したことも何度かあったが、ほとんど売れなかったらしい。事務職の男性は会社の中ではズボンを穿いているが、そういう作業用のズボンは企業用に一括販売されており、ふつうの洋服屋さんの店頭には並ばない。
 
トイレも小学生の内は女の子は個室だけが並ぶ女子トイレ、男の子は小便器と個室が併設された男子トイレを使うが、中学生以降は小便器が不要なのでトイレに男女の別は無くなる。小学校6年生の場合は、4月の新学期には男女半々だが、卒業までに全員ファロスが無くなり女子トイレを使うことになるので、6年生の女子トイレは5年生までの女子トイレの倍の面積がある。僕も3学期からは女子トイレ(実際にはファロスの無い子は男女とも使うから、「女子トイレ」というより「大人トイレ」と言うことが多い)に入ることになる。
 

切断された後、僕はおやすみを言って自室に戻り、用意してもらっていたネグリジェに着替えて寝た。子供の寝間着は男の子はパジャマ、女の子はネグリジェだが、ファロスを切断した後は男女ともネグリジェになる。これも着てみたいなと前々から思っていたので、嬉しかった。その日は良い夢が見られた。
 
翌朝はファロス切断してから初めてのおしっこをした。これまでは立ってファロスをズボンの前開きから出してしていたが、ファロスが無くなると、そういうおしっこの仕方は出来ないので、スカートをめくり、ショーツを下げて便器に腰掛けてした。ちょっと変な感じはするが、座っておしっこするのも、悪く無いなという気がする。これも「おとな」になった気分かな。
 
今まではホースで散水していた気分だったが、ファロスが無いと蛇口から直接水が出ているみたいな感じだと思った。
 
切断された跡を自分で見たが、ファロスもサックも無くなり、真っ平らな股間に、ポツンとおしっこの出てくる穴だけがあるのがちょっと不思議な感じがした。
 
冬休みが終わり、学校にタイトスカートを穿いて出て行くと「あ、切ったんだ? おめでとう」
とみんなから言われた。もうクラスの男子の大半が切断済みで、スカートを穿いていたので、ちょっと遅れてみんなの仲間になれた感じだ。まだ切ってない子はもうクラスに3人しかいなかったので、けっこう連帯感があったのだが、その子たちからも 
「わあ、ハルキも切っちゃったのか。いいなあ」
などと言われる。
 
僕もこれで「こども」から卒業したんだなという気分になる。そう言っている子たちも1月・2月の内にはファロスを切断する。そして、みんなセーラー服の制服を着て4月から中学に通う。中学の制服は男女ともセーラー服だが、女子はプリーツスカート、男子はタイトスカートである。
 

そんな昔のことをふと思い出していたら、ミツコが「どうかしたの?」と訊く。
 
「ううん。ちょっと今日の交渉のことで考えてた」
「ハルキちゃん、テクニッシャンだもん。きっとうまく行くよ」
「うん。頑張る。じゃね」
 
と言って、僕は内勤用制服のズボンをたたんで棚に置くと、外出用制服のミニスカートに履き替えて、処置室を出た。ミニスカートを穿くと何だか気合いが入る。これはある意味、戦闘服だという気もする。(僕はプライベートでは、膝下サイズのタイトスカートを穿いている) 
電車の駅に行く。入口のセキュリティゲートを通る。このゲートは、銃や刀剣などの武器、爆弾類にも反応するが、股間に付いているファロスにも反応する。
万一ファロスを身体に付けたままこのゲートを通ると、凄い警報が鳴るので、すぐ警官が駆けつけてきて、署に連行され事情を聴かれることになる。むろん僕は会社を出る時に切断してきたので、ゲートは反応しない。
 
電車に乗るが、昼間の電車は圧倒的に女性の比率が高い。ふわふわしたスカートを穿き、お化粧をきれいにしている女性を見ると、ちょっと憧れの気分にもなるが、僕は当面男を辞めるつもりもないので、ちょっと微笑んで電車内のニュースボードに目を移す。タルバキヤとミルバニアが平和条約を結べそうだというのが流れている。あそこはもう15年くらい戦争をしていたのを国連軍の介入で取り敢えず戦闘停止している。そこから和平が結べたら画期的だ。
 
やがて目的地の駅に着き、僕は電車を降りる。客先のビルに入る。受付の女性に挨拶して、社長の都合を訊く。
 
「はい。アポイント頂いてましたね。でも前の来客が少し時間が掛かっていて。
少し待合室でお待ち頂けますか?」
「分かりました。ありがとうございます」
 
待合室に行くと、知り合いのメーカーの営業マンが待っている。
「おや、こんにちは」
「どもども」
と彼は挨拶なのか挨拶でないのか良く分からない言葉を発する。
 
「僕は12時の約束だったんですけどね。もう2時間待ってます」
「ありゃ。じゃ僕は更に4時間待ちくらいかな」
 
面会の予定がずれ込むのはいつものことである。僕は彼と世間話や、新製品情報、業界の話題などでいろいろおしゃべりして時間を過ごした。
 
やがて女性社員が、彼を案内しに来る。
「ね、社長、前の人と契約した?」
と彼が訊いた。
「はい。無事成約しました」
「あちゃあ。じゃ今日はもう無理かなあ」
などと彼は頭を掻きながら応接室を出て行った。
 
やがて夕方6時くらいになってから、女性社員が僕を呼びに来る。応接室を出ると、ちょうど件のメーカーの人が帰る所だ。
 
「どうでした?」と訊くとダメダメという感じで彼は首を振った。やれやれ。
社長も70歳で年だからなあ・・・と僕は思いながらも、社長室に向かった。
 

その日の打ち合わせ自体は順調だった。社長はこれまでの打ち合わせでかなりうちのサービス内容に関心を示していた。今日は前回細かい部分で質問のあった所を、提供元に確認してきていたので、それを説明するのが主な打ち合わせ内容だった。
 
「かなり良いねえ。君も熱心だし、ぜひ契約したい所だな」
「では社長、契約してください」
「契約できたらOKだよ」
 
「では契約室に行きましょう」
「だけどね。君、僕は今日既に1件契約してるんだよね」
「大丈夫です。ちゃんとできますよ」
 
と僕が言うと、社長は「ほほぉ」と言って、僕を連れて契約室に入った。
 
僕はまず自分が裸になり、それから社長にキスしながら服を脱がせて行った。
 
「君、まるで女みたいに腰がくびれてるね」と社長が言う。
「節制してますから」
「ファロスが付いてないから一瞬女かと思っちゃうね」
「ふふ。女性の営業は禁止されてますからね」
 
下着まで全部脱がせ終わったが、社長のファロスは小さいままである。70歳にもなり、さすがに精力が衰えている。しかも今日は既に1度「成約」している。
でも僕も優秀な営業マンとしての自負があった。
 
まずは立ったまま生尺をする。
 
「おお!」
と声を上げる。
 
「気持ちいい!ベッドに入っていいかい?」
「はい、入りましょう」
 
僕は社長をリードしてベッドに横にし、口と指を使って、気持ち良くなるように刺激する。社長が大きな声を立てる。
 
「君、君、うますぎる! 娼婦になれるよ」
 
娼婦になれるというのは営業マンとして最高の褒め言葉である。娼婦というのはこの世界では最高の稼ぎ手であり、だいたい年収は2000〜3000万と言われている。
しかし娼婦を買うのは1回10万から20万必要なので、そう簡単に買うことはできない。また、娼婦になるには専門の学部に通った上で厳しい国家試験にパスしなければならないので簡単にはなれない職業である。また男が娼婦になるためには、国家試験を受ける前に性別を女に変更する必要がある。僕は男をやめるつもりは無かった。
 
しかし相手に射精させるにはベッドの上では女性的に行動する必要がある。僕は社長のファロスを密着させた自分の両足の隙間に挿入させた。いわゆるスマタというテクである。これでまるで女性のマロスに挿入しているかのような感覚にさせる技術を僕は持っていた。社長は興奮して激しく腰を動かす。僕はそれに合わせて自分の腰も動かし、刺激がより強くなるようにした。
 
そしてベッドの上で10分ほどの攻防の末、社長は射精して逝った。
 
「逝きましたね」と僕。
「契約成立だね」と社長。
 
社長は笑顔で握手を求めた。僕も笑顔でしっかりと手を握り返した。
 
「今日は1度逝っていたのに、また逝かせるなんて君はほんとに凄い」
などと言われる。
 
早速、契約室を出て、契約書を作成した。2枚作成し電子署名してもらう。それをオンラインでうちの会社に転送し、うちの社長の電子署名をもらって返送される。
 
「お疲れ様」
と言って、僕はふたたび社長と握手した。
 

現代では契約は当事者同士のセックスで成立するものとされている。成立には金銭を支払う側の射精が必要である。そのため、営業マンはあらゆる性テクニックを習得しており、優秀な営業マンというのは、上手に相手に射精をさせることのできる人である。どんなに口での交渉がうまくても、射精させることができなければ営業マンとしては失格である。
 
契約の後、社長室でテレビを見ていたら、ちょうどタルバキヤとミルバニアの平和条約に関する交渉が生中継されていた。どちらの大統領もにこやかな顔をしている。
 
「これは条約成立するかね?」
「するといいですね。これまで何万人の生命が失われたか」
 
しばらく社長と雑談している内、向こうは話し合いが妥結して、いよいよ条約締結という雰囲気になったようである。ベッドが運び込まれてきて、双方の大統領が服を脱ぎ、裸になってベッドに寝転がった。そしてお互い反対側に頭を向け、いわゆるシックスナインの体勢になる。お互いに相手のファロスを口に咥えている。ファロスはとても大事な器官であり、それを相手に舐めさせるというのは、相手を信頼しているからできることである。万一噛みきられたら男性としての能力だけでなく政治的な能力も失うことになる。
 
シックスナインはうまく行っているようで、どちらも気持ち良さそうにしている。
どちらもまだ40代なので精力は充分ある。そして、両者はほぼ同時に逝った。
 
「やったね」と社長が声を上げる。
「ええ、良かったです」と僕も言う。
 
国同士の交渉では、両方の代表がセックスをして、時間差3分以内で双方が射精できたら交渉成立とされる。今回は1〜2秒も差が無かったので、円満成立である。
 
テレビ画面の向こうで双方の大統領が握手をしている。用意していた平和条約の書類に双方がサインする。これでタルバキヤとミルバニアに平和が訪れた。
 

その日は遅くなったので会社に電話だけ入れて自宅に直帰する。
 
そして翌朝、契約書を手土産に会社に出社した。
 
「あ、聞きましたよ。契約取れたんですね。おめでとうございます」
と受付のミツコが言った。
「ありがとう。君が気持ち良くしてくれたからだよ」
「いえいえ、お仕事ですから」
とミツコはビジネススマイルである。
 
「では処置しましょう」
 
ミツコに伴われて僕は処置室に入り、スカートと前開きの無いショーツを脱いでベッドに横たわる。ミツコは冷蔵庫に入っている保管容器を出して来て、中から僕のファロスとサックを取り出した。
 
「では縫合します」
と言ってミツコは僕のファロスとサックを手早く股間に縫合して取り付けた。
 
ファロスに触ると独特の快感がある。サックの中に入っているボールを摘まむと微妙な苦痛がある。
 
「うん、快適。ありがとう」
とミツコに御礼を言って、僕は前開きのある男性用ブリーフを穿き、社内用のズボンの制服を穿いて、オフィスの中に入って行った。
 

男性は中学に入る前にファロスとサックを切断するが、切断した器官は保管容器に入れて、各家庭の冷蔵庫の中で保管され、月に1度は縫合してくっつけることになっている。
 
中高生の場合は、だいたい毎月最終金曜日の夕方に、近親者の女性の手で縫合が行われる。そしてその週末はファロスが付いた状態で過ごし、月曜日の朝、また近親者の女性の手で切断されるのである。
 
ただしファロスを付けたまま外に出ることはできないので、その週末はずっと家に籠もっていなければならない。昔は、男性だけ集めた「月の家」というのがあって、そこで過ごしていたらしいが、次第に集団で月籠もりする風習はすたれ現代では、だいたい家庭でファロスのある週末を過ごすことになっている。中高生の男の子はみんな、その期間、オナニーしまくりである。僕も当時は月末の金曜日夕方から月曜朝までの間に7〜8回はオナニーをしていた。何回できるか友だち同士でよく競争をしていて、高校の時同級生で30回やったという奴がいてすげー!とみんなで言ったものである。
 
学校を卒業して就職すると、ファロスの保管容器はだいたい会社に置くことが多い。
そして朝出勤してくると縫合してくっつけ、夕方退勤する時に切断される。この縫合と切断は、受付の女性がすることになっていて、会社の受付になるためには1級切断師の資格が必要である。うちみたいな株式公開している企業の場合は各営業所の受付はみんな切断師初段以上の資格を持っている。
 
切断師も小学生の女の子でも取得できる3級は道具が医療用メスに限定されているが、1級以上は様々な道具を使う人がおり、ジャボン刀と呼ばれる鋭利な刀や、ホウチョウと呼ばれる本来調理器具として作られたものを使う人もいるが、ミツコが使う斧はレアである。これを使いこなす切断師はそう多くない。ちなみにミツコは切断師の五段を持っている。これは切断の全国大会で優勝しなければ取得できない段位である。
 
ただ毎朝縫合して毎夕切断するとなると、さすがに痛い。切断には麻酔を使ってはいけないことになっているので、毎回激痛に耐える必要がある。そこで完全に社内でだけ仕事をしている人の中には、縫合・切断をほとんどせず、ファロスの無いまま仕事をしている男性もいる。しかし月に最低1度は縫合して射精をしなければ男性資格は維持できないので、だいたい月末の給料日の朝に縫合して、射精しているところを会社の保健衛生士にビデオ撮影してもらい、夕方また切断するということをする人もいる。
 

現代では「男性」というのは資格である。
 
男に生まれたからといって男性とは認められない。男性であるためには勃起能力と射精能力があることが必要であり、またファロス切断の痛みに耐えることが求められる。あの痛みに耐えることが「男」として認められる条件であり、ファロスを切られて痛がるようでは、男の資格は無いとされる。
 
男性の資格を維持するには、毎月ちゃんと射精している所と切断の痛みに耐える所をビデオ撮影して提出することが必要である。それが嫌なら男を辞めるしかない。
 
男を辞める場合は、役場に「男性廃業届」を出すだけでよい。だいたい毎年全男性の3〜4%が男性を廃業していると言われている。男性を廃業すると女性として扱われるが、女性は会社では課長以上の地位に就くことができない、営業職になれない、不動産や株式・国債などの金融資産を所有することができない、市長・県知事・大統領に立候補することができない(議員や大臣にはなれる)、会社勤めした時の給料が男性の半額しかもらえない、など様々な不利益を被ることになる。
 
逆に女性に生まれたものの社会的な地位を得たい人は、ファロスを不要な男性から譲ってもらい、身体にくっつけて仕事をしている。契約には射精が必要だから、ちゃんと射精できるように練習しているようだし、切断の痛みにもしっかり耐えている。僕の同級生の女の子の中にも3人ほど、男性資格を取得してバリバリ仕事をしている人もいる。
 
元々女性として生まれて「男性資格」を持っている人はプライベートでは女性として行動していることが多く、そういう人は、結婚相手として男性にも人気である。
こういう人たちは男性とも女性とも結婚することができる。(ファロスをくっつけても一方でマロスは維持しているので、男性機能も女性機能も持っている。自分で自分を妊娠させることも可能で、自分と結婚してもいいことになっている) 
男性を廃業してしまった人は基本的には女性扱いではあるが(スカートも男性用のタイトスカートではなく女性用のフレアスカートを穿くし、公的な場所に出る時はお化粧することが求められる)、女性との結婚は認められないし、男性と結婚するためには「女性身体証明書」が必要で、そのためには性交の際に男性のファロスを受け入れられるマロスが身体にあることが必要である。マロスを身体に作る手術はマロプラスティーと呼ばれ、マロスの素材にはファロスの皮や尿道などを使用する。いったんマロスにしてしまったら、再びそれをファロスに戻すことはできないし、女性身体証明書を発行する際の必要書類の中に睾丸廃棄証明書も必要なので、手術を受けて女性身体証明書を取得するのは勇気が必要である。
結局マロスは作らないまま、ファロスも縫合切断したりはしないまま、中性的な生活を送っている人も多い。(ファロスは縫合すると外出時に切断が必要なので、縫合を諦めている) 

男性が、ファロスを接合するのは、会社で仕事をする時以外にもある。その代表的な例が恋愛の場である。
 
僕も大学生の頃、付き合った彼女がいた。彼女とは3年くらい付き合ったものの詰まらない喧嘩をして別れてしまった。
 
しかし彼女との仲は双方の親も認める仲だったので、僕たちはよくホテルに行ってセックスをして楽しんだ。
 
恋人たちがセックスをしたい場合、一般に男性の家に女性が泊まるか、あるいは一緒にホテルに行く。うちは下に弟が3人もいて、とても自宅でセックスなど、落ち着いてできなかったので、よくホテルに行っていた。
 
この場合、まず金曜日の夕方に彼女がうちに来て、母から僕のファロスの保管容器を受け取る。そしてそれを彼女が持ったまま、一緒にホテルに行く。そしてホテルの室内で彼女の手によりファロスを縫合してもらい、週末たっぷりとセックスを楽しむ。そして日曜日の夕方に彼女の手でファロスを切断され、保管容器に入れて僕の実家に一緒に行き、彼女から母に手渡される。
 
基本的にファロスの保管容器は女性が持ち運ぶことになっているし、女性から女性に手渡しされることになっている。男性が自分で持ち歩くのは例外的な事態である。
 
親公認の仲になる以前は、僕たちはファロス無しでセックスしていた。これは女性同士のレスビアンセックスと同じようなやり方になる。それも楽しかったが、やはりファロスを使ったセックスは物凄く気持ち良かった。この子と結婚すると、こんなことを日々出来るんだと思うと、ワクワクしたものだが、彼女とは結局結婚に至ることができなかった。
 
彼女は切断師の二段を持っていて、切断の道具にはジャポン刀という物凄く切れ味のいい刀を使っていた。初心者が使う医療用メスだと、切断するのに上手な人でも4〜5秒掛かるが、ジャポン刀だとほとんど一瞬でスパッと切れてしまうので逆に痛みも少なかった。
 
「ハルキ、切られる時痛くない?」
「痛いけど我慢する。でもアキコの切り方はうまいよ。妹は下手だもん」
「ふふふ。だてに二段じゃないからね」
 
アキコは積極的な女性でファロスを使ってセックスする時も実際にはアキコの方がリードしてくれることが多く、僕は楽だった。彼女はよくフェラをしてくれた。僕は今営業マンとしてフェラがうまいと言われることがよくあるが、僕のフェラの仕方は、アキコが僕にしてくれたフェラのコピーである。
 

それは僕がその会社に入って8年目。30歳になった年であった。
 
僕の所に1通のハガキが来ていた。ハガキは真っ赤な色であった。
 
赤紙だ・・・・・ 
僕は真っ青になった。
 
母に連絡したら泣かれた。会社の休みを取り、実家に一時帰省すると、両親もまだ嫁に行っていない妹も、僕の「赤紙」で泣いたが、これもお役目だから頑張ってきなさいと言われた。
 
実家から戻ってから会社に報告すると、社長が嘆いた。
 
「君ほどの優秀な営業マンを失うのは我が社にとって大きな損失だ」
と社長は言った。
 
その他得意先などにも挨拶をしてまわり、会社では壮行会もしてくれた。
 
最後にミツコが「生きて帰ってくる人もいるから、希望を捨てないでね」
と言って、僕にファロスの保管容器を渡してくれた。退職金はそれまで貯めていた貯金と合わせて全額郷里の母の口座に送金した。
 
そして僕は赤紙が来てから1ヶ月後、サザンバード島に行く飛行機に乗った。
母と妹が田舎から出てきてウィングフィルド空港まで見送りに来てくれた。
僕は妹とキスしてから搭乗口を通った。乗客はみんな20〜30歳くらいの男ばかりだ。この飛行機に乗っている人のほとんどが僕と同じ所に行く男たちだろう。しかし僕みたいに30歳になってから赤紙をもらう人はまだ良いが、20歳そこらで行く人はちょっと可哀想。人生これからだっていうのに。
 
案の定、飛行機を降りた人はみんな一様に荷物ひとつを持ってこの島にある生殖センターの門をくぐった。
 

 
「生殖センターへようこそ」
と少し太った体形の40代くらいかなという感じの女性所長は笑顔で僕らを迎えた。
 
「ご存じのように現代社会では生殖行為をする人はひじょうに少なくなり、20代の結婚率はだいたいどこの国でも3割以下になっており、わが国でも国民の60%が独身のまま一生を送ると言われています。生殖センターはそれによって不足する次世代人口を補うためにあります。みなさんはここでその貴重なお仕事をしてもらいます」
 
そうなのだ。現代では結婚した夫婦から生まれる子供は少ない。僕は両親の生殖行為によって生まれたが、小中学校・高校のクラスメイトでは生殖センター生まれの子が7割ほどであった。生殖センターで生まれた子供は3歳になった時点で子供を育てる意志のある夫婦や40代の独身女性に引き渡される。実際僕と妹は両親の生殖で生まれたものの、下の3人の弟は生殖センター生まれである。
 
40歳を超えた女性は結婚できる確率が低くなるので、生殖センター生まれの子供を引き取り育てることを選択する人も多い。何しろそういう子を引き取って育てる場合、毎月20万の子育て資金が支給されるので、働かなくてもやっていけるという事情もある。どこの国でも女性の賃金は低く、我が国の場合、ふつうの仕事に就いている女性は20代で税込み12万くらい、税引後の金額で5〜6万、40歳くらいになっても手取り7〜8万くらいしか無いのが普通であり、子育て資金は魅力的なのである。しかも子供が20歳になるまで、家族全員医療費はタダになる。
 
結婚している夫婦でも概して年齢とともに生殖行為をあまりしなくなる。生殖行為をするにはその度にファロスを縫合接続し、行為後は切断しなければならないので切断の痛みを嫌がってファロスを使用した性行為はしないカップルも多い。世の中のカップルの多くはファロスを使わずにレスビアンセックスをしている。
 
そういう訳で、しばしばうちと同じように兄弟の下の方は生殖センター生まれという家庭も多いのである。
 
女性所長の説明は続く。
 
「このセンターではみなさんは3年間の生殖奉仕をして頂きます。ここにいる間は、毎日女性とセックスをして頂きます。センターにはたくさんのボランティア女性が滞在しており、声を掛ければよほどの問題が無い限りセックスに応じてくれます。
むろん風邪などを引いて体調が悪い時は休むこともできますが、必ず届けを出してください。3日以上無断で休んだ場合、聴聞に掛けられます」
 
何人かから質問が出る。
 
「あのお、相手は本物の女性なのでしょうか? 噂ではブースの中に入れられて、機械で精液を搾り取られるとか、女性がいるように見えるけど実はCGだとかも聞いたのですが」
 
「根も葉もない噂ですね。ここで働いているのはみんな実体を持った女性です。
ただし女性には生活費が支給されていないので、みなさんが洋服を買ってあげたり御飯を食べさせてあげたりしてください。デートで楽しく過ごした後、その女性の家でセックスになります。なお、みなさんには毎月30万サークルの生活資金が支給されますので、それでやりくりしてください。みなさんには住宅は提供されないので万一女性をゲットできなかった場合、ゲットしてもセックスに至る前に喧嘩別れしてしまった場合は、野宿するハメになります。なお、この島の夜の気温は夏は10度くらいですが冬は零下になりますのでご注意を」
 
「あのお、本当に3年で帰られるのでしょうか。噂ではここに来たら一生出られないとも聞くのですが。実際ここから帰って来た人って、めったに聞かないんですよね」
 
「もちろん帰られますし、帰る人はたくさんいますよ。ただ、ここが気に入った場合、生殖奉仕を男性能力がある限り続けることも可能なので、ここに住み着いてしまう人もいることは確かです。現在、サザンバード島には約10万人の男性が滞在していますが、その中の半数は生殖奉仕の義務期間が終了した後、延長滞在している人たちです」
 
「その人たちは帰りたいと思ったら帰られるんでしょうか?」
「もちろんいつでも退所できます。毎月30万サークルの支給があるので節約して生活すると年間100万サークルくらいの貯金が出来ます。10年奉仕を続けると1000万サークルくらいの貯金を持つ人も結構居ますので、本土に戻ってからも、すぐに就職せず新たに資格を取ったり職業訓練をしたりする間の生活資金にすることもできます」
 
毎日セックスしていれば月30万もらえるのだったら、確かにここに居着いてしまう人もあるのかも知れない。しかもここにいる限りはファロスを切断する必要は無い。
ずっと付けたまま過ごせるのだから、確かにここの生活にハマってしまう人も多いのだろう。
 
他にも様々な説明や質疑応答があった後、僕らは順番に名前を呼ばれてはファロスの接合をしてもらい、この島内で穿くことになるズボンを支給された。この島内ではスカートを穿けるのは女性だけ。男性はズボンになる。
 
その後DNA登録をする。このDNA登録がID代わりであり、DNA認識で支給金をもらうことになる。僕は早速ATMで取り敢えず5万引きだした。残高25万と表示される。
僕は優秀な営業マンだったので、これまで毎月50万くらいの給料をもらっていた。
30万でやりくりするのだから節約モードで行かなければならない。しかもその30万の中で、女性に御飯を食べさせ、服なども買ってあげなければならないのだ。
 
早速町に出かける。
 
凄い! ちゃんと女性がいる! 
僕はバス停の所にいたツインテールの凄く可愛い女性に声を掛けた。
 
「あのぉ、僕とデートしてもらえないでしょうか?」
「あ、ごめんなさい。私もう今日は相手が決まっていて。彼、今トイレに行ってるのを待っているんです」
「あ、そうでしたか、ごめんなさい」
「いえいえ。またの機会に」
「ええ、またの機会にお願いします」
 
このセンターでデートに誘って断られる最大の理由は先約だという話は聞いていたが、確かにそのようである。僕は町のあちこちで女性に声を掛けたもののみんな今夜の相手が既に決まっていた。10万人も男がいるのなら、美女は早々に予約が入ってしまうのだろう。ただ女性も15万人くらいいるはずだから、諦めずに探せばきっと見つかる筈だ。ここに来て早々に野宿はしたくない。
 
しかし20人くらいに声を掛けてもみんな予約済みでなかなか相手が見つからなかった。他の町に行ってみるか? 
この島は総面積が62万平方kmあり、約30の町がある。僕が今いるのは入所案内所のあるイストキャピタルという町だが、ゴッドフィルドという町も文化的で良い雰囲気だと聞いていたので、そちらに電車で移動する。電車は毎日よく使いそうなので定期券を買うことにした。定期券は1ヶ月5000サークルする。早速の出費だ。
でもこれ必要経費だよなあ。
 
なお駅員も電車の運転手さんもみんな女性ばかりだ。この島では働いているのは全て女性である。男性は働かなくてもセックスさえしていればいい。逆にそういう生活をしていたら、もう仕事をして生活費を稼ぐ生活には戻れなくなるかもな。
そんな気もした。なお、駅員さんなど、働いている女性もデートOKだがデートをするのは仕事が終わった後、夕方以降になるらしい。彼女たちが勤務を終える時刻を見計らって、プレゼントを用意して会社の門の外で待つ男性たちがたくさんいるともいう。
 
そういう働く女性をターゲットにするのは概してこの島に来て2年以上たった男性ともいう。最初の内は昼間からたっぷりデートができる無職の女性を狙うのだが、その内、デートの時間は短時間しか取れなくても、りりしい顔で電車を動かす女性、華麗にタイピングをしている女性、指先でくるくるとピザ生地を回して作る女性、などといったものに関心が移っていくのだともいう。実際職業訓練のためにこの島に来る女性も多いという。ここではセックスさえしていれば、食うには困らない。
 
やがてゴッドフィルドに着く。駅を出ると美事に本屋さんばかりだ。ここは本屋さんの町なのである。しかもそのほとんどが古本屋さんである。過去50年間くらいに出版された本のほとんどがこの古書店街で見つかるという説もある。
 
僕は手近な本屋さんに入り、面白そうな本を手に取ってつい読み始めた。面白い!それは5000年くらい前の古代SF作家の本であったが、短編ばかりなのだけど各々に皮肉とユーモアが織り込まれていて、とても楽しい本だ。ぐいぐいその世界に引き込まれていった。5000年も昔にこういう素敵な作品を書いた人がいたというのも凄い。著者を見るとアリツネ・トヨダと書かれている。今は亡きジャポン国の作家だ。5000年前のジャポンというのは凄く栄えた国だとは聞いたことがある。
しかしその国がどこにあったのかはずっと論争がされているものの定説が無い。
今に伝わるジャポン刀とか、ワジマー漆器とかアリッタ磁器とかも、古代ジャポンで発明されたものらしい。その頃のジャポンにはコンビュータもあったという説もあるが、さすがに眉唾であろう。
 
「そういえば、このサザンバード島が昔のジャポンだという説もあったよな」
などと思わず呟きながらその本を棚に戻そうとした時、僕はその棚の前を通り抜けようとしていた女性とぶつかってしまった。
 
「あ、ごめんなさい」
「いえ、こちらこそごめんなさい」
 
見ると、年の頃は18歳くらいだろうか? こんなに若くてこの島に来ているというのは珍しい。あるいはこの島のスタッフではなく、何かの用事で訪れた外来女性だろうか?外来女性はセックスに応じてくれない。でも僕は彼女があまりにも魅力的だったので、つい声を掛けてしまった。
 
「あの、済みません。良かったらデートしてもらえないでしょうか?」
「あ、いいですよ」
と彼女は応じてくれた。やった!初女性ゲット!! これで今夜は野宿しなくて済む。
 
「あ、でもこの本を買ってからでいい?」
「ええ、いいですよ。あ、僕もこの本買っちゃおうかな」
 
僕たちは笑顔で見つめ合うと、一緒にレジに行った。
 
「あ、本代は僕が出すよ」
「ほんと?わあ、助かる。お小遣いあまり持ってないから」
と彼女は言う。
 
この島では女性は働いてもお給料をもらえない。あくまで男性とデートする代償で服や日用品を買ってもらったり、レストラン代を払ってもらったりするだけである。しかし全く現金が無いと不便なので、多くはデートした男性からお小遣いをもらっている。お小遣いとしてもらって良いのは1回のデートで999サークルまでと決められているので、だいたい1回500〜800サークルくらいの現金をもらう場合が多いと聞く。
 
本を買ってから、近くの喫茶店に入り、少しおしゃべりをした。彼女はユミコと名乗った。
 
「へー。君まだ17歳なの? なんでこの島に来たの?」
「うん。学校でいじめに遭って。母親ともあまりうまく行ってなかったし。
飛び出しちゃった。ここで5年くらい働いて技術を身につけてから本土に戻ってもいいかなと思って」
「だけど、ここに来たら毎日セックスしないといけないよ」
「それは別に構わないかな。セックス割と楽しいし」
「そう?それならいいけど」
 
彼女はここに来て半年ちょっとだと言った。こんな可愛い子が毎晩様々な男に抱かれていると思うと、ちょっと不憫にも思えてくる。といっても今夜自分もこの子を抱くのだ。セックスはしたことにして実際はしないという訳にはいかない。セックスの様子はきちんと記録されることになっている。自分にもこの子にもセックスをする義務がある。
 
「君ゴッドフィルドには良く来るの?」
「うん。ここにはたくさん本があって勉強できるから。通信講座で高校の勉強もしてるんだよ。本土に戻ったら大学に行くつもり」
「それは偉いね」
 
彼女とはこの島の様々な町の話もした。
 
「へー、ハルキさん、今日来たばかりというのに、よくこの島のこと知ってるね」
「うん。実は仕事でよく一緒になってたメーカーの営業マンさんがこの島で4年間生殖奉仕したんだよ。それで色々話を聞いてたんだ」
「わあ。この島で生殖奉仕して、本土に帰ってからきちんと仕事している男性って偉いなあ」
「うん。仕事に就かずにぼーとして過ごす人が多いとは聞く。自殺者も多いし。
そもそも帰ってこない人も多いしね」
「そうそう。帰還率は5%くらいと聞くからね」
「その人たちって・・・・どうなったの?」
 
「その話はできないよ。検閲されてるから」
「そっか」
 
この島では至る所に監視カメラやマイクがあり、全ての会話は記録されコンピュータで分析され、危険な会話をすると憲兵に連行される。
 
その子とは結局お昼をはさんで午後3時くらいまでおしゃべりをしてから彼女の家に一緒に行った。彼女の家はミッドヤードの町にあった。駅から歩いて10分ほどの所にある小さな4畳半のアパートが彼女の家だった。
 
「狭い所で御免ね〜」
「いや、全然気にしない」
「職位ランクが上がれば、もっといい家を提供してもらえるらしいけど、来て半年でまだ10代だと、こんなものなのよ」
「ああ、女の子も大変だね。でも僕もまだ二等兵だし」
「ふふ。頑張ってセックスしてれば少しずつランクが上がるよ」
 
そうなのだ。この島に来た男性は最初二等兵の階級が当たられるが、セックスを重ねることで次第にランクが上がっていく。3年間まじめに奉仕を続けると上等兵から軍曹くらいにはなれるし、更に延長奉仕を続けて少尉くらいまでなる人もあるらしい。
 
僕たちはキスして、それからお布団に入った。布団の中で彼女の服を脱がせていく。
 
「ハルキ、何だかうまい」
「僕は優秀な営業マンだったから。でも男性相手のセックスばかりだから、女性とセックスするのは、大学の時以来、もう8年ぶりだよ」
「ああ、その頃、彼女がいたんだ?」
「うん」
 
最初にクンニをしてあげた。彼女が「気持ちいい!」と声を出す。キスをしてバストを揉む。彼女はどんどん興奮してきている。
 
「私・・・ここに来て初めてだよ。こんなに気持ち良くなれたの」
「良かったね。入れていい?」
「うん。入れて」
 
僕は大きく硬くなった自分のファロスを彼女のマロスに、ゆっくりと挿入した。
ああ、この感覚! 大学生時代にアキコと経験してから8年ぶりに味わう快感だ。
なんて素晴らしいんだろう! 男で良かった、と僕は真剣に思った。
 
インサートした後は彼女のリードがうまかった。ファロスを使ったセックスに慣れていない僕をうまく励まして腰を動かさせ、5分くらいの快絶な感覚の後に射精させた。僕たちはそのまま抱き合って余韻を楽しんだ。
 

ユミコとは「またデートしたいね」と言って、キスして別れた。一度デートした女性と1ヶ月以内に再度デートすることは禁止されている。1ヶ月たってからまたゴッドフィルドの書店街でユミコを探してみようと僕は思った。
 
その日以来、僕は毎日町で女性をゲットしては、デートしてその女性の家に行き、セックスを楽しんだ。
 
最初は女性をゲットするのに時間が掛かっていたものの、そのうちフリーの女性を見分ける勘のようなものが出来てきて、高確率で早い時間帯に女性をゲットできるようになっていった。ユミコとはよくデートした。彼女も毎月1度僕とデートするのを楽しみにしてくれている気もした。
 
僕は毎日違う町で女性をゲットした。それぞれの町にいる女性に傾向があるような気もしてきた。
 
ネオロテルは世俗的な町でセックスの上手な女性が多い。中には準娼婦の資格を持っている人もいた。サザンバード島に4年以上滞在し1200回以上男性とセックス奉仕をした40歳未満の女性は技術認定試験を受けて準娼婦の資格を取ることができる。準娼婦は大学の性学部で4年間学び国家試験にパスして娼婦資格を取った人ほどの報酬を得ることはできないものの職業としてセックスをして報酬を得ることができる。娼婦を買うには1回10万ほど払う必要があるが、準娼婦であれば3万くらいで買えるので、実は準娼婦の人気は高いし、会社勤めしながら週末は準娼婦として仕事をする人もいる。会社勤めしても月6〜7万くらいしかもらえないのに、準娼婦で男とセックスすれば1回2万(3万の内1万は税金として国に収める)の収入が得られるのは魅力的だ。
 
むろんサザンバード島にいる限り、準娼婦の人とセックスしても料金を払う必要は無い。普通に食事を提供し、800サークル程度のお小遣いをあげるだけだ。準娼婦の資格を取った後もこの島にいるのは、更に技術を磨きたいためとも聞く。実際彼女たちの技巧は凄かったし、自分ももし本土に復帰してからまた営業マンをする時はこういうテクを使ってみよう、などと思うものもあった。
 
ニガバレーは庶民的な町なので、そこにいる女性もわりと「ふつう」の人が多い。
ここには週に1度は来て、そういう「ふつう」の女性とおしゃべりを楽しみセックスを味わった。ふつうの女性なのに、この島に来たという人の中には借金を清算するためという人も多い。この国では破産した女性はこの島で2年以上のセックス奉仕とその後2回以上の妊娠奉仕をする必要がある。また、破産しなくてもこの島に来れば1年につき300万サークル借金が減算してもらえる(国が債権者に支払う)ので、それで借金を返す人もいる。
 
またアルジャンシエジュはおしゃれな町なので、女性もおしゃれな人が多い。
何だか高そうな服を着ている人も随分いる。この島に居る男性に買ってもらえる服であんなのは無理だろうから、本土からの持ち込みなのだろう。レストランも高い所が多いので、僕は年に数回しかアルジャンシエジュでは女性をゲットしなかった。1回のデートで2万飛んだりしていた。
 
僕のお気に入りはやはり最初に行ったゴッドフィルドと、あとはニガバレーや、別の意味で素朴な女性が多いアップヤードなどであった。アップヤードには肌の白い女性が多い。あの町は東北地方出身の人が多いという話で、日照時間の少ない所で育ったので肌が白いのだという。東北地方独特の短文を多用した話し方をする人も多かった。寒い地方は口を開ける時間を短くするため短文で話をするという説もある。
 
僕の母も東北地方のオータムフィルド州の出身だ。オータムフィルドは昔から美人の産地として知られていて、僕もその遺伝子を引き継いでいるせいか美男子だと随分言われた。母はオータムフィルドで高校時代に州の美人コンテストに入賞したこともあるらしい。
 
しかし毎日セックスする生活も良いものだという気がした。最初僕は自分にファロスがずっと付いたままだと、もうオナニーしまくりの生活になるのではという気もしていたのだが、セックスを毎日違う女性としていると、それだけで充分満足してしまい、わざわざオナニーまでする気にならない。そもそも、男性には家が無く、毎日女性の家に泊まるから、オナニーする場所も無い。
 
そんな生活を続けて3年たった時、僕は島の管理局から呼び出しを受け、イストキャピタルの管理センターに出頭した。
 

「ハルキ軍曹、3年間の生殖奉仕お疲れ様でした。あなたの精子はとても元気なのでこの3年間に妊娠奉仕の女性に毎回受精を試み、合計1024回の妊娠成功。
既に742人の子供が生まれています。男女比は男の子305人と女の子437人です。
あなたの精子は女の子が生まれやすいようですね」
 
ひぇー、自分の子供がそんなに出来ているというのはちょっと気持ち悪いくらいだ。
 
「これで規定の生殖奉仕は一応終了したのですが、あなたの場合、とても優秀なので、特別奉仕生に選ばれました。これはとても名誉なことですよ」
「はあ・・・、やはりまだ本土に帰られる訳ではないのですね?」
「まあ、そう言わずにお願いしますよ」
「断ることはできないんですよね?」
 
「断る場合は、素材奉仕をして頂きます」
「なんですか?それ」
「あなたの肉体を化学的に分解し、主として農業の肥料として再利用します」
「は?」
「人間の身体には貴重なリン分が含まれるのですよ。体重60kgの男性にはリンが600gほど含まれていますから」
 
「ちょっと待って下さい。化学的に分解されたら死ぬのでは?」
「分解する前に麻酔を掛けますから、苦痛は無いですよ。ファロス切断より、ずっと楽です」
「嫌です。まだ死にたくないです」
「では、特別奉仕をして頂きます。年間1000人ほどが素材奉仕を選択なさるんですけどね」
「まあ、こういう生活してたら、死んでもいいかという気分になる人もあるのでしょうね」
 
「では特別奉仕を選択しますか?」
「やります」
 
「では特別奉仕の内容を説明します。これまであなたは男性として毎日性行為をして射精し、精液を提供して来られたのですが、特別奉仕生になる場合、今度は女性として性行為をして、男性に射精させ、その精液を採取して妊娠センターに届けてもらいます」
「へ?」
 
「そのためには、男性と性行為ができるように女性の身体になってもらいます」
「えーーー!?」
 
「嫌ですか?」
「あのぉ・・・女性の身体になって、後で男の身体に戻れるんでしょうか?」
 
「それは無理です。女性の身体にするため、基本的には3つの手術を行います。
ひとつは喉仏の除去、それからバストを膨らませる手術、それからマロスを作る手術。バストを膨らませるのは、大胸筋下に人工脂肪のバッグを挿入するので、これはちょっと痛いのを我慢するだけですが、マロスを作るには素材として、あなたのファロスを利用します。ファロスは身体から出っ張った器官、マロスは体内に引っ込んでいる器官なので、ファロスの中身を取り出して裏返しにして体内に押し込んでマロスにするのです。ですからマロスを作るとファロスは無くなり、後で元に戻すことはできなくなります」
 
「ちょっと待って、考えさせて」
「嫌でしたら、素材奉仕を選択しますか?」
「嫌〜!まだ死にたくない」
「だったら、マロプラスティー手術を受けて頂きます」
「いつですか?」
「今からです。マロプラスティーは体力回復に1週間ほど掛かるので、その後、豊胸手術をし、その更に1週間後に喉仏を取る手術をします」
 
「ひぇー」
「その間、入院して頂きますが、入院中に体毛の永久脱毛をしますので」
「確かに、女の子で、すね毛があったりしたら気持ち悪いね」
「すね毛、ヒゲ、それから脇毛なども脱毛します」
「はあ」
 
「では病院に行きましょう」
「待って。その前にせめて・・・・」
「せめて?」
「一度オナニーさせて」
「いいですよ。そういう人はよくいます。そちらの処置室の中でしてきて下さい」
 
僕はクラクラとする思いのまま、処置室に入りカーテンを閉めた。ここはこの島に来た時、ファロスの接合をしてもらった部屋だ。この島を出る時はここで切断するんだろうなと思ったものの、切断ではなく消滅ということになるようだ。
 
僕は突然やってきたファロスとのお別れに心を整理できないまま、久しぶりのオナニーをむさぼった。ファロスの先から精液が放出される。この精液で僕はこの3年間に1000人の子供を作ったらしい。しかしその精液の放出もこれが最後だ。
 
僕は射精したまましばらく放心状態にあったが、管理官の女性がカーテンを開けて 
「終わりましたか?」
と訊く。
「はい、終わりました」
と答えると、すぐにブリーフを穿くように言われ、僕は下着を整えズボンを穿いて、その女性に従った。
 

病院では簡単な検査を受けたあと病室に案内される。明日の手術に備えて絶食ということで、食事も水も取ることができない。その代わりに点滴をされる。
 
夕方くらいに看護婦さんが来て、剃毛をしてくれた。可愛い看護婦さんだ。
昨日までならデートに誘いたかった所だが、もう女の子とデートすることもできないし、自分のファロスを女の子にインサートすることもできなくなる。
僕はちょっと悲しくなってきた。
 
手術は翌日の午前中に行われた。手術前に「ほんとに手術していいですね?」
と女性医師から訊かれたが、断れば肉体を解体されてしまうのだから同意するしか無い。「はい、お願いします」と言うと、全身麻酔を打たれた。
 
 
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